川江美奈子連載「時雨月夜ニ君想フ−letters−」 - Chapter14 11/20ライヴ・レポート&最後の手紙
掲載日:2008年12月3日
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 今回は、11月20日に行なわれた川江美奈子のワンマン・ライヴ“夜想フ会〜letters〜”のライヴ・レポートをお届けします!
 さて、師走のあわただしい音にかき消されるように、“時雨月”の余韻というものは消えていくものです。本連載も師走の頃に差し掛かり、今回が最終回となります。本連載の最後は、読者の皆様への手紙を川江美奈子さんに書いていただきました。少し早いですが、クリスマス・プレゼントのような気持ちでお楽しみください。
川江美奈子 “夜想フ会〜letters〜”ライヴ・レポート
2008.11.20(木)@東京・キリスト品川教会 グローリアチャペル
シンガー・ソングライター“川江美奈子”の
繊細な歌心と深い感動を堪能できた極上の一夜
 川江美奈子は、毎年年末に“夜想フ会”と題してワンマン・ライヴを行なっている。今年は11月20日(木)、東京・品川グローリアチャペルにて、“夜想フ会〜letters〜”というタイトルで開かれた。
 彼女のフェイヴァリット・カラーである“青”の照明のなか、1stアルバム『時の自画像』のオープニングを飾ったSE(時計の秒針の音とともに、教会の鐘が遠くで響く)が流れ、川江美奈子がゆっくりとピアノの前に登場。そして、荘厳なムードを後押しするかのようにピアノが静かに奏でられる。1曲目はもちろん、アルバムと同じ流れで「そのとき」。時の流れのなかに生きているからこそ、大切なものを過去のものとして失ってしまうことを恐れる。しかしながら、時が流れるからこそ、さまざまなものが愛しく思える。「そのとき」という楽曲は、川江美奈子の作る世界観の大本といえる要素が多分に含まれている。そんな彼女のスタンスを高らかに伝えるかのような一曲がオープニングを飾った。




 最初のMCでバンドを呼び込みつつ、地元でもある“阿佐ヶ谷”の話をし、その地が舞台となった楽曲「最終電車」を披露。もともと情景描写の優れたこの曲がバンド・サウンドによって煌びやかに彩られるとヴォーカルにも力が入り、溢れんばかりの情感を放っていた。
 さらに、サン・テグジュペリの『星の王子さま』の話題から、物語の公式ソングとなった「君の唄」に入る。ここからプロデューサー/ピアニストの武部聡志が登場。

 そして、「君の唄」が終わり、川江がピアノを武部に託しつつ、センターに立つと「スナップ! スナップ!」とオーディエンスを誘う。ここが前半の盛り上げどころとなり、アップ・ナンバー「tuner fork」を洒脱なアレンジの演奏とともに、楽しげに披露。




 「亡き祖父が木を育てる名人で、私も木があるところが好きです。木はいつも私を見守ってくれているような存在……」というMCから、神聖な雰囲気を漂わせる「宿り木」に。サビの“苦しいのなら泣いてもいいよ”という部分では切ない高揚感と同時に深い安堵感をおぼえた。こういった深い感動が味わえるのは彼女のライヴの醍醐味でもある。
[SET LIST]
01. そのとき
02. 最終電車
03. 君の唄
04. tuner fork
05. 宿り木
06. 孤独の向こう
07. つないで手
08. 桜色舞うころ
09. 夢暦
10. ありのままでそばにいて
11. 足跡
12. 滴
13. 小春電車
14. 三月生まれ
15. しあわせ
16. ピアノ

En1. Relationship
En2. ぬくもり
En3. 真実
En4. 春待月夜
En5. ずっとはるかあなたと
 その後は平原綾香に提供した「孤独の向こう」を柔らかく、優しく歌い、「つないで手」「桜色舞うころ」「夢暦」「ありのままでそばにいて」「足跡」「滴」と丁寧な曲の解説を挟みながらセルフ・カヴァー・アルバム『letters』の楽曲を続ける。郷ひろみに提供したバラード「ありのままでそばにいて」なども力強く歌われていたが、とくに「滴」は印象的で「皆さんとハモりたいと思います!」という川江の一声で始まり、アダルトなムードの軽快なサウンドにも促され、会場は多いに盛り上がった。この曲の最後には、「嬉しい!」という一言とともに、両手を広げながら観客にも丁寧にお礼をする川江の姿がその盛り上がりようを表わしている。明るめのナンバー「小春電車」を披露。アーバンな雰囲気を漂わせる「三月生まれ」、このライヴでの楽しさを表わしているかのようなテンションで歌われる「しあわせ」と続き、最後はしっとりと名バラード「ピアノ」でライヴの本編を締めくくった。

 アンコールでは、「Relationship」をはじめ、今井美樹のツアーでも披露したグロッケンの演奏も見せてくれた「ぬくもり」、未CD化曲の「真実」「春待月夜」と続き、2度目のアンコールはピアノのみの「ずっとはるかあなたと」を。 待ちに待った年末のライヴをかみしめるかのように歌い、“夜想フ会〜letters〜”の幕は下ろされた。




 “思う”ではなく“想フ”、小さなことに見えて実は奥が深い、その言葉の意味合いの違いのなかにこそ、彼女の楽曲の味わい深さが凝縮されている。1stアルバム『時の自画像』、2ndアルバム『この星の鼓動』の楽曲から、シングル「ピアノ」やさらなる新曲までも披露され、シンガー・ソングライター“川江美奈子”のさまざまな要素を広く俯瞰できつつ、楽曲の深い味わいも楽しめるライヴだった。何より、時折見せた充実感をともなう笑顔がこの日のライヴの素晴らしさを物語っていた。


取材・文/清水 隆
撮影/高木あつ子(2008年11月20日)
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