喉歌(ホーメイ)を中心に、トゥバ共和国の音楽を伝えるベテラン・グループ、
フンフルトゥ(HUUN-HUUR-TU)が、愛知・豊田市で開催される〈橋の下大盆踊り SOUL BEAT ASIA〉の8月16日(土)の出演に続き、8月17日(日)に東京・渋谷 晴れたら空に豆まいてに出演することが発表されています。
世界で最も古く、かつ印象的な声楽伝統のひとつに、中央アジア・トゥバ共和国に伝わる「ホーメイ(喉歌)」があります。この幻想的で美しい音色は、西洋の声楽にはまったく存在しないもの。1990年代までトゥバ以外ではほとんど知られていませんでしたが、トゥバの喉歌は人間の声の可能性についての西洋的な概念を大きく広げ、瞬く間に国際的な注目を集めました。この伝統をアジアから世界のステージへと紹介した中心的な存在が、4人組のアンサンブル“フンフルトゥ”でした。
喉歌とは、一人の歌手が同時に2つ、3つ、あるいは4つの音を発声する歌唱法。低音の持続音(ドローン)を基に、音の倍音を巧みに操って旋律を形作ります。トゥバはモンゴルの北に位置するロシア連邦の小国で、遊牧民の暮らしが根付いた土地。喉歌はその自然界を音で再現するもので、風が草原を吹き抜ける音、ヤクの低いうなり声、鳥のさえずり、馬が駆けるリズム――そうした自然の音風景を喚起します。
フンフルトゥのメンバーは、幼い頃から喉歌を学んできました。創設メンバーのサヤン・バパは「私たちの文化では、喉歌は子供の遊びのようなものです。叔父さんやお父さんたちが歌っているのを聞いて、4〜5歳くらいで真似し始めます。そして成長するにつれて、声が強く、上手くなっていくのです」と語っています。 グループのメンバーの多くは、ソビエト連邦解体以前から音楽活動を始めており、伝統音楽を現代的に再解釈する国家支援のアンサンブルでも演奏していました。
グループ名の“フンフルトゥ”は、中央アジアの草原で日の出直後や日没前に見られる、垂直に光が分かれる現象を表すトゥバ語の言葉。「それは太陽光の全スペクトルです」とバパは説明しています。
この名前は、トゥバの歌唱や伝統楽器の全スペクトルを表現するというグループの理念にも当てはまります。メンバー4人それぞれが異なる喉歌スタイルの達人であるほか、イギル(馬頭琴のような二弦楽器)、ドシュプルール(バンジョーに似た三弦のリュート)、ビザンチ(チェロのように弓で弾く四弦楽器)、ホムス(口琴)、ケンギレ(山羊皮の大きなフレームドラム)など、さまざまな伝統楽器の演奏も行なっています。
近年では、ロック、ジャズ、電子音楽のアーティストや、アフリカやブルガリアの歌手とも共演する一方、ライヴでは今もなお、何世紀にもわたる伝統的なスタイルを守り続けているフンフルトゥ。バパは結成から四半世紀以上を経た今でも、「とても面白い音がします。生き生きとして、なめらかで、暖かい」と表現し、「私たちの歌には、自然や故郷、恋の物語、悲しみ、そして人生についての美しく深い物語が込められています」と語っています。