金属恵比須 2024/08/08掲載(Last Update:24/08/09 08:10)
金属恵比須が、“
烏頭”のピアニスト・大和田千弘を迎えたワンマン公演〈邪神“大和田千弘”覚醒〉を8月3日に東京・吉祥寺シルバーエレファントにて開催しました。
クラシック、現代音楽、ジャズ、プログレなどあらゆるジャンルを超越した、迫力のピアノ演奏を武器に、自身主宰バンド“烏頭”のほか、
渋さ知らズや“
イチベレ・オルケストラ・ファミリア・ジャパン”のメンバーとしても活動する大和田千弘。彼女をゲストに迎えての本公演は、大和田のピアノ・サウンドを主体に、全曲、新しいアレンジで楽曲を披露するという試みで開催されました。
MCでヴォーカル・稲益が「今日はすごいものが見れますよ〜」と煽った通り、大和田の圧巻としか言いようのないピアノが炸裂した本公演。キーボードを3パートにわけてリアレンジした「虚無回廊 オープニングテーマ」からジャジィなピアノ・アレンジの新曲「鏡の中の女」、6年ぶりに披露された「勝頼」など、プログレ映えする選曲に加え、ヘヴィなギターと重厚なグルーヴ渦巻く「罪つくりなひと」「鬼ヶ島」も披露されるなど、バンド曰く“とにかく乳酸が溜まりそうなセットリスト”に会場も大満足のライヴとなりました。
そんな特濃な一夜を振り返り、今回なんとバンドリーダーの高木大地(g,vo)自らが本公演を解説。“中の人”ならではの視点やエピソードに加え、バンドの“これまで”と“これから”も伝わるレポートは必読です。
なお、本公演は、ツイキャスにて配信ライヴも実施されており、チケットが販売中です。アーカイヴ配信は8月17日(土)まで。詳細は金属恵比須の公式サイトをご確認ください。
[金属恵比須・高木大地(g,vo)セルフライヴレポート]“金属恵比須史上最もプログレッシヴ”なライヴを吉祥寺シルバーエレファントにて2024年8月3日に催した。4月以来約3ヶ月ぶりとなる。
昨年11月にベースの栗谷秀貴とキーボードの宮嶋健一が脱退。ベースには若干24歳の埜咲ロクロウが加入したもののキーボードは空席のまま。そこで前回4月のライヴではゲストに塚田円(元プロビデンス、那由他計画)を迎え一夜限りのコラボレーションが実現した。
そして今回のゲストは大和田千弘。アヴァン・プログレッシヴ・バンド「烏頭」を主宰するピアニスト・作曲家である。愛知県立芸術大学作曲科を首席で卒業というインテリであり、渋さ知らズや吉田達也とのユニットに参加するなど幅広い活動で有名。
烏頭は俳優の?嶋政宏氏が猛烈に応援。金属恵比須とともにテレビで紹介されたという共通点があるが、音楽的にはプログレの中でもかけ離れたポジションにいる。プログレファンの間でも「共通点は?」との意見も散見された。
共通点は現代音楽である。大和田は現代音楽のピアニストの経歴の持ち主であり、現代音楽ファンの筆者はそのプレイに魅了され、是非とも共演したいと懇願し今回のコラボレーションの実現となったのだった。そのため、金属恵比須の中でも普段演奏しないプログレッシヴなインストゥルメンタル曲を中心に選曲し、「金属恵比須史上最もプログレッシヴ」なセットリストとなったのである。
登場音楽はいつもの映画『八つ墓村』より「呪われた血の終焉」(オーケストラ・トリプティーク)。日本を代表する現代音楽作曲家・芥川也寸志によるこの曲は、ドラムの後藤マスヒロによると「パワハラ音楽」らしい。過度に緊張感を煽る曲調を緊張感あふれる楽屋で聞くと気が滅入るとのこと。
オープニング2曲は大和田抜きの四人編成。「罪つくりなひと」で幕を開け、1997年初演という古い歴史を持つ「鬼ヶ島」に。ギター主体の質実剛健なサウンドに一新される。元ベースの栗谷はこれを見て「高校の頃の金属恵比須を見ているようだった」との感想をもらった。栗谷は初演を見ている金属恵比須根っからのファンでもあるのだ。そんな彼がいうのだから原点回帰の様相を呈していたかもしれない。
MCを挟み、ゲスト大和田が登場。初披露となる「虚無回廊 オープニングテーマ」、ライヴ定番の「魔少女A」とアルバム『虚無回廊』のナンバーを続けて演奏。のっけからジャズテイストのソロが響き渡り、バンドに新たな風を呼んだ。一聴するとアグレッシヴなピアノプレイが目立ち、感情のおもむくままに本能で弾いているように聞こえるかもしれない。が、耳を澄ましてみると、アドリブで展開されるフレーズが原曲のメロディやフレーズをモチーフにして変奏していることに気づく。実は非常にアカデミックなアレンジを展開しており、作曲科首席卒業の顔をチラリと見せてくれるのである。
「躑躅ヶ崎館」「月澹荘綺譚」とピアノ主体のナンバーが続いた後、新曲「鏡の中の女」に。大和田が参加することを想定してジャズ風アレンジに。「もし、椎名林檎が寺尾聰のカバーを使用として呼んだバックバンドが1960年代のキング・クリムゾンだったら?」という謎のコンセプトで作られた割には金属恵比須の曲としてまとまった印象に。
代表曲「紅葉狩」はバルトークやストラヴィンスキーを彷彿とさせる現代音楽風ピアノアレンジで度肝を抜かれた後、6年ぶりの演奏の「勝頼」とお馴染み「武田家滅亡」でテンションはマックス。
そして本編終盤に大和田のソロコーナー。ヴォーカルの稲益宏美とギターの筆者が舞台を去り、ドラムのマスヒロとベースのロクロウと大和田の鍵盤トリオ編成となる。マスヒロは「トリオは本当に久しぶり」と嬉々としながら演奏に参加。烏頭のメドレーが始まる。トリオ編成で披露したのは「Trialogue」。ロクロウのベースがジョン・ウェットンを彷彿とさせる極悪ベースで烏頭とは違う表情を見せる展開となった。間髪置かずに「邪神覚醒」になだれ込み本編終了。アンコールの「イタコ」では稲益の絶叫が鳴り響きカオス状態に。こうして“金属恵比須史上最もプログレッシヴ”なライヴの幕は閉じたのだった。
ライヴを終え、金属恵比須メンバーに感想を聞いた。
「大和田さんのピアノはとにかくアグレッシヴ。かつてない重厚感がありましたが同時に上品さを兼ね備えているのが最高でした」(稲益)
「即興性の高いステージで、いつになくヤバい演奏になって楽しかったですね」(マスヒロ)
「異色のコラボを果たし、今までに存在しなかったまったく新しいタイプのプログレが爆誕したような気がします」(ロクロウ)
と誰もが興奮気味に答えたのが印象的だ。
対する大和田はどうか。
「パワフルさ、かっこよさ、情緒あふれる世界観が詰まった金属恵比須の素晴らしい大切な作品の数々。ゴリゴリのセットリストでしたので緊張しました。貴重で楽しい時間でした」
と笑みをこぼしながら語ってくれた。
金属恵比須の今年のライヴはこれで終わり。今ライヴと前ライヴを合わせたライヴ盤の制作に取りかかり、年内に発表する予定だ。次回のライヴは2025年3月15日、吉祥寺シルバーエレファント。その後9月には後藤マスヒロ還暦記念ライヴを企画中である。果たして今後の金属恵比須、どのような進化(プログレス)を遂げるのだろうか。当事者本人である筆者すらもわかっていない。まるで展開が読めないプログレの曲構成のようだ。







写真:木村篤志
文:高木大地