2025年アカデミー長編ドキュメンタリー部門にノミネートされ、世界30以上の映画祭で最優秀賞や観客賞を受賞。陰謀渦巻く歴史の闇をジャズが直撃する壮絶なドキュメンタリー映画『叛逆のサウンドトラック』が、8月7日(金)よりBunkamuraル・シネマ、シネスイッチ銀座、UPLINK吉祥寺他にて全国順次公開。これに先駆け、魂のリズムと歌声とが全編を貫く予告編が公開されました。
1961年2月のある朝、歌手の
アビー・リンカーンとドラマーの
マックス・ローチは、新たに独立したコンゴの首相パトリス・ルムンバの殺害に抗議するため、国連安全保障理事会に突入。約60人の抗議者たちが、不意を衝かれた警備員たちにパンチを浴びせ、ピンヒールを叩きつけ、ショックを受けた外交官たちは見守るだけ……。この瞬間、世界は“脱植民地化”という名の地殻変動に飲み込まれていき、希望と混乱が入り混じる、新しい時代の幕開けとなりました。
本作は、アーカイブ映像だけで作り上げた壮大な映像詩。全編実録映像と音楽、インサートされるデザイン化されたテキストで構成されます。
ルイ・アームストロング、
マルコムX、
ディジー・ガレスピー、フルシチョフソ連第一書記、
ジョン・コルトレーン、ハマーショルド国連事務総長、
フィデル・カストロ、
アート・ブレイキー、アイゼンハワー米国大統領、
セロニアス・モンク、
オーネット・コールマン、
ニーナ・シモン、ネールにナセルにスカルノも。伝説的な音楽家、思想家、政治家、軍人、スパイたちが入り乱れる歴史の闇を、ダイナミックな編集とリズム感で描写。一瞬も目が離せない映像が展開します。
本作の中心的に描かれるのが、1960年、ベルギー領コンゴの独立直後から始まったコンゴ動乱。クーデターが起き、首相ルムンバ惨殺されますが、その死後も1965年まで続いたこの内乱に、ベルギー政府と米国が積極的に関与したことが、映画では余すことなく証言によって語られます。
また、ポスターのど真ん中に座る女性、「黒いパショナリア(女性活動家)」の異名をとるアンドレ・ブルアンにも注目です。ルムンバのスピーチ・ライターを担い、ルムンバ失脚を狙うベルギーの裏合意を暴く極秘文書を欧州で発表するなど、数々の命の危機を乗り越えながら活動した女性革命家。歴史の表舞台には出にくい、アフリカ女性たちの解放に力を入れた革命家ブルアンが描かれるのも、本映画の意義深いところです。
映画は、ルムンバ、マルコムX、ンクルマ(ガーナ初代首相)、カストロなど、高潔な大義を掲げた政治的指導者、また彼らとともに闘ったアンドレ・ブルアンの言葉を、数十年以上の歳月を経て私たちのもとへと届けます。
今回公開された予告編は、冒頭、アビー・リンカーンの事件の前触れを思わせる歌声と共に「ルムンバがコンゴで殺された」というタイトルが出され、マックス・ローチの「語り」のようなドラムで幕開け。ルイ・アームストロングが、独特の深みある声で「俺の罪は肌の色だけ」と歌い、「冷戦下、政治の茶番に利用されたミュージシャンたち」というタイトルの後、ディジー・ガレスピーが刻む軽快なリズムに呼応して、抗議の机をたたくフルシチョフ、ハマーショルド、アイゼンハワーという、茶番劇の主役たちも登場。ガレスビーの「リズムがすべてだ」というミュージシャンの純粋さと矜持を感じさせるコメントの後には、本作の主人公、コンゴ共和国初代首相ルムンバの「共産主義者ではない、アフリカ人だ」という言葉。ルコムXの「アメリカ全体が狂っているんだ」のコメントの後には、像が吊り上げられている象徴的なカットも。「1960年6月30日コンゴは独立します」というルムンバのコメントに続くアート・ブレイキーのパワフルなドラムの音色、ルムンバが後ろ手で髪を掴まれている映像に重なるジョン・コルトレーンの激しいサックスなど、引きこまれる映像がテンポよく展開されていきます。
国連になだれ込んだミュージシャン達の姿に重なり、仲間に何かを伝えるような、痛切な深い声で歌う涙目のアビー・リンカーンに胸打たれるでしょう。自由や尊厳のために闘った、多くのミュージシャンや革命家の物語を後世に伝えおくような、そんな想いを感じさせる予告編になっています。
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