カナダの伝説的ロック・バンド、
ラッシュ(RUSH)の拡張版アルバム再発シリーズの一環で、この度1984年発表の『
グレイス・アンダー・プレッシャー』が、新たなスーパー・デラックス・エディションとして3月13日(金)発売されることが決定。
本作は、この3人組が方向転換を果たし、それまでの作品から進化を遂げた、テクノロジー主導の8曲から成るアルバムです。今回の『グレイス・アンダー・プレッシャー(スーパー・デラックス・エディション)』は5形態でリリース予定。日本では4CD+Blu-rayがSHM-CD仕様で発売されます。
ラッシュにとって10作目のスタジオ・アルバムとなった『グレイス・アンダー・プレッシャー』が初リリースされたのは、1984年4月のこと。テリー・ブラウンのプロデュースで10年にわたり成功を収めてきた彼らは、新たなプロデューサーを迎えてサウンドのさらなる進化を図ることを決意。その結果、幾つかの重要な音響テンプレートに変更・改良が加えられている点が特色となっています。
『グレイス・アンダー・プレッシャー』を構成している8曲は、1982年9月発表の『
シグナルズ』が到達した場所を出発点としており、当時の技術と風潮を存分に活用しつつ、プログレッシヴなルーツとラジオ向けの楽曲アレンジを融合させるという、このバンドの特性を忠実に継承。この『グレイス・アンダー・プレッシャー』は、ラッシュ自身とピーター・ヘンダーソンが共同プロデュースを手掛け、ポール・ノースフィールドによるエンジニアリング(フランク・オポルコと
ロベルト・ディ・ジョイアがアシスタントを担当)で制作されました。
本作は、ラッシュがケベック州モランハイツにある〈ル・スタジオ〉で行ったレコーディング・セッションから生まれた4作目のアルバムです。〈ル・スタジオ〉におけるラッシュの直感的なレコーディング方法は、前述の『シグナルズ』の他、1981年2月の『
ムーヴィング・ピクチャーズ』や、1980年1月の『
パーマネント・ウェイヴス』のセッションを通じ、DNAレベルで浸透していたと言えます。
ゲディ・リーは、「……この時の曲作りは、従来とは異なる音楽的領域へと僕らを導いてくれた。キーボードやサンプリングだけではなく、電子ドラムも含む様々な新しいテクノロジーを用いてサウンドスケープを拡張しつつ、コンソール卓に座っていた従来とは全く異なる作業スタイルを備えた新顔のエンジニアとの信頼関係を築いていった」と語っています。
彼らの方向転換を高らかに告げているのが、『グレイス・アンダー・プレッシャー』の冒頭を飾る「彼方なる叡智が教えるもの(Distant Early Warning)」です。続く「アフターイメージ(Afterimage)」は、バンドと親しかった人物の予期せぬ死を心から追悼する真情に溢れた曲で、その直後に繋がる「レッド・セクターA(Red Sector A)」は、監禁、脅迫、不確実性を描いた、ぞっとするような物語となっています。アナログLP盤のA面を締め括るのは、内省的な「内なる敵へ(The Enemy Within)」で、「恐怖の第一部(Part One of Fear)という副題が付けられている(「恐怖」三部作は逆の順序で発表されており、第二部「恐怖兵器 - The Weapon」は『シグナルズ』に、第三部「魔女狩り - Witch Hunt」は『ムーヴィング・ピクチャーズ』に収録)。
アナログLP盤のB面は、ヒューマノイドの脱出劇「ボディ・エレクトリック(The Body Electric)」で幕を開けます。次の「キッド・グラブス(Kid Gloves)」は、前作『シグナルズ』の収録曲「アナログ・キッド」のサウンドを受け継いだ、強気な続編的楽曲。軽快な「レッド・レンズ」は、猛スピードで駆け巡る不安の念を捉えつつ、全体を緩やかな低音リフが牽引。そして本アルバムは、広がりゆく渦のような「ビトウィン・ザ・ホイールズ(Between The Wheels)」で幕を閉じます。同曲は、ラッシュ最後のツアーとなった〈R40〉ツアーの後期、ライヴの定番となっていました。