宮本浩次が、毎年自身の誕生日に開催するバースデー・ライヴを、〈60周年記念公演 さあ、ドーンと行くぜ!〉と銘打ち、6月12日東京・ぴあアリーナMMにて開催しました。60歳の節目となる本公演は、三部構成で、最新アルバム『
I AM HERO』の収録曲をはじめ、カヴァーや
エレファントカシマシの代表曲など全24曲を披露。
宮本の10歳当時の初レコード作品「はじめての僕デス」を流し、60歳の宮本と声変わり前の10歳の宮本がユニゾンで歌う場面なども挟みながら、三部では赤いスーツ、赤いシャツ、赤いネクタイ姿で登場し、エレファントカシマシの「RESTART」を披露するなど、“60年で人生が一巡し、新たな人生のスタートを切る”という還暦を祝うにふさわしい公演となりました。
なお、本公演は、ライヴ配信も実施。アーカイブ視聴可能期間は6月15日(月)23:59まで、販売期間は6月15日21:00までとなります。
[ライヴ・レポート] 宮本浩次の『60周年記念公演 さあ、ドーンと行くぜ!』 が2026年6月12日、神奈川・ぴあアリーナMMで、超満員の観客が詰めかけるなか、開催された。還暦を迎えた当日の公演ということもあり、通常のバースデイライブよりも“節目”のニュアンスが濃くなっていた。6月10日にソロとして4年半ぶりのオリジナルアルバム『I AM HERO』を発表した直後というタイミングでもあり、新作の曲が散りばめられていたが、エレファントカシマシの曲、カバー曲なども交えた多彩な構成になっていて、宮本のこれまでの音楽人生も鮮やかに浮かび上がった。この公演は全国各地の映画館でのライブ・ビューイングのほか、配信も行われたため、画面越しに愛と感動と熱狂の夜を体験したファンも多かったことだろう。
オープニングからスペシャルな演出があった。楽屋からステージへ向かう宮本の映像がステージ上のモニターにリアルタイムで映し出されたのだ。宮本がカメラに向かって、両手を広げておどけた表情を浮かべている。なんとお茶目な60歳だろう。宮本がステージに到着したと同時にライブがスタートした。一部の始まりの曲は「I love人生!」。宮本の伸びやかな歌声と強靭かつ自在なバンドの演奏が鳴り響いた瞬間から、会場内に高揚感と祝祭感が渦巻いた。バンドのメンバーは小林武史(Key)、名越由貴夫(Gt)、須藤優(Ba)、玉田豊夢(Dr)。宮本と何度も同じステージに立ち、宮本が絶大な信頼を寄せる凄腕ミュージシャンたちだ。
「悲しみの果て」「風に吹かれて」などのエレファントカシマシの代表曲はもちろん、レアな曲もいくつか披露された。そのひとつは、エレファントカシマシの2002年発表の「漂う人の性」。30代の頃に書いた曲を60歳の宮本がこんなにも真っ直ぐに、そしてこんなにも熱く歌えるのは、宮本がブレることなく“漂う人”であり続けているからだろう。宮本がアコースティックギターを弾きながら歌う姿は吟遊詩人のようでもあった。
「over the top」「哀愁につつまれて」など、最新作の楽曲は、ライブで演奏されることで、個々の曲の本質がより鮮明になっていくようだった。カバー曲は新たなアレンジが施され、今の宮本の歌声によって、新鮮な表情が見えてきた。小林の繊細なピアノに導かれて始まった「ジョニィへの伝言」では、ハットをかぶり、物語を紡ぐように丹念な歌声を披露。「飾りじゃないのよ 涙は」では、破壊された都市の映像が映し出され、ダンサー2人が踊る横での歌となった。激しい雨が瓦礫を打ち付け、宮本の歌声が悲痛に響いた。一部最後の曲は「close your eyes」。目を閉じて聴いていると、胸の扉が開き、宮本の優美な歌声が体内に満ちていった。
二部のスタートの曲は「夜明けのうた」だ。宮本は赤いケープ風の衣装をまとい、花道の先端が上昇した円形ステージの上で歌っていた。希望の匂いのする歌声が、かすかに差す朝日のようにさりげなく、でも確実に染みてきた。「愛を抱きしめろ」では、躍動感あふれるグルーヴに乗ってのワイルドな歌声で観客を荒々しく叱咤激励。
「宮本浩次、実は歌手デビュー50周年の年でもあるんです」というMCに続いて、宮本の10歳当時の初レコード作品「はじめての僕デス」の音源が流れ、途中から60歳の宮本が歌い始めると、大きなどよめきが起こった。60歳の宮本と声変わり前の10歳の宮本がユニゾンで歌っていた。2人の宮本に共通するのは、ともに成長期の真っ只中であることだろう。スクリーンに映し出された月が三日月から満月へと満ちていくなかでの「今宵の月のように」や、銀テープが発射され、キラキラと輝く会場内にいる全員を称えるような「ハレルヤ」など、全曲がハイライトであり、クライマックスだった。
「60周年記念、どうもありがとう。幸せです。信じられません!」との言葉に続いて、銀の紙吹雪が舞う中で披露されたのは「Today-胸いっぱいの愛を-」。曲の終わりで宮本がステージ上段に設置されたドラを鳴らし、観客を祝福した。二部のラストは最新アルバム収録曲の「I AM HERO」だ。限界を超えていくような宮本の渾身のシャウトと白熱の演奏が、すべての観客を鼓舞した。
三部で登場した宮本は、赤いスーツ、赤いシャツ、赤いネクタイ姿で、赤い紙吹雪が舞う中で「冬の花」を歌った。愛の告白のような情熱的な歌声による「P.S. I love you」に続いて、三部の最後の曲は、エレファントカシマシの「RESTART」だ。2017年に発表された曲であり、苦難を乗り越えた証が刻まれたロックンロールだ。還暦には“60年で人生が一巡し、新たな人生のスタートを切る”という意味がある。この瞬間にぴったりな選曲だ。スクリーンに若き宮本の写真の数々が映し出される演出もあった。夢を見続け、明日を思い続けてきた男は、今もなお、夢を見て、明日を思い、挑み続けている。〈ここからがRESTART〉というフレーズの“ここ”とは、今この瞬間、この場所だろう。
三部が終了したところで、宮本が花道を歩き、アカペラで「Happy Birthday to You」の歌詞の一部を変えて、「ハッピーバースデイ、ディア・エブリバディ」と歌い、観客を祝福した。さらに、モニターに60本のロウソクが灯る映像が映し出されると、「一緒に消そうぜ、エブリバディ」と提案し、宮本の「せーの」の合図で、観客全員が「フー!」とロウソクの炎を消した。こんなかけがえのない場面を思い出として胸に刻むことが、明日への活力となっていくに違いない。終演直後、2026年末から2027年にかけてのアリーナツアーも発表された。まだ披露されていない『I AM HERO』の楽曲たちは、息を潜めてその時を待っている。






Text:長谷川誠
Photo:伊藤彰紀