今日より明日はもっと上手になっていたい――ピアニストの宮谷理香、デビュー20周年を迎えたその思い

宮谷理香   2016/10/22掲載
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 1995年の第13回〈ショパン国際ピアノコンクール〉に第5位入賞を果たし、翌年サントリーホール(東京)やいずみホール(大阪)など各地でデビュー・リサイタルを開催。それ以後、ピアニストとして着実な歩みを見せてきた宮谷理香。これまでに13枚のソロ・アルバムをリリースし、どれもが高い評価を受けている。この9月にリリースしたデビュー20周年記念アルバムは、宮谷のライフワークであるショパン作品から「ワルツ」を収録したもの。
 さらに、宮谷自身の持ち込み企画で『音楽の玉手箱 Vol.1-カンタービレ-』が11月にリリースされる。こちらはショパン「バラード第1番」を核にしつつ、ベートーヴェン「エリーゼのために」やリスト「愛の夢」などの小品、さらにはブルグミュラーの練習曲から数曲を選んで構成。クラシック・ピアノの魅力を広く知ってほしいという思いが込められたアルバムとなった。
――ショパン・コンクールに第5位入賞し、華々しくデビューしたことがついこの間のことのようです。今年、20周年になるんですね。
 「支えてくださった皆さんのおかげです」
――デビュー当時は、一部の評論家が“こんなお嬢さんピアニストは、もって3年。5年後には消えているだろう”などと言っていたことがありました。宮谷さんの華やかな雰囲気が気に食わなかったのでしょう。演奏をきちんと聴けば、将来を嘱望されるフレッシュな才能であることがわかったはずなのに。
 「当時はいろいろ言われました。そうした言葉には傷ついたり、気持ちがへこんだりはしましたが、逆に、演奏内容で評価されるよう精進しよう、と思えたのは事実です。自分と闘いながら、日々を丁寧に生きようと思い続けるきっかけになったのです」
――いつも満面の笑顔を見せてくれる宮谷さんですが、内面は本当に強い方なんですね。
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 「昨日よりも今日、今日よりも明日はもっともっとうまくなっていたいのです。始めたことをいい加減な形で終わらせたくない性分なので、準備は120%行なったうえで演奏に臨みたいと思っています」
――ショパンのワルツばかりで構成したデビュー20周年アルバムでも、徹底的に楽譜を読み込み、幾度も演奏することで自分の血肉となり、だからこそ生み出される、自然で豊かな感情の揺れ動きが感じられます。
 「そう言ってくださると、ピアニスト冥利に尽きます。ピアノに出会い、そこにショパンが存在していたことが、私には幸運でした。私が自己主張をせずとも、ショパンの名曲の数々が、たくさんのことを表現し語ってくれるのです」
――宮谷さんはピアノ・デュオ(デュオ・グレイス)やピアノ・トリオ(アンサンブルΦ)などアンサンブルを組んでいますが、そこでも、相手をまず尊重して自分の音楽を作っていくタイプのように見受けられます。そういう意味では、自分も周囲も客観的に見ることができる人なんですね。
 「長く思っていたのは、賞を取って舞台で活動する“リカ・ミヤタニ”と、普段の私“宮谷理香”は違う存在だということ。そのせいか、ピアニストはこうあるべき、という頭でっかちなところがありました。10年くらいして、明るくいつも前向きな“理香りん”というキャラクターを与えていただき、ブログやエッセイなどで使うようになって、肩の力を抜くことができるようになりました。今はどれも自分で、違う面をお見せしている、という感じになっています」
――話が重複しますが、20周年アルバムについて。有名曲も含まれていますが、ワルツだけで構成するのは、記念の録音にしてはすこし地味な企画かなと思いました。
 「近年の録音では、ショパン・シリーズとして『バラード』『スケルツォ』『ソナタ』と3枚、ファンタジー・シリーズとして『芽』『樹』『彩』と3枚、またショパンに戻って『ポロネーズ』をリリースしたので、今回は『ワルツ』が流れにはまる、というわけです。3という数字が私にぴったりとくるのもありますが、コンセプトをあれこれと考えるのが趣味なので、つい、あれこれとこだわってしまうのです。今回のワルツは、多様に書かれていて、曲ごとに変化もありますし、ショパンの中でも親しみやすい。一般的な意味での全曲と言える19曲を網羅したいとも思っていました」
――宮谷さんの演奏は、こだわった内容でありつつも優しく聴き手を招くようなもの。一方で、曲目解説はショパン研究の多田純一氏がアカデミックに書いていますね。
 「聴いていただきながら、楽曲への理解も深めていただけるようにと思いました。本当にきちんと書いてくださって、多田さんには心から感謝です」
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――もう1枚、11月に『音楽の玉手箱』をリリースしますね。こちらは趣を変えて、小品集。一筋縄ではいかない、という印象を持たせる選曲が宮谷さんらしいところです。
 「いつも持ち歩いていて思いついた時に書き込んでいる、アイディア・カードの中から生まれた、名曲集の企画です。アルバム・タイトルは収録曲のリャードフ〈オルゴール〉から考えました。ロシアではアンコールの定番で、ピアニストが自分の個性を発揮できるような、多様なアプローチのできる曲なんです。ここから発想を広げて“玉手箱”としました。オルゴールの邦題でもあります。クラシック初心者からコアなファンまで、子どもから大人まで、とボーダーレスで楽しんでいただけるように考えました。“アラベスク”つながりをはじめ、“鳥”“バラード”“花”など小さなテーマを織り込んで並べているのもちょっとしたこだわりです。同じようなタイトルでも、作曲家によってファンタジーが異なる。そこに、その人の人生も見え隠れするように思いました。聴く人によっても、さまざまな解釈が生まれるといいなと思っています」
――ピアノのおけいこでおなじみのブルグミュラーの『練習曲』を4曲入れたのも目を引きます。
 「まさかのブルグミュラーでしょ?今、彼の練習曲の価値が見直されているようですが、素敵な作品がたくさんありますね。一つひとつがキャラクター・ピースとなっていて、心をつかみます。そのほか、それほど知られていない作品も織り交ぜていますが、どれも時代を超えて残ってきたものばかり。一見シンプルに見える作品でも、演奏の多様性を受容するキャパシティを持っている。ショパンはその最たるものですよね」
――『音楽の玉手箱』はシリーズになりそうな予感がします。
 「じつは、アイディアはすでに5つくらいあるんですよ。もちろん、ショパン・シリーズの3つめ、ファンタジー・シリーズの次の3つについても考えています」
――アイディア倒れにならないのは、徹底的に練り込まれてから生み出される演奏があるからこそ。今後も期待しています。
 「これからもそうですが、演奏会でも拍手に満足するのではなく、次への励ましととらえて気を引き締めていたい。そして、今日より明日はもっと上手になっていたい、という気持ちは、変わらず持ちつづけられたらと思います」
取材・文 / 堀江昭朗(2016年9月)
デビュー20周年記念 宮谷理香ピアノリサイタル 「音で紡ぐ物語」
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2016年11月23日(水)
東京 上野 東京文化会館 小ホール
開場 13:30 / 開演 14:00
SS 5,000円 (コンサートイマジンのみ取扱)
S 4,000円
U25 2,000円 (25歳以下限定 / 当日指定券と引換え / コンサートイマジンのみ取扱)
コンサートイマジン 03-3235-3777
東京文化会館チケットサービス 03-5685-0650
ほか
※未就学児入場不可


[曲目]
モーツァルト: ピアノソナタ第10番K330
シューマン: 謝肉祭「4つの音符による面白い情景」
ショパン: バラード全4曲


※お問い合わせ: コンサートイマジン 03-3235-3777
www.concert.co.jp


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