セルジュ・チェリビダッケ指揮
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団が1980年代に行なった公演の初出音源を収録する、『ベルリン芸術週間のセルジュ・チェリビダッケ』が11月6日(金)に発売されます。CDは3枚組。先行シングル第1弾として、
ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」から「キエフの大きな門」が配信されています。
本作は、チェリビダッケが1980年代にミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団を率いて出演したベルリン芸術週間でのライヴ・レコーディングを収めたもの。1953年以来、チェリビダッケは商業録音を原則として拒み、音楽はその場、その瞬間に生まれるものと考えただけに、後年の充実期を捉えた3時間超の初出音源は極めて貴重です。
ベルリンはチェリビダッケにとって特別な街でした。第二次世界大戦末期から戦後にかけてこの地で研鑽を積み、1945年にはベルリン・フィルにデビュー。戦後の楽団再建に大きく貢献しながら、
フルトヴェングラー死後の首席指揮者には
カラヤンが選ばれ、1954年を最後に同楽団を離れました。その後、長い「遍歴の時代」を経て、1979年にミュンヘン・フィルの指揮者に就任。豊富なリハーサルを重ねながら、みずからが理想とするオーケストラを築き上げた彼にとって、ミュンヘン・フィルを率いてのベルリン公演には格別の意味がありました。
本作には、
シューマンの交響曲第4番、ムソルグスキー(ラヴェル編)の「展覧会の絵」、
デュカスの「魔法使いの弟子」、
ヒンデミットの「画家マティス」、「ウェーバーの主題による交響的変容」、
ドヴォルザークの交響曲第7番を収録。なかでも約42分をかけ、独自の遅いテンポから壮大な音楽世界を築き上げる「展覧会の絵」は、伝説的演奏として長年ファンの間で語り継がれてきたもの。個々の効果を追うのではなく、作品全体を一つの有機的な流れとして立ち上げるチェリビダッケならではの芸術を鮮烈に伝えます。
2025年には、息子のセルジュ・イオアン・チェリビダキが監督を務め、
ジョン・マルコヴィッチらが出演する伝記映画『ザ・イエロー・タイ』が公開。没後30年を迎えた今なお、多くの音楽家と聴衆を魅了し続けるチェリビダッケ。その全盛期ともいうべき1980年代の姿を、3時間超の初出音源で捉えた奇跡的な記録がここにあります。
セルジュ・イオアン・チェリビダキは本作について以下のコメントを寄せています。
[コメント]親愛なる友人の皆様へ、
ご存知の通り、私の父は録音に激しく反対していました。父はライヴの音のみを信じ、「今この瞬間を生きる」よう聴衆に呼びかけていました。そこにこそ、音楽があるのだと。しかし、父が亡くなってから30年が経った今、私はこうした「コンサートの記憶」、つまり一瞬の間に存在した「音楽」の貴重な「記念品」を手にしていることを、幸せに感じています。
ただ、父は常に、録音された楽曲は、あのライヴ会場で実際に奏でられた音楽とは何の関係もないと繰り返し語っていたことを、どうか心に留めておいてください。実際、多くの重要な要素が欠けてしまっているでしょう。
それでもなお、これらの録音は、音楽を愛するすべての人にとって魅力的な記録であり続けています。
どうぞ、心地よいひとときをお過ごしください。――セルジュ・イオアン・チェリビダキPhoto by Hugo Jehle