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パンク50周年 映画で知る“反逆のロック”の真実 ドキュメンタリー編

2026/10/23掲載
『CBGB ニューヨーク、PUNKが生まれた場所』が公開されましたが、パンク映画やドキュメンタリーの名作は他にもありますか?
 ニューヨークで『Punk Magazine』が創刊され、ダムドやザ・クラッシュが結成されてから半世紀。パンク50周年を迎えた今年は、トーキング・ヘッズのリーダー、デヴィッド・バーンのサマーソニック出演や9月のザ・ダムド来日公演が大きな話題となり、さらに2027年にはジョン・ライドン率いるPublic Image Ltd.(PiL)の来日も控えています。

 その盛り上がりは映画界にも波及し、3月には、“東京ロッカーズ”を題材にした『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』が公開され、4月には『ビリー・アイドル パンク・ロッカーの反逆と代償』が公開。さらに、デヴィッド・バーン来日にあわせて『アメリカン・ユートピア』が再上映され、10月には『セックス・ピストルズ 破壊の設計図』も封切りに。そして10月23日からは、“パンクの聖地”CBGBを舞台に、その誕生と軌跡を描いた『CBGB ニューヨーク、PUNKが生まれた場所』がスクリーンに登場しています。

 そこで今回は、当時の熱狂を知る世代はもちろん、パンクに憧れる後続世代にもおすすめしたい作品をピックアップ。ロック史を大きく塗り替えたムーヴメントの息吹を、映画やドキュメンタリーを通して追体験してみましょう。

■『地獄に堕ちた野郎ども』
2015年製作 / アメリカ / 配給:ビーズインターナショナル
 今年9月の来日公演で、英国ロックを代表すると言っても過言ではない優れた楽曲の数々に加え、往年の名曲では“紙袋”をかぶる“ファンサ”演出まで披露し、観客を魅了したザ・ダムド。キャプテン・センシブルらの見せ場も盛沢山ながら、やはり圧倒的な存在感を放っていたのは、デイヴ・ヴァニアンの妖しく、最早気品あふれる佇まいと歌声でした。本作は、ザ・ダムド初の公式ドキュメンタリー。度重なるメンバー交代を経験しながら、唯一バンドに在籍し続けてきたヴァニアンが、胸の内を語る点が大きな見どころです。荒々しさとゴシックな美学が同居するザ・ダムドの唯一無二の魅力は、まさに彼の存在あってこそ。監督は『極悪レミー』のウェス・オーショスキー。ザ・クラッシュのミック・ジョーンズ、プリテンダーズのクリッシー・ハインド、パンクDJのドン・レッツらも出演しています。



■『ザ・パブリック・イメージ・イズ・ロットン』
2017年製作 / アメリカ / 配給:キュリオスコープ
 マルコム・マクラーレンの視点で描いた『ザ・グレイト・ロックン・ロール・スウィンドル』、メンバー視点の『NO FUTURE A SEX PISTOLS FILM』、そして初代ベーシストのグレン・マトロックに焦点を当てた『セックス・ピストルズ 破壊の設計図』。数あるセックス・ピストルズ作品の中でも、本作は、ジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)が生い立ち、セックス・ピストルズ、そして2027年に来日するPiLについて赤裸々に語ったもの。ジャー・ウォブルらメンバーの証言も交えつつ、ピストルズからPiLへの転身での苦労が語られる中、やはり胸に響くのは、2023年に逝去したジョンの愛妻ノラについて語る場面。なお、2023年の最新アルバム『エンド・オブ・ワールド』には愛妻ノラへのラヴ・ソング「ハワイ」も収録されています。



■『シェイン 世界が愛する厄介者のうた』
2020年製作 / アメリカ・イギリス・アイルランド合作 / 配給:ロングライド
 「ニューヨークの夢」「ダーティ・オールド・タウン」などの名曲で知られ、ドロップキック・マーフィーズやフロッギング・モリーに繋がるケルティック・パンクの草分けとして知られるポーグス。そのフロントマンであるシェイン・マガウアンの人生に迫ったドキュメンタリーです。制作には、30年来の親交を持ったジョニー・デップが参加。インタビュアーとしても登場しています。酒とドラッグにまみれた“永遠の悪ガキ”として知られるシェインですが、本作ではアイルランドの農場で豊かな伝統文化に触れながら育ち、やがてロンドンで「エスニックが流行なら俺たちにも…」と、パンクとケルト音楽の融合に挑んでいく軌跡が語られます。アイルランド民謡をカヴァーした「ワクシーズ・ダークル」、可笑しみと悲しみが同居する「回想のロンドン」、寂寥感がしみる「ペア・オブ・ブラウン・アイズ」など、どの演奏シーンからもシェインならではの人間臭い魅力が伝わってきます。毒気たっぷりなのにどこか憎めないシェインの語りに触れれば、なぜ彼が多くの人に愛され続けたのか、きっと納得できるはず。2023年にこの世を去った彼の晩年の姿を記録した貴重な作品でもあります。


■『白い暴動』
2019年製作 / イギリス / 配給:ツイン
 本作は1970年イギリス、人種差別撤廃を叫ぶ抗議活動“ロック・アゲインスト・レイシズム(略称RAR)”の活動に迫ったドキュメンタリーで、RARが白人と黒人両方のアーティストが出演する音楽イベントを1978年4月ヴィクトリア・パークで開催。シャム69、スティール・パルス、トム・ロビンソン、X-レイ・スペックス、そしてザ・クラッシュらが起用され、パンクとレゲエが手を取り合い、人種差別に抗う力強いメッセージを発信した当時の熱気が映し出されます。特にザ・クラッシュは、ジョー・ストラマーの生涯を描いた名ドキュメンタリー『ロンドン・コーリング ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー』もありますが、こちらの名演も是非観て欲しいところです。分断や対立が世界各地で続く今だからこそ、その意義とメッセージの重みを改めて考えさせられます。

■『ナイトクラビング:マクシズ・カンザス・シティ』
2022年制作 / スペイン / 配給:キュリオスコープ
 CBGBよりも10年ほど早く開店した、NYパンクのルーツとなったライヴ・ハウスのドキュメンタリー。音楽ドキュメンタリーの名手ダニー・ガルシア監督が、ニューヨーク・ドールズ、スーサイド、デヴィッド・ボウイ、イギー・ポップ、シド・ヴィシャスらの貴重映像を交えながら、当時の熱気と混沌を鮮やかに映し出します。『CBGB ニューヨーク、PUNKが生まれた場所』のような青春群像劇的な爽やかさを薄いものの、その分、シーンの裏側を伝える証言の数々は非常に濃密。とりわけ、テーマ曲「Max's Kansas City」で知られるジェイン・カウンティ(ウェイン・カウンティ)が語るエピソードは必聴です。Shrapnel「COMBAT LOVE」が劇中歌に流れるなど、B級パンク・ファンも唸るサウンドトラックも特筆すべきところです。


■『ギミー・デンジャー』
2016年製作 / アメリカ / 配給:ロングライド
 “ゴッドファーザー・オブ・パンク”ことイギー・ポップ率いるザ・ストゥージズに迫ったドキュメンタリー。70年代初頭にイギリスへパンクの種をまき、映画『トレインスポッティング』のOPを飾る「ラスト・フォー・ライフ」をはじめその後も音楽界に多大な影響を与え続けたイギーは、自傷、露出と過激なパフォーマンスで伝説を築く一方、俳優としても異彩を放ってきました。本作では、イギーの熱烈なファンであり、イギーも度々起用するジム・ジャームッシュ監督が、ザ・ストゥージズの軌跡とその革新性を描写。若かりし頃のイギーの奇行もたっぷり描かれる一方、幼少期のTV番組から名曲を生み出す“秘訣”をさとったことや、上手さよりも凶暴さ、荒々しさを追求した演奏など、イギーのパンク哲学も語られます。


■『ジョーン・ジェット バッド・レピュテーション』
2018年製作 / アメリカ / 配給:ビーズインターナショナル
 70年代パンク・ムーヴメントとも密接に関わりを持ち、ビキニ・キルら後の“ライオット・ガール”の源流としてもリスペクトされるジョーン・ジェットの半生を描いたドキュメンタリー。ザ・ランナウェイズ時代、女性バンドが男性バンドと同等に評価されることの難しさに直面しながらも、自らの信念を貫いてきたジェット。さらに、The Gitsのヴォーカルだったミア・サパタの痛ましい死を受けた“ジョーン・ジェット&ザ・ギッツ”に至るまで、音楽を通じて女性の尊厳や自由を訴え続けた姿が描かれます。「チェリー・ボム」や「バッド・レピュテーション」といった痛快なロック・ナンバーの奥にある、揺るぎない彼女の信念を改めて感じさせてくれます。


■『ストップ・メイキング・センス』
1984年製作 / アメリカ / 配給:ギャガ
 映画『CBGB ニューヨーク、PUNKが生まれた場所』でもフォーカスされるトーキング・ヘッズ。本作は、1983年12月にハリウッドのパンテージ・シアターで行なわれた伝説的なライヴを収めたもので、デヴィッド・バーンの『アメリカン・ユートピア』とあわせて語られることも多い、ライヴ映画の金字塔です。バーン、ティナ・ウェイマスらメンバー4人に加え、バーニー・ウォーレルやエドナ・ホルトらサポート・メンバーを含む総勢9人が繰り広げるパフォーマンスは圧巻。ジョナサン・デミ監督による光と影を巧みに生かした映像演出もあり、単なるライヴ映像を超えた芸術作品へと昇華されています。バーンの奇妙な踊りや“ビッグ・スーツ”、ティナ・ウェイマスの妖精のように可憐なベース・プレイはもちろん、「ブラインド」で聴けるバーニー・ウォーレルの洗練されたキーボードなど、多くの刺激がもらえる一作です。



 ストリーミングの普及で音楽は手軽に楽しめるようになりましたが、その一方で解説や歌詞カードに目を通す機会は減ったかもしれません。ドキュメンタリーは、アーティストのルーツや音楽に込めた思いを知ることができる貴重な機会。次回は、パンクを題材にした物語映画をご紹介します。
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