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【CDJ楽器研究所】 ロボット・ヴォイスで未来を感じさせる楽器 ヴォコーダーとは?

2007/11/02掲載
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誰でもロボットのような声になれる楽器、ヴォコーダー。名前やその音を知ってはいても、実際それがどのようなものなのかわからない人も多いはず。今回はそんなヴォコーダーをご紹介いたします。
 YMO「テクノポリス」で聴こえる“TOKIO”の声。クラフトワーク「ロボット」での“We are the robots”のフレーズ。リアルタイムでその曲を聴いた人なら、その近未来的なサウンドとともに響いたロボット・ヴォイスに驚いたことでしょう。その声を作り上げていたものが、このヴォコーダーなのです。ヴォコーダーは「ヴォイス・コーダー(VOICE CODER)」の略称で、通信の世界で開発され、軍事目的(音声を暗号化する)で使用されていたこともあるようです。音楽に使用され始めた正確な時期はわかりませんが、70年代にクラフトワークなどが使用したことにより、一般的に知られるようになったと言えるでしょう。

 ヴォコーダーを簡単に説明すると、発音する音(声)をシンセに取り込み、鍵盤などでその音程を決めて奏でる楽器。具体的な使用方法で言うならば、マイクを通して声をシンセサイザーに入力。シンセ内のフィルターを通して入力された声の周波数帯域を検出して、リアルタイムでその声と同じ周波数帯にシンセの音色をはめこんで出力。そして加工された声をシンセの音色として鳴らし演奏するという流れになります。そうやって発せられたものが、あのロボット・ヴォイスのようになるのです。


 


 上記の説明のように、ヴォコーダーにおいて、声はあくまで音の素材であり、音色の一つにすぎません。なので、シンセにつないだマイクに歌を歌ったとしても、音色(声)や音の立ち上がり、余韻などが生かされるのみで、メロディは反映されません。つまり、ヴォコーダーは声で音(音程)を操作するものではなく、あくまで声を使用して鍵盤などを使いメロディを奏でる楽器なのです。音程を奏でるための楽器があって初めて成立するわけですね。人間でいう声帯の役割をシンセ(楽器)が行なう、それがヴォコーダー、と言えばわかりやすいでしょうか。

 そんなヴォコーダーを使用した曲をいくつか挙げてみると、まずは東京ディズニーランドでお馴染みの「エレクトリカル・パレード」。冒頭で聴くことができるアナウンス部分などは、ヴォコーダーによって加工された音声になります。アナログ・シンセ(ムーグ?)独特のきらびやかな音色とヴォコーダーが絡んだサウンドは、エレクトロかつファンタジーな世界へと誘ってくれます。80年代に大ヒットしたスティクスの「ミスター・ロボット」。「ドーモアリガトミスターロボット」とロボット・ヴォイスで歌われる英語なまりの日本語の不思議な響きが、ヴォコーダーをさらに印象づけました。YMOは前途の「テクノポリス」以外にも、「ビハインド・ザ・マスク」「インソムニア」などでヴォコーダーを使用していました。近年ではCUBISMO GRAFICOがその名も『VOCODER BLOCK DIAGRAM』なるアルバムを2003年に発表。こちらには、タイトル通りにヴォコーダーを使用した楽曲も収録されています。POLYSICSもヴォコーダーを使用するバンドの一つ。アルバムやライヴなど多くの場面でそのヴォコーダー・サウンドを聴くことができます。

 また、ダフト・パンク「ワン・モア・タイム」Perfume「ポリリズム」などで聴くことができる、強制的に音程を操作したようなヴォーカル。こちらもヴォコーダーによるものと思われがちですが、実はAuto-Tune(ピッチ修正ソフト)などに代表されるプラグインやTalkerなどのデジタル・プロセッサーを用いたもの。これらで聴けるヴォーカルの音程はあくまで人間がとり、その声にエフェクトをかけるといった加工方法で作られるため、ヴォコーダーとは別物になります。なので、「ワン・モア・タイム」や「ポリリズム」では、ヴォコーダー的な音作り(処理)をしたヴォーカルと言えるでしょう。


 
 ちなみに現在購入できるヴォコーダー(機能を搭載したシンセ)というと、KORGから発売されている「micro KORG」「R3」、Rolandの「VP-550」などがあり、ラックエフェクターではZOOMやBehringerなどから発売されています。

 今聴いても近未来的な新しさを感じることができ、同時にどこか懐かしさも感じさせるヴォコーダー・サウンドをぜひ味わってみてはいかがでしょうか?
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