80年代に登場し、黒い口紅や衣装に身を包んだ妖しく退廃的なスタイルで存在感を放ったゴシック・パンク。
バウハウス 、
スージー&ザ・バンシーズ 、
ザ・キュアー などのバンドが代表格として知られ、日本では
AUTO-MOD やTRANS RECORDSがシーンを切り開き、後の
MALICE MIZER をはじめとするヴィジュアル系にも大きな影響を与えました。
そのルーツはパンクだけでなく、ゴシック建築や文学、映画など多岐にわたり、さらに遡れば
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド や
ドアーズ の名も挙がります。暗く耽美な世界観は今なお多くの支持を集め、世紀を超えても
ザ・ホラーズ といったその系譜に連なるが続々と登場。また、そのファッションは日本でもゴスロリ文化のルーツとして、ハロウィンの装いとしてもぴったり。退廃的な美学を表現した音楽性は言わずもがな。そこで今回は、ハロウィン到来を祝して、退廃美と妖しい魅力にあふれたゴシック・パンクの名曲をリサーチ。夜更けの散歩やハロウィン・パーティーにもあう楽曲をお届けします。
■バウハウス「Bela Lugosi Is Dead(ベラ・ルゴシの死)」 ゴシック・パンクを語るうえで欠かせない、1979年結成のポストパンク・バンド、バウハウス。その代表曲にして、しばしば“史上初のゴシック・ソング”とも称されるのが、デビュー・シングル「Bela Lugosi Is Dead(ベラ・ルゴシの死)」です。ベラ・ルゴシとは、1931年公開のホラー映画『魔人ドラキュラ 』でドラキュラ伯爵を演じた俳優。その死と“不死”をテーマにした本曲は、血の滴るように響くパーカッション、重々しいベース、不穏なギターに、フロントマンのピーター・マーフィーによる呪術的な歌唱が絡み合う怪作。デビュー曲らしいキャッチーさとは無縁ながら、ダブ効果や金属的に鳴り響くギターでポストパンクの名曲としても人気です。後半につれ盛り上がる「アンデッド!アンデッド!アンデッド!」の叫び。“蘇る死者”と戯れる夜にこれを聴かずにハロウィンは始まりません。同曲はCDだとベスト盤『クラックル-ベスト・オブ・バウハウス 』などに収録されています。 VIDEO
■ダムド「13thフロアー・ヴェンデッタ」 黒く縁取った目元と唇、オールバックの髪型など、まるでドラキュラ伯爵のようなヴィジュアルで知られるヴォーカルのデイヴ・ヴァニアン 。そんな彼がソングライターとしての個性を強く打ち出し始めた転換期のアルバムが1980年の4thアルバム『ブラック・アルバム 』です。なかでもヴァニアンのゴシック趣味が色濃く表れているのが「13th Floor Vendetta」。カルト・ホラー映画『怪人ドクター・ファイブス』へのオマージュである「今夜、マルディン広場ではオルガンが真夜中まで鳴り響く」という詩で幕開け、鳴り続けるオルガンの音色のなかで甘美な復讐劇が繰り広げられる、妖しく耽美な名曲です。ピアノが彩るミステリアスな曲調も魅力ですが、ポール・グレイのベースも聴きどころ。先日の来日公演でも健在ぶりを見せたそのプレイは、ダークな雰囲気のなかにも身体を揺らしたくなる躍動感を生み出しています。 VIDEO
■スージー・アンド・ザ・バンシーズ「ハロウィン」 黒いレザーやボンテージ・ファッション、奇抜なメイクでロンドンのシーンでもひときわ異彩を放った“ゴスの女王”スージー・スー が1976年に結成したバンシーズ。その代表作として名高い、1981年発表の4thアルバム『呪々 』に収録された一曲です。スージーの呪術的なヴォーカル、プリミティヴなパーカッション、鋭いギターなど、バンシーズらしい魅力が凝縮されながらも、本作の中では比較的キャッチーな仕上がり。歌詞は、風のように駆け抜ける疾走感にのせて煽るように歌われる「トリック・オア・トリート お菓子をくれないと、いたずらするぞ 苦く、そして甘いお菓子」は、恐怖と愉悦が混在するハロウィンをスージー風に表現しています。サビへ向かって熱を帯びる攻撃的なギターと、中盤の原始的なドラミングは、さらに狂騒のハロウィン・ナイトを盛り上げるでしょう。 VIDEO
■キュアー「ザ・ラヴキャッツ」 スージー・アンド・ザ・バンシーズに一時期助っ人ギターとして加入していたロバート・スミス率いるキュアーも、バンシーズと並び称されるゴス・バンド。4作目『ポルノグラフィー 』、8作目『ディスインテグレーション 』、9作目『ブラッドフラワーズ 』は暗黒三部作とも呼ばれます。一方、「ザ・ラヴ・キャッツ」は1983年にシングルとして発表され、後にシングル集『日本人の囁き 』にも収録された人気曲。ピアノが軽やかに跳ねるスウィンギーなサウンドに乗せて、“シャーッ!”と威嚇する猫ちゃんに夢中な様子を歌った、ダークで愛らしいナンバーです。凶暴で優雅な猫ちゃんと遊びに出かける夜の街、海の底。ハロウィンのダンス・パーティーで是非踊ってください。ゴスロリのバイブルと言われる楠本まきの漫画『KISSxxxx』のハロウィン・パーティーを描いたエピソードにも登場します。 VIDEO
■ザ・バブルメン「バブルメン・イズ・カミング」 バウハウス、トーンズ・オン・テイル 、ラヴ・アンド・ロケッツ と、ゴスを代表するバンドで活躍したダニエル・アッシュ とケヴィン・ハスキンズ らが結成した謎の“着ぐるみ”バンド、バブルメン。1988年に発表されたこの曲は、浮遊感のある電子音に乗せて「バブルメンがやってきた」と淡々と歌う、どこかシュールで不思議なポップ・ソングです。ダニエル・アッシュの落書きから生まれたという、蜂のようにも見える着ぐるみ姿で演奏するMVも強烈なインパクト。不気味さと可愛らしさが同居した独特の世界観は、ハロウィン気分を盛り上げるのにぴったりです。CDではトレヴァー・ジャクソン 編纂のコンピ『メタル・ダンス 』に収録されています。 VIDEO
■デペッシュ・モード「ドレスト・イン・ブラック」 ゴスやインダストリアルといったダークな要素を、エレクトロニックポップに昇華し世界的な人気を誇るデペッシュ・モード の最もゴス色が強い、1986年の5thアルバム『ブラック・セレブレーション』からの一曲。黒い服を着た女性に罪や誘惑の感情をかき立てられる妖しくもポップなナンバーで、メルヘンチックなホラー感を体現するイントロのストリングス・アレンジも印象的。ハロウィンの夜を妖しく彩る一曲です。 ■エイリアン・セックス・フィーンド「ゾンビ気分で最高さ」 80年代、ロンドンのゴス文化の聖地的クラブ「Batcave」から生まれたご夫婦ゴス・バンド、エイリアン・セックス・フィーンド 。白塗り、黒く縁どられたメイクは健在で現在でも活動中。シンセやエレクトロニクスを取り入れたサウンドは、インダストリアル・サウンド・ファンにも人気です。原題「Now I'm Feeling Zombified」は、90年のアルバム『カース 』に収録。「今、私はゾンビになった気分!顔は真っ白、目は疲れている」で始まる自己紹介ソングのようなナンバー。神経を這い回るようなシンセと、ダミ声で連呼される連呼される「ゾンビ」はフロアを爆発させるでしょう。 VIDEO
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セックス・ギャング・チルドレン「セバスチャン」 エイリアン・セックス・フィーンドと並び、Batcaveシーンで人気を誇ったイギリスのゴス・バンド、セックス・ギャング・チルドレン。パンクの荒々しさにダークで演劇的な世界観や民族音楽の要素を融合させた、1983年のデビュー・アルバム『Song and Legend』は、ゴシック・パンクを代表する名盤として今なおカルト的人気を誇ります。なかでも「セバスチャン」は、クラシカルなヴァイオリン、原始的なドラミング、パンキッシュなギターが一体となった壮麗な楽曲。厳かな雰囲気と高揚感を併せ持ち、古代を思わせる寓話的な歌詞が妖しく神秘的な祝祭ムードを盛り上げます。 VIDEO
■AUTO-MOD「Halloween Song」 日本が誇るゴスの帝王GENET率いるAUTO-MODが、2019年に発表したCD+DVD作品『祈り 』に収録。賑やかなお祭りとして親しまれる、ハロウィンのおどろおどろしい側面をGENETらしく描き出した正統派ゴシック・ホラーな一曲。ゴシック~ポジティヴ・パンクを軸に、プログレやエスニックなどさまざまな要素をブレンドした濃厚なサウンドを特徴とするAUTO-MODらしく、イギリスやケルトの伝承歌を思わせる旋律が、楽曲の妖しい魅力をさらに引き立てています。 今年はパンク誕生50周年。パンクから派生したゴシック・パンクも、その歴史を語るうえで欠かせない存在です。そして、その世界観を味わうのにハロウィンほどふさわしい季節はありません。不気味さとロマン、退廃美とメルヘンが交錯する夜に、ぜひお気に入りの一曲を見つけてみてください。
(※写真は、Bauhaus「The Bela Session」輸入盤CDジャケット)