18年ぶりの来日公演でオペラ・ファンを魅了した英国ロイヤル・オペラ。全公演の指揮を務めた音楽監督の
アントニオ・パッパーノ(Antonio Pappano)と、『椿姫』のジョルジュ・ジェルモン役で出演したサイモン・キーンリーサイド(Simon Keenlyside)が、9月20日にタワーレコード渋谷店でトーク&サイン会を行ないました。
パッパーノは今世界でもっとも注目される指揮者のひとり、キーンリーサイドは甘いマスクと抜群の演技力、歌唱力で“英国ロイヤル・オペラのアイドル”ともいうべき存在。イギリスでもめったにその素顔を見ることはできないビッグな二人が、インストア・イベントを行なうのは、本当に貴重な機会でした!
会場には早くからオペラ・ファンがつめかけ、大盛況。やはり女性が多いようです。トーク・イベントでは司会者から二人にインタビューが行なわれました。
パッパーノは『マノン』について、「この作品にはさまざまな要素が含まれています。オペレッタであり、グランド・オペラであり、オペラ・コミックであり、メロドラマでもある。それに、バロック音楽へのオマージュ的な部分もある。単なるフランスの綺麗なオペラではなく、雰囲気が変わっていくのです。プレリュードの後はとても暗い音楽。クラリネットのソロはマノンのパワーを示します。その時マノンは貧乏なのですが、あとで変わりますね。オッフェンバックのオペラのようでもあります。そうやってマノンが変わっていくにつれて、聴衆もギアチェンジしなくてはいけないんですよ」と解説。
一方のキーンリーサイドはインストア・イベントの前に店内でCDを買い込んでいたようで、「気に入ったものはありましたか?」との問いに「あったとも!」と満面の笑み。
まだ若いキーンリーサイドが、老人役のジョルジュ・ジェルモンを演じたことについては、「私はジェルモンが老人の役であるとは考えていません。これは若い健康な人が歌うベル・カントとしてアプローチしていますし、このミックスを楽しんでいます。この美しい音楽をリスペクトして歌っています」とのこと。
ユーモアたっぷりの知的なトークに、会場からは終始笑いが起こっていました。
二人はこのイベントの後、すぐに上野の東京文化会館に向かい、『マノン』の本番に臨みました。ビッグ・スターが降臨したつかの間の白昼夢のような時間でした。