UKダブの総帥
エイドリアン・シャーウッドのレーベル〈ON-U Sound〉が贈るシリーズ・イベント〈DUB SESSIONS〉が、今年は
ナイトメアズ・オン・ワックスを迎え、9月9日に東京・O-EASTで開催。
ナイトメアズ・オン・ワックスの名盤『
In A Space Outta Sound』を、エイドリアン・シャーウッドがダブミックスした『
In A Space Outta Dub』が今年4月にリリースされたタイミングで、ついに両者が同じ空間で音を交わした、完売公演の模様を伝えるレポートが到着しています。
なお、本イベントの大阪公演は、9月10日(木)大阪・META VALLEYにて開催。18:00より当日券が販売されます。
[ライヴ・レポート] Spotify O-EASTの階段を上がると、入り口でイギリスのヴィジュアルアーティスト兼イラストレーター、ピーター・ハリスがライヴ・ペインティングを行っている。彼はリー・スクラッチ・ペリー『Rainford』(2019年)やアフリカン・ヘッド・チャージ『A Trip To Bolgatanga』(2023年)、クリエイション・レベル『Hostile Environment』(2023年)、そしてエイドリアン・シャーウッドによる13年ぶりのソロ最新作『The Collapse Of Everything』(2025年)のアートワーク、さらにはエイドリアン・シャーウッドのライヴ・ヴィジュアルなどを手掛ける近年の〈On-U Sound〉を視覚的に支える人物で、今回が初来日。その手さばきに惚れ惚れしてしまう。
扉を開けると、MoodmanのオープニングDJがすでにスタートしており、ど迫力の低音に全身が包み込まれる。そう、今夜は『DUB SESSIONS』。2005年にスタートし、昨年20周年を迎えた、エイドリアン・シャーウッドによるダブの祭典だ。
この日のためにサブウーファーが追加されたSpotify O-EASTの素晴らしい音響に圧倒されていると、ステージでは転換が終わり、サポートアクトのSILENT POETS(DUB ENSEMBLE)のライヴがスタート。エレクトロニクスをSILENT POETSこと下田法晴が担当し、サックスはLITTLE TEMPOの春野高広、トランペットはYOSSY LITTLE NOISE WEAVERのicchie、ベースはSEIJI BIGBIRDこと白水生路、そしてPAには内田直之(つまり日本の巨匠がライヴ・ダブ・ミックス!)という布陣で、後半はTICAの武田カオリがボーカルとして参加。ラスト「Chariot I Plead」の静謐な美しさと轟音のカタルシスは、この夜の一つのハイライトと言っても過言ではないだろう。ブースの前面にプリントされた「AGAINST WAR, RACISM, FASCISM. FREE PALESTINE.」の文字を指差し、下田はステージを去っていった。
そして、ついにエイドリアン・シャーウッドが登場! デリンジャーやマックス・ロメオなどの名曲が投下され、フロアはまるで天啓を授けられるように、高揚していく。おそらく機材のトラブルで何度か音が止まってしまう場面があり、エイドリアンはフロアに謝罪していた(本人は本意ではないであろうがレアな瞬間だった)が、そんなことも気にならないほどオーディエンスは彼のダブによる空間の使い方に痺れていた。
さらに、バトンは〈Warp Records〉の顔役の一人、ナイトメアズ・オン・ワックスことジョージ・エヴリンへ。自身の名曲「Say-Say」などで、ルーツに軸足を置くエイドリアンとはまた違った、ヒップホップの影響も濃く表れたグルーヴでフロアを揺らすと、最新作『Echo45 Sound System』(2025年)から「Echo45」も披露し、自身の原点であるサウンドシステム・カルチャーを響かせた。
そして、流れるようにエイドリアン・シャーウッドとナイトメアズ・オン・ワックスのB2Bへ。ナイトメアズ・オン・ワックスの名盤『In A Space Outta Sound』の20周年を記念し、エイドリアン・シャーウッドが8曲をダブ化したアルバム『In A Space Outta Dub』に収録された曲を中心にプレイ。DJとして次々に曲をミックスしていくというよりは、1曲ずつ丁寧に披露していったのも印象的で、観客だけではなく、ステージ上の二人も終始ご機嫌な表情を浮かべていたのが何よりも最高だった。
普段のパーティーで最後にその夜に出演したDJによるB2Bが行われるのは珍しくないが、ここまでフロアがパンパンの状態で保たれることは珍しい。最後はジャングルで熱気を最高潮に高め、ラストはルーツ・レゲエの名曲(ジュニア・バイルス「Fade Away」)という二人の共通項であるサウンドシステム・カルチャーへの盛大なトリビュートで締め。オーディエンスから飛び交う「ワン・モア・ソング!」の声がこの夜の熱狂を象徴していただろう。二人が肩を組んでフロアに感謝を告げ、『DUB SESSIONS 2026』はその幕を下ろした。




text by 高久大輝
photo by Yukitaka Amemiya