イタリアの世界的テノール歌手、
サルヴァトーレ・リチートラ(Salvatore Licitra)が9月5日朝、シチリア島カターニャの病院で死去しました。享年43。8月27日にシチリアのラグーザ近郊でスクーターを運転中に事故をに遭い、昏睡状態が続いていましたが、9月5日に脳死判定により死亡が宣告、遺族は臓器提供に同意したとのことです。
リチートラは9月中旬に開催されるボローニャ歌劇場日本公演2011の『エルナーニ』に出演する予定でした。来日を目前に控えた訃報に、日本のファンの間にも大きな悲しみが広がっています。
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パヴァロッティの再来”と称され、イタリア系テノールとして現代最高の人気を誇ったリチートラは、1968年、スイスのベルンでシチリア系イタリア人の両親のもとに生まれました。
イタリアのパルマで学び、1998年パルマの王立歌劇場で『仮面舞踏会』のリッカルドを歌ってデビュー。その年の夏には、アレーナ・ディ・ヴェローナでも同役を歌い、大絶賛を浴びました。やがて指揮者
ムーティに認められ、ミラノ・スカラ座を舞台に数々の成功を重ねてゆきます。そしてヴェルディ没後100年の国家的行事ともいえる2000 / 2001年のスカラ座シーズン・オープニング、2000年12月にムーティ指揮のもと『イル・トロヴァトーレ』のマンリーコを、
バルバラ・フリットリと
ディミトラ・テオドッシュウのダブル・キャストを相手役に歌い、その圧倒的な成功は瞬く間に全世界に知れ渡りました。
ウィーン国立歌劇場にも2001年に『仮面舞踏会』でデビュー、ほかにもパリ・オペラ座、バイエルン国立歌劇場、チューリッヒ歌劇場、ロイヤル・オペラなど、瞬く間に主要歌劇場を席捲しました。
ニューヨークのメトロポリタン歌劇場には、正式デビューの2年前、2002年に、突然不調降板となったパヴァロッティの代役として急遽呼ばれ、『トスカ』のカヴァラドッシでデビュー、これがセンセーショナルな大成功を収め、世界中に報道されました。
豊麗で明るく暖かみのある声、情熱的な歌唱、ドラマティックな表現力で聴くものすべてを魅了した名テノール。絶頂期での他界は本当に残念でなりません。心よりご冥福をお祈りいたします。