映画『ある男』の音楽を担当し、11月に開催された〈ザ・ピアノエラ 2022〉への出演でも話題を呼んだ台湾の室内楽アンサンブル、Cicadaが、新たな編成で制作したニュー・アルバム『Seeking the Sources of Streams』を2023年1月6日（金）に発表します（CDは1月11日発売）。

　2019年に発表した前作『Hiking in the Mist』が台湾のグラミー賞ともいわれる金曲獎（Golden Melody Awards）のBEST ALBUM PRODUCER賞にノミネートされたCicadaの新作は、もともと海をテーマに制作してきた彼らが、その源流を辿って台湾の中央山脈の渓谷を何日にもわたって歩き、インスピレーションを得てレコーディングしたもの。

　源流とは、はっきりと境界で分かれるような湖のようなものではなく、水たまり、季節ごとの流れや、岩や砂の孔によって形成されていることに気づいた彼らは、物事のありかたから目的や方向性といったものが消え、新しい多層的なものへ向かう可能性を象徴しているように思えたといいます。源流だけではなく、キャンプ場での霧雨、テントに降り続ける夜半の雨、出発時の葉の上の露……山を形作っている雨と水は、このアルバムの中心的なテーマとなりました。静謐さと躍動感、多層的な音楽構成が見事な表題曲を筆頭に、ピアノ、弦楽器、ギターに加えて、木管楽器、打楽器を新たに加え、源流のインスピレーションから表現の幅をさらに広げました。森にみられるさまざまな生物・静物のテクスチャー、自然の誕生と死のサイクル、森羅万象すべてを受け入れるかのような神秘の表情を、内省的で美しいハーモニーとして現出させた意欲作となっています。

　Cicadaのオフィシャル・サイトでは美しい写真とともに、メンバーのJesy Chiang（p）によるアルバム制作までの過程を綴ったテキスト（日本語訳あり）が公開されています。