3月はローマ神話にて戦いと農耕の神マルス（Mars）を称える月“Martius”からマーチ（March）と呼ばれますが、偶然にも“行進曲”や“行進する”を意味するマーチと英語のスペリングが同じです。行進の“march”は、踏みつける、大股で歩くという意味のフランス語“marcher”から来ています。ちなみに、市場を意味する“marche”と同様に“マルシェ”と発音します。

　という“マーチ”つながりで、マーチをタイトルに冠する邦楽曲をいくつか紹介。実際にマーチ調の曲でなくとも、マーチ、marchが曲名に入っている楽曲は数百曲以上とかなり多くあり、その曲数ははっきりとは分かりませんが、代表的と思われる曲を中心にピックアップしていきたいと思います。

　直球に“マーチ”“March”“MARCH”などを曲名としているのは、くるりが「マーチ」、電気グルーヴ、梶浦由記、andropが「March」、back number、豊崎愛生、GARNiDELiAが「march」など。そのほかは、「〇〇のマーチ」といった曲名が大多数といえます。

　NTTドコモやユニクロのCMソングに起用され、東日本大震災の被災地の復興を願う内容となったのは、桑田佳祐の「明日へのマーチ」。同名タイトル曲を、福山雅治が1994年のアルバム『ON AND ON』で発表しています。

　米津玄師は2017年のアルバム『BOOTLEG』にて「かいじゅうのマーチ」を、ゲスの極み乙女は2014年にゲスの極み乙女。名義でのメジャー・デビュー・アルバム『魅力がすごいよ』にて「crying march」を、BUMP OF CHICKENは2018年に配信シングルとして「望遠のマーチ」（翌年のアルバム『aurora arc』に収録）を、Aimerは2019年にトリプルA面シングルの1曲として「花びらたちのマーチ」を、UVERworldは2011年のシングル「MONDO PIECE」のカップリングとして「魑魅魍魎マーチ」を、それぞれ発表しています。

　懐かしいところでは、1992年にNOKKOが2ndシングルとして「奇跡のウェディングマーチ」を、その10年前の1982年には当時の人気バラエティ番組『オレたちひょうきん族』内のコーナー「ひょうきんスター誕生」から登場した“うなずきトリオ”が「うなずきマーチ」を発表。「うなずきマーチ」は大瀧詠一が作詞・作曲を手掛けたことでも話題となりました。

　アニメにおいては、ドリーミングが歌うアニメ『それいけ！アンパンマン』のオープニング曲「アンパンマンのマーチ」は老若男女に広く親しまれている鉄板曲でしょう。『ケロロ軍曹』のオープニング・テーマとなった「ケロッ！とマーチ」は、“初代”の角田信朗＆いはたじゅりをはじめ、財津一郎＆小倉優子や、土田晃之＆柳原可奈子らがシリーズ作で歌唱しています。

　世界的に知られている“マーチ”ソングとしては、「ハハッ！ やぁみんな！」の掛け声でおなじみの人気者ミッキーマウスをテーマにした「ミッキーマウス・クラブ・マーチ」（通称「ミッキーマウス・マーチ」）がありますね。“ぼくらのクラブのリーダーは〜”で始まる多くの人が耳にしたことがある心弾む軽快な楽曲で、ミッキーのテーマ・ソングとしてはもちろんのこと、多くのアーティストたちによってカヴァーされるほか、元阪神タイガースの真弓明信のヒッティングマーチをはじめ、プロやアマチュアを問わず野球の応援歌としても知られる定番曲として広く長く愛されています。

　そして、なんといってもマーチソングといえば、水前寺清子の「三百六十五歩のマーチ」を外すことはできないでしょう。1968年にリリースされて以来、“人生はワン・ツー・パンチ”のフレーズよろしく人生を励ます行進曲として親しまれ、水前寺の代表曲かつ昭和歌謡史に残るヒット曲として多くの人の記憶に刻まれています。TV番組や映画、CMなど数々のシーンで歌われ、カヴァーも多数。2011年公開給映画『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE 〜勝どき橋を封鎖せよ!〜』主題歌に起用され、両津勘吉役の香取慎吾が歌ったことも話題となりました。2017年より毎年大晦日より行なわれる、ももいろクローバーZが進行役を務める音楽番組『ももいろ歌合戦』では、最後に水前寺はじめ出場者全員が歌唱する恒例の楽曲としても知られています。

（写真は、ドリーミングの「アンパンマンのマーチ」が収録された2023年12月リリースの『それいけ！アンパンマン ベストヒット'24』）