e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活 - [こちらハイレゾ商會]第46回 高音質な空気感で、さらに生々しくなった『パープル・レイン』
掲載日:2017年07月11日
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こちらハイレゾ商會
第46回 高音質な空気感で、さらに生々しくなった『パープル・レイン』
絵と文 / 牧野良幸
 プリンスの『Purple Rain Deluxe(Expanded Edition)』のハイレゾが出た。2015年にプリンスみずからが監修にかかわったリマスター音源のハイレゾというところが嬉しい。さらにシングル・ヴァージョンやレア・トラックなどのハイレゾも収録。まさに『パープル・レイン』発売時の興奮を再現してくれそうな内容だ。
 このなかでハイレゾで聴くのが楽しみなのは、もちろんアルバムの『パープル・レイン』である。昔はCDでよく聴いたものだけど、どんな音になっているだろうか。
 さっそく聴いてみたところ、ハイレゾの音はすごく繊細なのでビックリした。とくに当時はソリッドに思えたシンセサイザーがふくよかな響きだ。減衰する部分も綺麗。
 いちばんビックリしたのは空気感である。音場に奥行きがあるのだ。あたかも小さなライヴ会場で聴いているような“場”を感じるのである。ヘッドホンでガシガシ聴いていた80年代にはおよそ想像もつかなかった『パープル・レイン』だ。
 誤解を恐れず書けば、クラシックのハイレゾで味わえるような、いかにもオーディオ・ファイルが好きそうな音場とも言える。“殿下”がみずから監修にかかわったハイレゾなのだから、CD以上に我々の神経を逆撫でする音になっているかと思っていたので、この高音質化は意外だった。
 これは昨年話題になったマイケル・ジャクソンの『オフ・ザ・ウォール』のハイレゾとは違うタイプに思う。『オフ・ザ・ウォール』は個々の音が圧倒的なまでに高音質になって成り立っていたのに対して、今回の『パープル・レイン』のハイレゾは、まず空間(空気感)自体が高音質。そこに綺麗な楽器音が鳴り響くというわけだ。
 こういう高音質がロックにふさわしいか疑問を持つ方もいるだろう。ましてやプリンスだ。ハイファイによって、プリンスの音楽から毒気を抜かれては元も子もない。
 しかしそれは杞憂である。クラシックのような奥行き感があっても、ボス! ボス! というビートは重低音だし、シンセサイザーや細かな音(楽器は見当もつかない)がふくよかになったことで、よりプリンスのアヴァンギャルドな音を鑑賞できるようになった気がする(だって本人が監修したんだもんね)。
 “鑑賞”という言葉を使ったのは、プリンスの創り出すサウンドは、僕には前衛の抽象絵画のような気がするからである。音が絵の具のようにキャンバスに塗りたくられているイメージだ。絵画を観賞するなら高解像度のほうがいいに決まっている。生々しさがより伝わるからだ。『パープル・レイン』も高解像度になったことにより、“80年代ロック”からさらにはみ出した音楽になったと思う。
 それは本編のあとに入っているレア音源を聴くと、より顕著である。プリンスが自分の持つ実験性を、いかにポップ・ミュージックと両立させようとしていたか、その“せめぎ合い”が生々しい(本人は易々と作っていたかもしれないが)。
 僕みたいなオーディオ好きが好む高音質で、『パープル・レイン』のようなロックの最先端のアルバムをCDより生々しく聴けるなんて、ちょっと信じられない喜びだ。ほかのアルバムもハイレゾで聴いてみたい、という思いは強い。
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プリンス
『Purple Rain Deluxe(Expanded Edition)』


(2017年)

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