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アンネ=ゾフィー・ムター、デビュー50周年を記念した同時代音楽シリーズを始動 第1弾は書き下ろし作品集

アンネ=ゾフィー・ムター   2026/02/10 12:36掲載
アンネ=ゾフィー・ムター、デビュー50周年を記念した同時代音楽シリーズを始動 第1弾は書き下ろし作品集
 ヴァイオリニストのアンネ=ゾフィー・ムター(Anne-Sophie Mutter)が、2026年のデビュー50周年を記念して、みずからプロデュースする同時代音楽の新録音シリーズ「ASM Forte Forward」をALPHA CLASSICSで始動。その第1弾として、「東洋と西洋」の融合をテーマに、彼女のために書き下ろされた全4作品で構成するアルバム『East Meets West』を3月27日(金)に発表します。収録曲から、イラン出身のアフタブ・ダルヴィシが作曲した無伴奏作品「リクー」が公開されています。

 公開されている「リクー」は、イラン南東部に伝わる愛の喪失と渇望を表現した悲しい伝統歌謡に着想を得ており、2025年6月15日、イスラエルによるイラン攻撃が始まった「12日間戦争」の最中に録音されました。作曲家はこの出来事により、作品に込められた悲しみが新たな意味を持つようになったと述べています。

 ヴァイオリニストのナンシー・ゾウとともに録音した、韓国出身、チン・ウンスク(陳銀淑)作曲の「グラン・カデンツァ」は、独奏者が技巧を誇示する伝統的なカデンツァを2人の奏者による対立、対話、融合の場へと発展させたもの。即興的に聞こえる箇所もすべて記譜されています。

 ドイツのイェルク・ヴィトマンが作曲した「スタディ・オン・ベートーヴェン」は、ベートーヴェンの語法を分析・変容し現代の視点から再構築した弦楽四重奏曲。イェウン・チェ(vn)、ムリエル・ラザヴィ(va)、パブロ・フェランデス(vc)とともに録音しました。この曲では、使い古されたとされる「調性」という素材を用いながら、いかに新しい独創的な表現が可能かを実験しています。ベートーヴェンが、演奏困難な箇所に不平を言った奏者に対し「ミューズに語りかけられている時に、お前の哀れなヴァイオリンのことなど考えていられるか」と言い放ったという逸話への皮肉な言及も含まれています。世界初演は2020年2月22日にサントリーホールで行なわれました。

 そして、作曲したイギリスのトーマス・アデスがみずから指揮したロンドン交響楽団との「エア(Air)」は、高音域の多用による浮遊感が特徴的な協奏曲です。パンデミックの最中、音楽家がスーパースプレッダー(空気感染の媒介者)として危険視された時期に、「音楽とは結局のところ、空気(Air)の震えにすぎない」という事実を肯定的に捉え直そうとしたこと、またヴァイオリンとオーケストラによる「歌(Aria=Air)」にもかけて命名されました。ムターは、指板の端ギリギリの超高音を多用する本作において、自身の左手小指は「勲章に値する働きをした」とユーモアを交えて評価しています。

 ムターは「音楽は私たちがそれを更新し、伝えていくことで生き続ける」と語ります。ソロからオーケストラまで、国境や文化を超えた多彩な響きが収められたこのアルバムは、慣れ親しんだ場所に安住せず、未知の音世界へ果敢に挑み続ける彼女の半世紀の集大成であり、音楽の未来を照らしています。



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