“好きだ!”という気持ちをぶつける対象があるだけで、人生はとても豊かになる――寺嶋由芙が目指す“ゆるドル”とは

寺嶋由芙   2017/03/24掲載
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 3月22日にニューシングル「天使のテレパシー」をリリースした寺嶋由芙。前作アルバム『わたしになる』でテイチクエンタテインメントに移籍してから初のシングルとなる本作は、ソロアイドル全盛の80年代を彷彿とさせるド直球の王道アイドルソングで、当時を知る者には懐かしく、知らない者には新鮮に響くに違いない。また、大好きなアイドルとゆるキャラを繋ぐべく、現在“ゆるドル”活動にも邁進中の彼女。“好きだ!”という気持ちをぶつける対象があるだけで、人生はとても豊かになる――。想像力を鍛える場の乏しい現代社会で、その奥深い言葉は貴方の人生をより豊かに彩るための大きなヒントになるはずだ。
――新曲「天使のテレパシー」を聴かせていただいたのですが、まさに80年代アイドルそのものの王道アイドルソングで、キャッチコピーの“古き良き時代から来ました”とは、なるほどこのことか!と納得しました。
 「やった! まさに今回は、ソロアイドルさんが活躍されていた時代が好きだった方に刺さるといいなぁっていうのが一番にあったんです。そこを含め、幅広い意味での“古き良き”に挑戦していきたいんですよね。このキャッチフレーズも最初に使い始めたときは、実はあんまり深い意味もなく……って言うと変ですけど。現代の流行に疎い自分を“ダサい”とか“古臭い”とかっていうマイナスイメージの言葉じゃなく、なんとかポジティヴに言い替えられないかな?って考えた時に出てきたフレーズだったんです」
――え? 流行に疎いって本当に?
 「あんまりわかんないです。Twitterとかは好きでやってますけど、その他の今ドキ女子がやってそうなことには興味も無くて、それだったらゆるキャラかな!みたいな(笑)。“私服がダサい”とか“髪型が平安時代っぽい”ともよく言われるので、だったら開き直って“古き良き時代から来ました!”と言ったほうが自分も楽だし。今回みたいな“古き良き”曲を頂く機会だったり、そういう私を好きでいてくださる方も増えてきたり、それが寺嶋由芙の一つの色になってきたので良かったです」
――ちなみに寺嶋さんご自身が好きな音楽も“古き良き”ものなんでしょうか?
 「普段聴いているのは年代問わずアイドルさんが一番多いですね。もともとアイドルに憧れたキッカケがモーニング娘。さんなのでハロプロは今でも好きだし、古き良きアイドルさんとなると、母が松田聖子さんや中森明菜さんが好きだったので、影響を受けて聴いたりもしてました。イベントとかでご一緒させていただく方々になると、Dorothy Little Happyさんとかアイドルネッサンスさんとか、髪も黒いままだし衣装も白!っていう清楚なスタイルの方々が好きですね」
――その好みも確かに“古き良き”感じですね。ところで「天使のテレパシー」の歌詞は、言わずとも伝わるテレパシーがモチーフになっていますけれど、テレパシーを実感した経験ってあります?
 「割とウチのヲタクはテレパシーを受信できるタイプで……あ、ファンのことをヲタクって呼ぶんです。やっぱりアイドルとして活動していると、全部は言えないじゃないですか。ちょっと落ち込んでるときとか、仕事が上手く進んでないときでも、そういう事情は言わずに楽しそうに振る舞っているのがアイドルだと、私は思っているんですね。80年代のアイドルなんて、それこそトイレも行かないレベルでイメージを守ってましたし、もちろんSNSとかも無い時代で。歌って踊ってるところしか見られなくて、プライベートなところとか日々思っていることが全然わからない状態でも好きになって応援する……っていう構図を、なるべく現代に持ってきたいんです。で、ウチのヲタクは、その文脈をちゃんと一緒に共有してくれるんですよね」
――どんな情報も得られて当たり前の時代で、知らないからこそ想像して楽しむことができるファンがいるのは嬉しいですね。
 「なのでマイナスな面とか心配をかけるようなことは隠しておきたいんですが、結構バレるんですよ! おまけにバレてることは言わずに、全部一段落したときに“由芙ちゃん、あのとき大変そうだったね。でも、今は楽しそうで良かった”みたいに言ってくれるんです。私の“見せたくない”っていう想いも、ちゃんとわかってくれていて、余計なことは言わずに見守ってくれるから、すごく有り難いんですよね」
――じゃあ、歌っていても感情移入できたのでは?
 「ただ、曲も歌詞もあまりに可愛いので、それを“なり切ってやります!”だと気持ちが追いつかないんですよ。私は“普段から100%アイドルモードです!”っていうタイプではないので、なり切るというよりは“演じている”っていう挑戦の気持ちでやりました。そうやって毎回変わる私を、ヲタクたちも“今回のゆっふぃーはこういう感じなんですね”って楽しんでくれるから、いろんなことに挑戦しやすくて。今回みたいにカップリング曲で急に演歌に振り切ることもできるんです」
――いや、カップリングの「終点、ワ・タ・シ。」にはビックリしましたよ。
 「せっかくテイチクさんに移籍したからには、“ザ・テイチク”な演歌をやってみたかったんです! ただ、テイチクさんには大御所の方が大勢いらっしゃって、そういう方々の真似をしてもとても足元にも及ばないし。私がやるということに意味が無いとダメだなぁ……って悩んでいたところに、現代のアイドルを主人公にした町あかりさんの歌詞を頂いて、“あ、もう大丈夫!”ってなれたんです。ま、“終点がワタシ”っていうのはおこがましいですけど、ヲタクに対して“あの人どうしてるかな”とか“最近来ないな”っていうことは普通に思いますし、そういう人たちに向けての想いを恨みがましさではなく、楽しくパロディ的な感じで表現できたのはすごく良かったです。この曲を出すことで、最近現場に来てなくて気まずかったヲタクたちも来やすくなるだろうし、初めましての人も“面白そうな現場だぞ”って感じてくれるんじゃないかな」
――対して、もう一つのカップリング曲「みどりの黒髪」は割と現代風のアイドルソングで、歌詞に書かれていることも一番等身大なのではないかと感じました。
 「あ、それは思います。〈天使のテレパシー〉と〈終点、ワ・タ・シ。〉が外から見た寺嶋由芙像を書いているとしたら、この曲は私の言いたいことを書いてもらっている感じで、すごく有り難かったですね。“白いワンピース”とか、私が好きなものも盛り込まれていて、それって別にアイドルだから推しているわけじゃなく、たまたま自分が好きなものが“ザ・アイドル”なものだっただけなんですよ。なので別に無理してるわけじゃない、これが自然体なんだ……っていうことを伝えてくれているのが嬉しいなぁと。そもそもタイトルの〈みどりの黒髪〉自体が、実は古き良き言い回しなんですよね。それも私のキャッチフレーズだとか、あとは私が一応国語の教員免許を持っていることを踏まえて付けてくださったんだと思うんです。そんな“古き良き”路線が私も楽しかったので、今年は“古き良き時代から来ました”っていうキャッチフレーズらしいイメージを固めていく一年にしていきたいですね」
――前作のアルバム『わたしになる』を聴いても、いわゆる今時のコールをガンガン入れる曲より、しっかりと聴かせる曲がメインになっていますもんね。
 「それがライヴをやっていても、ウチのヲタクは“エル・オー・ブイ・イー、ラブリーゆっふぃー!”とかって入れてくれるんですよ! コールも古き良い感じで、それをお互いにわかって楽しんでる感じが面白いですよね」
――あとは紙テープを投げれば完璧ですよ(笑)。ちなみに、そんな素敵なファンのことを何故“ヲタク”と呼ぶんでしょう?
 「なんか“ファンの皆さん”って言うと、ちょっと距離を感じるんですよね。私がモーニング娘。のファンだった当時は小学生で、そんなに近い距離で応援をしたり、彼女たちの情報を全部把握していたわけでもなかった。でも、今、私を応援してくれてる人たちは現場にも来てくれるし、いろんな活動を全部追ってくれているし、小学生の私がなれなかった“強い”ファンなので、そのコアな感じにはもっと何か凄い称号を与えたくて。だからネガティヴな意味合いは一切無く、愛と尊敬を込めての“ヲタク”呼びなんです!」
――大きな視点で見れば“ヲタク=何かに一生懸命な人”ですもんね。ところで寺嶋さんの活動といえばアイドルだけでなく、“ゆるキャラ”関連のお仕事も多くて。「“ゆるドル”になるべく活動中」とのことですが、ゆるキャラの魅力とはズバリ何ですか?
 「一生懸命なところですね! アイドルも一生懸命だから応援したくなるわけで、そこってゆるキャラも同じなんですよ。地元や企業のために本当に頑張ってる、その健気な感じが推せるんです」
――……なるほど! 納得です。
 「それにアイドルの場合、たいていは周りの方々が曲を作ってくださるので、自分の主張を歌にして届けます!っていうのとは、ちょっと違うじゃないですか。で、ゆるキャラも自分が人気者になるというよりは、その土地の良いものを伝えることが目的で、一歩自分が下がったところにいるっていうのもアイドルとの共通点ですね。ホント、アイドルヲタクとゆるキャラヲタクって絶対リンクするところがあるから、まずはソコを繋げたいというか。どっちも熱量が凄いから、アイドルヲタクはすぐにゆるキャラヲタクになれるし、ゆるキャラヲタクはすぐにアイドルヲタクになれる。つまり、どっちも楽しめるよ!っていうことを伝える人になりたいんです!」
――頑張っている人、自分が“この子”と選んだものを応援したいっていう気持ちは、ゆるキャラヲタクもアイドルヲタクも完全に同じですもんね。
 「しかも“見えない部分”を想像して楽しむという意味では、ゆるキャラこそ古き良きアイドルなんですよ。だって、ゆるキャラって基本的に喋らないし、ステージとかイベントの場でしか見られないっていう状況の中で、彼らのバックグラウンドを如何に想像して楽しめるか?っていうのは、すごく大事なポイントで。もちろんSNSを使った自己プロデュースがすごく上手い子もいるし、例えば“しんじょう君”とかは自分らしさを突き詰めて、そのプロデュースを無理なく楽しんでる感じがすごく理想的。だから私もやりたいアイドル像をポンポン出していった先に、しんじょう君みたいな確立した地位を築けたらいいなぁと」
――ちなみに、寺嶋さんが一番好きな子っていうのを聞いてもいいものでしょうか?
 「うーん……一番好きというか、ゆるキャラを推すキッカケになったのは“チーバくん”ですね。私が住んでる最寄り駅でも千葉国体のPR活動をしていて、“キャラクターが私達の生活空間に来てくれた!”っていうのがすごく嬉しかったんです。そこからチーバくんの追っかけをするうちに成田の“うなりくん”にハマッて、ソロデビューするときにはMVにも出てもらって。成田山の周りにはウナギ屋さんが多いということでウナギをベースに、成田空港の飛行機がくっついてるキャラなんですけど、自分も半分ウナギなのにウナギ屋さんのPRをしているっていう矛盾がたまらない!(笑) あと、憧れてるのが深谷の“ふっかちゃん”ですね。何時如何なる時も可愛くて、どんなイベントでも一番可愛いことを自覚していて自信に満ち溢れている、あの感じがすごく好き。もう、本当に王道のアイドルなんですよね。だから〈ゆるキャラグランプリ〉で優勝を逃したときは本当に悲しくて、私、司会だったくせに順位を読み上げながら泣くっていう(笑)。そんな思い出もあります」
――ゆるキャラなんて人間でもないのに、どうしてそこまで熱を上げられるの?っていう意見もあるかもしれないけれど、そういうことじゃないですよね。
 「そういうことじゃないんですよ! 彼らが与えてくれたものから何を想像できるか? 如何にこちら側がイマジネーション働かして楽しむか?っていうところが重要で、例えばチーバくんって元は国体のマスコットキャラクターだったから、全部の競技をチーバくんがやってるイラストがあるんですね。そのプールに飛び込むチーバくんの絵を見るだけで、私、ずっと幸せですもん! 国体に賭けてる一生懸命さがすごくツボだし、千葉県の形だったはずが飛び込んで形が崩れているのを見て、すごく幸せな気持ちになれる。そうやって楽しむための要素をいっぱい投げてくれるのが、ゆるキャラなんですよ。伝わっているかはわからないけど、コッチ側の好きな気持ちをぶつけさせてもらえるだけで嬉しくて、たぶん、アイドルも同じなんです。つき合ったり結婚したりっていうことが現実的には無理だとわかっていても、“好きだ!”という気持ちをぶつける対象があるだけで、人生はとても豊かになる」
――現実的じゃないからこそ想像力を働かせる余地も無限なわけですもんね。情報化社会で想像力を鍛える場がどんどん失われている今、想像する喜びを味わえるアイドルとゆるキャラの良さは絶対に広めるべきです。
 「だからこその“ゆるドル”活動なんですよ。一昨年にはゆるキャラ10体とのコラボユニット“ゆるっふぃ〜ず”でのCDも出して、そのメンバーにはライヴにも出てもらったんです。“ちょうせい豆乳くん”と“有明ガタゴロウ”は喋れるのでガヤ担当、“ペッカリー”は歌えるのでコーラス、“みっけちゃん”は踊れるからダンスで参加と役割を割り振って、ちなみに“オカザえもん”はイケメンだ!っていうのが我々の共通認識。ちょっとシブい感じの動きとかが好きなんです(笑)。こういう普通の人からしたら“何言ってるんだ?”っていうようなことも、だんだん私のヲタクには通じるようになってきて。今や深谷のマラソンイベントにヲタク達がふっかちゃんのコスプレで参加していたり、逆にゆるキャラファンの方が親子連れでぬいぐるみ持って私のライヴを観に来てくださったり、すごく良い交流ができているんです。こうやって仲間を増やしていくことも、ゆるドル活動なんですよね」
――アイドル活動とゆるキャラ関連のお仕事、今はどっちが多いんですか?
 「もう、ゴッチャですね。アイドルライヴにゆるキャラさんが来てくれることもあるし、ゆるキャライベントでアイドルとしてライヴをすることもあるし。ツアーを回るときに各地でゆるキャラさんをゲストに呼ばれるアーティストさんも増えてきて、日本中でいろんなコラボが生まれてる今は、かなり良い時代だな!と思っております」
――そういえば3月26日に品川のクラブeXで行われるリリース記念ライヴにも、ゆるキャラが参加するそうですね。
 「はい。今回の〈天使のテレパシー〉がピンクの衣装で可愛らしい雰囲気なので、ピンクのゆるキャラさんをいっぱい呼びます! 大丸松坂屋の“さくらパンダ”ちゃんは衣装も似てるんですよ。用賀の“よっきー”に新潟の“もちうさぎ”ちゃん、伊勢原の“クルリン”に渋谷の“くもっくる”、大崎の“ノン子”ちゃんを迎えて華やかなステージにしつつ、あとはテイチクの“こぶしまる”も。クラブeXで1週間続く事務所イベントの最終日で、私がナレーションやMCをやらせていただいているBS朝日の『japanぐる〜ヴ』とのコラボウィークでもありますから、ラストをしっかりと盛り上げて終わりたいですね」
取材・文 / 清水素子(2017年3月)
DEARSTAGE WEEK supported by japan ぐる〜ヴ(BS朝日)
寺嶋由芙「天使のテレパシー」発売記念

ピピピっのレッツぐる〜ヴ
dearstage.co.jp/dsweek/
2017年3月26日(日)
東京 品川プリンスホテル クラブeX
開場 18:30 / 開演 19:00

指定席券 4,860円(税込)
※入場時、別途1ドリンク代 500円必要
※年齢制限: 未就学児入場不可
※〈ピピピっのレッツぐる〜ヴ〉のみのご観覧頂けます。


3月26日通し券 / 自由席券 5,940円(税込)
※入場時、別途1ドリンク代 500円必要
※年齢制限: 未就学児入場不可
※指定席券よりも後方での自由席での観覧となります。
※同日開催〈みきちゅの学芸会〜親も観にくる晴れ舞台〜〉もこのチケットでお楽しみ頂けます。

yufuterashima.com/topics/2017-03-26-live/


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