秋の深まりとともに聴きたくなる、切なくも美しい名曲――
スピッツが1998年にリリースした「
楓」は、大切な人との別れや思い出を感じさせる歌詞と、心に染み入るメロディが魅力の一曲。これまで数多くのアーティストによってカヴァーされ、それぞれの歌声やアレンジによって新たな表情を見せてきました。
今回は、そんなスピッツ「楓」を歌い継ぐアーティストたちに注目。それぞれの個性が光るカヴァーを通して、時代を超えて愛される名曲の魅力を紹介します。
■
adieu「楓」 俳優・
上白石萌歌が音楽活動名義の
adieuとしてカヴァーした「楓」。2020年に配信リリースされた本作は、かつて自身が出演した「キリン 午後の紅茶」のCMで歌唱し、話題を集めた楽曲をリアレンジしたもの。マンドリンの音色から始まるアコースティックなサウンドと、幻想的なコーラスワークが印象的で、adieuの透明感あふれる歌声が、原曲の持つ切なさや繊細な感情を優しく浮かび上がらせます。静かに耳を傾けたくなる、独自の魅力を持ったカヴァーとなっています。
■
Crystal Kay「楓」 2021年にリリースした自身初のカヴァー・アルバム『
I SING』に「楓」を収録した
Crystal Kay。数々のヒット曲を歌いこなしてきた彼女の豊かな表現力が、スピッツの名曲に新たな彩りを添えています。伸びやかで力強さも感じさせる歌声は、楽曲に込められた悲しみや愛おしさをドラマチックに伝えています。原曲のメロディが持つ美しさを大切にしながら、Crystal Kayならではのヴォーカルの魅力を堪能できる一曲となっています。
■
BENI「楓」 日本の名曲を英語詞で歌い上げるカヴァー・シリーズでも知られる
BENI。言葉の響きが変わることで、聴き慣れたメロディにも新鮮な印象が生まれます。日本語の歌詞が持つ余韻とはまた異なる形で、別れや大切な人への思いを感じさせてくれるのが英語カヴァーの魅力。BENIのしなやかな歌声を通して、言語の違いを超えて伝わる楽曲の普遍的な美しさに触れてみたいところです。原曲をよく知る人も、あらためて新しい気持ちで聴けるカヴァーとなっています。
■
クリス・ハート「楓」 日本の楽曲を温かみのある歌声で届ける
クリス・ハートも、「楓」をカヴァーしているアーティストの一人。包み込むような柔らかな歌唱が、楽曲に込められた切ない思いを丁寧に伝えてくれます。大切な人との別れを描いた歌詞は、歌い手の声質や表現によって受け取る印象も変わるもの。クリス・ハートの歌声に耳を傾けると、原曲とはまた違った温もりが感じられます。静かな余韻を残す歌唱を通して、「楓」が持つ世代を超えて聴く人の心に響く魅力を味わいたいところです。
■
松任谷由実「楓」 日本のポップス・シーンを長年にわたって彩ってきた
松任谷由実も、スピッツの「楓」をカヴァーしています。数々の名曲を生み出してきた彼女が歌うことで、同じメロディにもまた違った表情が生まれます。独特の歌声と繊細なフレージングが、楽曲に漂う寂しさや懐かしさを引き立て、聴き手それぞれの記憶にそっと寄り添うような印象を与えます。世代も作風も異なるアーティストによって歌い継がれることで、「楓」という楽曲の奥深さがあらためて感じられるでしょう。
■
朝倉さや「楓」 民謡日本一に2度輝いた経歴を持つ、シンガー・ソングライターの
朝倉さや。民謡で培った確かな歌唱力と、ジャンルにとらわれない独自の音楽表現で知られる彼女も、スピッツの「楓」をカヴァーしています。伸びやかな歌声を通して、聴き慣れたメロディに新たな表情を感じさせる一曲。さまざまな名曲を独自の感性で歌い継いできた朝倉ならではの表現にも注目です。
■
渋谷龍太(SUPER BEAVER)「楓」(映画『楓』より) スピッツの名曲を原案・主題歌とする映画『
楓』では、
SUPER BEAVERのヴォーカル・渋谷龍太によるカヴァーも劇中歌として登場します。力強さと繊細さを併せ持つ歌声で知られる渋谷が歌う「楓」は、原曲の切なさを受け継ぎながら、新たな表情を感じさせる一曲に。映画では、楽曲が物語の重要な場面を彩り、登場人物たちの思いや記憶と結びついていきます。作品の世界観と重ねながら聴くことで、歌詞やメロディが持つ意味をより深く味わえるでしょう。
■
十明「楓」(映画『楓』より) 同じく映画『楓』の劇中歌として「楓」をカヴァーしたシンガー・ソングライターの
十明。透明感の中に陰影を感じさせる歌声が、楽曲に込められた切なさや、心の奥にしまった思い出をそっと呼び起こします。映画では物語の中盤の重要な場面にこのカヴァーが取り入れられ、歌詞と登場人物の感情が重なり合う演出が印象的。悲しみだけではなく、過ぎ去った時間への愛おしさも感じさせる十明の歌唱。映画を通して生まれた新たな「楓」の魅力にも、ぜひ耳を傾けたいところです。
別れや大切な人との思い出を描いたスピッツの「楓」。リリースから時を経た今も、多くのアーティストによってカヴァーされ、それぞれの歌声や表現を通して新たな魅力が生まれています。同じ楽曲でも、歌い手が変われば伝わってくる感情や印象も変わるもの。今回紹介したカヴァーを聴き比べながら、あらためてこの名曲の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。秋の夜長、大切な人との思い出にそっと思いを馳せながら、「楓」に耳を傾けてみてください。
(写真は1998年7月7日リリースのスピッツ 8cmCD「楓 / スピカ」表表紙ジャケット)