オウテカ、暗闇の中音だけが牙を剥く“ピッチブラックLIVE”のレポートが到着

オウテカ(Autechre)のジャパン・ツアーが2月4日と2月5日に東京と大阪で開催されました。場内の照明をすべて落とした、オウテカならではの“ピッチブラックLIVE”より、2月4日の東京・ZEPP Divercity公演のレポートが到着しています。
なお、会場にて完売した最新グッズのオンライン受注もスタート。詳細はBeatinkの公式サイトをご確認ください。
[ライヴレポート]
オウテカの東京公演を見た。心底恐ろしい体験だった。
来日は2023年のSONICMANIA以来だが、単独日本ツアーは2018年以降初めて。私が見るのもそれ以来だ。彼らのライヴを見た者なら知っている通り、「ピッチブラック」と呼ばれる、場内の照明をすべて落とした真っ暗闇でのライヴが、今回もおこなわれた。
サポートで登場したKohei Matsunagaの、90年代ハード・ミニマルさながらのダンス・グルーヴが強烈な印象を残したあと、レコードより中低域を強調した、硬質でヘヴィな変則リズムが地響きのように鳴りわたる。その瞬間、フロアは一気に盛り上がりを見せたが、隣の人の顔も見分けがつかないほどの、自分の手元も見えないほどの暗闇では、どのみち並みのライヴ・コンサートが目指すような多幸感や一体感、熱気、エモーション、高揚感などは生まれようもない。彼らは共感や共鳴や情緒的共振は一切求めていない。その乾ききった冷たく無機的な電子音の容赦のなさ、あまりの強度に震える。
歌も歌詞もメロディもハーモニーもない。重低音変則リズムが全身をマッサージし、キリキリとこめかみに食い込んでくるようなノイジーで刺激的な電子音が銃弾のごとく間断なく飛び交う。その絨毯爆撃のようなハードな音は、さながら戦場のど真ん中に居合わせたようだった。視覚を奪われ、身体の躍動も奪われ、聴覚だけが異様に研ぎ澄まされた状態に追い込まれ、ヒリヒリとした不安や恐れの念がよりいっそう強く感じられるようになる。お互いの肩が触れあうような超満員なのに、そこには冷え冷えとした荒涼感が漂い、ひとりひとりがバラバラに切り離され孤立している情景がはっきりと浮かんでくるのだ。
もちろん、そう感じたのは私の感覚であって、見た者によって異なる感想があるだろう。終わったあとの歓声の多さは、このライヴを普通のエンターテインメントとして受け止め楽しんだ人たちの多さを示しているのかもしれない。だが私は、不吉で不穏な時代が足音もなく忍び寄ってくるような、そんな恐怖を感じた。ほかのアーティストにはない、視覚でも、言葉でもありえない、オウテカの音の持つ力がそうさせたのである。デビュー以来30年、こんなハードな音楽を妥協なくやり続けている精神力に心底敬服する。
Text by 小野島大
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