出会いと別れの季節、春。新しい日々に胸を躍らせる一方で、これまで当たり前だった時間や人との距離が、少しずつ遠ざかっていく……そんな季節に街を彩る桜は、それぞれの複雑な感情にそっと寄り添う存在。満開の美しさの中に、どこか儚さを感じます。
3月27日は「さくらの日」。全国で少しずつ桜が開花している今、この季節になると自然と聴きたくなる“桜の歌”。思い出や後悔、言えなかった想いまでも優しくすくい上げてくれる楽曲たちは、春の記憶を静かに呼び起こしてくれます。今回は、そんな出会いと別れの季節に寄り添う、心に沁みる“桜”ソングを厳選して紹介します。
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アンジェラ・アキ「サクラ色」 故郷の春の情景を、優しく、そしてどこか切なく描き出した一曲。ピアノの温もりに包まれながら紡がれる言葉のひとつひとつが、過ぎ去っていく時間の尊さを静かに教えてくれます。大切な人との思い出や、もう戻れないあの頃への想い――それでも前に進まなければいけないという揺れる感情に寄り添ってくれる楽曲となっています。満開の美しさの裏にある儚さのように、希望と切なさが同時に胸に広がり、故郷に帰りたくなるナンバー。
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AKB48「桜の木になろう」 大切な人のそばにいたい――そんな願いとは裏腹に、離れ離れになってしまう春。タイトルにもなっている「桜の木になろう」という言葉には、どこかへ行くのでではなく、その場所に根を張り、変わらず大切な人たちを見守り続けるという意味が込められており、会えなくなっても、同じ季節が巡る度に思い出せる存在でいたいと、静かで揺るがない愛情が真っ直ぐに伝わってきます。
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クリープハイプ「栞」 何気ない日々の中にあったはずの大切な時間。それがもう戻らないものだと気づいたとき、人は初めてその尊さを知るのかもしれません。「栞」はそんな過ぎ去った日々にそっと印をつけるような楽曲です。本のページに挟む“しおり”のように、忘れたくない記憶や感情を静かに留めておこうとする想いが込められています。特別な出来事じゃなくても、一瞬一瞬がかけがえのないものだったと後から気づく切なさが心に沁みます。
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コブクロ「桜」 別れの瞬間に感じる、どうしようもない寂しさと、それでも前へ進まなければなれない現実。コブクロの「桜」は、そんな春の痛みと再出発の決意を、真っ直ぐに描いた楽曲となっています。離れていく人、変わっていく環境――失うことは決して小さなことではないですが、その痛みを抱えたままでも人は前に進めると、人の強さをそっと教えてくれます。
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櫻坂46「桜月」 時間が経てば薄れていくはずなのに、ふとした瞬間に鮮やかに蘇ってしまう……そんな記憶の揺らぎを繊細に描いた一曲。本楽曲の中で描かれるのは、終わったはずの関係や、心に残り続ける誰かへの想い。桜の季節は、別れだけではなく、まだ消え切らない想いとも向き合う時間。その余韻ごと受け止めながら、静かに次の一歩へと背中を押してくれる楽曲となっています。
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清水翔太「桜」 もう隣にはいないはずなのに、桜が咲く景色の中であの頃の記憶がふと蘇る――そんな感情をリアルに描いた一曲。前に進もうとしているはずなのに、季節は時に優しく、そして残酷に過去を連れてきます。時間が経てば忘れられるわけではなく、むしろ大切だった想いほど、季節とともに何度でも思い出されます。だからこそ本楽曲は、“未練”ではなく、“大切な記憶”としての恋をそっと肯定してくれます。
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福山雅治「桜坂」 本楽曲は、過去の報われなかった恋の記憶を、どこまでも穏やかに描いた一曲。同じ景色を見て、同じ時間を重ねていきたいという夢が、叶わないまま心の中にそっと残り続け、それでも季節は変わらず巡っていきます。桜は今年も同じように咲き、何事もなかったかのように春は訪れます。その変わらなさが、かえって心の中の喪失を浮き彫りにします。
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もさを。「桜恋」 女性目線のラヴ・ソングを歌うシンガー・ソングライター“もさを。”が歌う「桜恋」は、好きだった人への真っ直ぐな気持ちと、もう届かない距離を素直に描いたナンバー。伝えきれなかった言葉や、あと少しの勇気があれば変わっていたかもしれない未来。そんな“もしも”を何度も思い返してしまうのは、それだけその恋が大切だった証なのかもしれません。それを否定せずにそっとすくい上げてくれる温かい一曲。
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優里「桜晴」 「桜晴」は、ファンから届いたメールをきっかけに制作された優里初の卒業ソング。旅立ちの裏側にある、家族や友達への感謝の想いを繊細に描いています。これまで当たり前のようにそばにいた存在。離れることで初めて気づくその温もりが、胸にじんわりと広がっていきます。ピアノとストリングスと優里の切なくエモーショナルな歌声が極まった万感の一曲となっています。
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レミオロメン「3月9日」 いくつもの出会いと別れを重ねながら、人は少しずつ前に進んでいく。本楽曲は、そんな人生の節目に寄り添い、これまでの日々を優しく包み込んでくれます。何気ない日常の積み重ねや、そばにいた人たちとの時間がどれほど大切だったのか――その全てを振り返るような温もりがこの楽曲にはあります。桜が咲く頃、人はまた新しい一歩を踏み出します。過去を抱きしめながら前に進む、そんな強さを感じさせてくれる春の定番曲です。
春は、新しい始まりの季節と言われています。ですが、それだけではなく、出会いの裏には別れがあって、前に進む度に置いてきた時間や人の存在に気づかされます。だからこそ桜が咲くこの季節は、少しだけ切なく、そんな複雑な感情にそっと寄り添ってくれる“桜ソング”を聴きたくなります。それぞれの場所でそれぞれの想いを抱えながら、少しでも前を向けるように、この音楽たちがそっと寄り添ってくれることでしょう。
(写真は、2004年3月9日リリースのレミオロメン「3月9日」)