7月より、7年ぶりの全国ツアーを開催していた
TM NETWORKが、9月3・4日に神奈川・ぴあアリーナMM(横浜)でツアー・ファイナルを迎えました。
2021年10月に、
小室哲哉の音楽活動完全復帰宣言と共に、約6年振りに“再起動”が発表されたTM NETWORK。翌11月から3回連続で配信されたオリジナル・ライヴ映像作品『
How Do You Crash It ?』を経て、待望のリアル・ツアーが開催。Day1〜7のホール公演を経て、Day8〜9のアリーナ公演を含む東名阪など全5都市9公演、計4万人を動員。今年デビュー38周年を迎えるTMの3人が夏を彩りました。
[ライヴ・レポート] 「FANKS intelligence Days」と題された今回のツアーは、自身が86年に提唱した「FANKS」(TM NETWORKのファンの呼称)からTM NETWORKにまつわる、ありとあらゆる「intelligence」(情報)を収集することをコンセプトに、全17曲のセットリストを構成。楽曲は小室哲哉によって最新のバージョンにアップデート。そこに宇都宮隆が不変を維持するストレートなボーカルをのせ、木根尚登が温かいコーラスを重ねることで、「最先端でありながら、どこか親しみやすい」TM NETWORKならではの唯一無二の質感を今回も立ち上げた。
1984年のデビュー以来、TM NETWORKが、伝えたいメッセージは変わらない。自らを「タイムマシン」に乗って未来からやって来た「電気じかけの予言者」であり「地球を俯瞰する宇宙人」であると設定するスタンスは、今回のツアーでも貫かれた。「地球に着陸した宇宙船」を模したかのようなセットを背景に、大型LEDと大量のムービングライトが並ぶ照明で構成されたシンプルかつ洗練されたステージと映像にたびたび登場する「バトン」(TMとFANKSをつなぐシンボル)が、それを強く印象付ける。
TMの3人が7年ぶりの今、届けたかったものとは何か。演出総指揮の小室哲哉は以下のように語った。『テクノロジーの変化で地球を俯瞰したり、客観的に見ることが出来る時代になったことは間違いないけれど、今回2時間弱でそれを「体感」できるコンサートを作ったつもりです。特に音と光(照明)を同期させる演出にこだわりました。光は音より早いので、それを同期させるため、スタッフ全員のチームワークで総合エンターテインメントを追い求めました。』小室が語る、まばゆい光と音そして映像演出は、とくに3曲で際立った。
ツアーのオープニング曲として、4月にLINE NFTで限定配信され、収益の一部がユニセフへ寄付された「Please Heal The World」では、赤い閃光と十字に重なる白いムービングライトで、コロナ禍や気候変動、そしてロシアによる軍事侵攻に揺れる世界を癒さねばならないという「警鐘」と「願い」を表現。クライマックスで演奏された「Self Control」では、青く照らされたステージに、緑色のムービングライトを重ね、海と大地に恵まれた地球の「尊さ」を演出に滲ませた。そして極め付きは、アリーナ公演で新たに加わった「Time To Count Down」。大型LEDに、破壊された自宅でピアノを弾くウクライナ人男性の姿が映し出され、世界が平和を取り戻せるかどうか、その「タイムリミット」が迫っているというメッセージを観客に送った。
そのほかにも、見せ場は充実。「BE TOGETHER」で魅せる宇都宮隆の「Welcome to the FANKS!」の掛け声、小室哲哉のショルダーキーボードプレイ、木根尚登のルーパー・エフェクターを使ったソロパート、そして発表から今年で35周年を迎えた国民的ヒットソング「Get Wild」など、多彩な演出・楽曲で観客を魅了。「Beyond The Time」「KISS YOU」新曲「How Crash?」「We Love The EARTH」「I am」など地球や世界の日常と未来を描いた楽曲をたたみかけ、最後は、通称「キネバラ」として親しまれる木根尚登作曲のバラード「Fool On The Planet」で壮大に締めくくった。
本編110分のライブは、MCを一切挟まず一気に駆け抜けるサブスクリプションの最新プレイリスト、もしくは、一本のSF映画を鑑賞しているかのような時間。それはまるで、夏にしか出会えない星座「夏の大三角形」をTM NETWORKとめぐる「宇宙旅行」のようだった。
なお、このアリーナ公演の模様は、10月1日(土)午後7:30から「WOWOW」で放送される予定。来年2023年に結成40周年、そして2024年には、いよいよデビュー40周年を迎えるTM NETWORK。ライブのエンディング映像には、このツアーが続くことを予感させる「Day10 147XX」というミステリアスな数字が映し出され、会場がどよめいた。音楽シーンの過去・現在・未来を知る3人の次なるミッションに早くも期待が高まっている。




Photo by Mutsumi Ito / Makiko Takada / Kayo Sekiguchi