7月に来日公演を行なった
キアロスクーロ四重奏団(Chiaroscuro Quartet)は、2021年発表の『ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第1番-第3番』以来ベートーヴェン弦楽四重奏曲全集録音に取り組んでいます。その第5弾として、中期作品の完結編にあたる2曲に「大フーガ」を加えた『ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第9番「ラズモフスキー」、第11番「セリオーソ」、大フーガ』を10月16日(金)に発表します。
ハイドンや
モーツァルトが樹立した様式と独自の実験精神との折り合いを模索した作品18の6曲の後、先進的なアイディアを臆さずに盛り込んだのが作品59の通称「ラズモフスキー・セット」。その第3曲にあたる第9番も第1楽章の混とんとした序奏から疾走するフーガによる最終楽章まで、じつにダイナミックな作品です。
第11番は16曲ある
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中で演奏時間はもっとも短いながら、作曲者みずから「セリオーソ(真剣、厳粛)」と名付けただけあって力作。調を曖昧にしたり、関連性が希薄なモチーフを突然導入したり、厳格さの中にも波乱含みの展開で、緊張と集中が聴く者にも求められます。
「大フーガ」は当初第13番のフィナーレとして作曲されながら、演奏者と聴衆双方にとって難しすぎると見た出版社の要望で別のフィナーレに差し替えられた楽曲。強烈な不協和音を伴う激しい楽想と難解な展開は、当時の第一級の演奏家たちにさえ理解不能で恐怖を覚えたとされるほどですが、20世紀になると評価が変わり、
ストラヴィンスキーをはじめ先鋭的な作品との声が高まりました。前作の第7番&第8番の録音で雄大なスケールと強烈なコントラストで曲の精神を抉り出したキアロスクーロ四重奏団の演奏はここでも冴えています。
ガット弦でヴィブラートを抑制することによって幽玄さや攻撃的なまでの響きなどを生み出し、ベートーヴェンが曲に託した世界を遺憾なく表現。これら3曲が当時の聴衆や演奏家に与えたであろう驚きや衝撃をよみがえらせます。SACDハイブリッド・ディスクでのリリース。国内仕様盤には越懸澤麻衣による日本語解説が付属します。