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大西順子、映画『ラプソディ・ラプソディ』でキャリア初となる映画全編の楽曲書きおろし 創作の舞台裏をひもとく

大西順子   2026/05/08 11:06掲載
大西順子、映画『ラプソディ・ラプソディ』でキャリア初となる映画全編の楽曲書きおろし 創作の舞台裏をひもとく
 主演に高橋一生を迎え、利重剛が『さよならドビュッシー』以来13年ぶりにメガフォンをとった長編映画、『ラプソディ・ラプソディ』が5月1日より、テアトル新宿、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開されています。

 本作の音楽を手がけたのは、日本を代表するジャズ・ピアニストの大西順子。映画音楽を全編手掛けるのは本作が初だという大西が、本作を手がけるにいたった経緯や音楽の創作過程を利重剛監督に聞ききました。あわせて、大西本人からのコメントも到着しています。

[利重剛 コメント]
「ラプソディ・イン・ブルー」から始まった構想――大西順子との出会い
大西順子の起用は、プロデューサー・中村氏が手がけた前作『ヘンリ・ミトワ 禅と骨』にまで遡る。同作で「ヘンリのテーマ」を担当したことがきっかけとなり、本作への参加へとつながった。
実は本作の仮タイトルは『ラプソディ・イン・ブルー』だった。小澤征爾が指揮するサイトウ・キネン・オーケストラと大西が同曲を演奏したエピソードもあり、利重監督にとってもぜひ実現したいコラボレーションだった。
「映画好きの素人として、こんな音楽があったらいいと思うものを作ってみたい」と参加を決めた。『恋人たちの予感』のようなニューヨークのラブコメディを好む大西にとって、日本映画ではあまり見られない軽やかなジャズ表現への挑戦でもあった。


映像を見ながら生まれた音楽――“イメージのすり合わせ”から
大西は脚本からではなく、映像を見ながら作曲するスタイルを選び、本編完成後に音楽制作がスタートした。細かな理論的オーダーではなく、既存の楽曲を参照しながら「こんなイメージ」という感覚をすり合わせていく方法がとられた。
その中で挙がったのは、セロニアス・モンク、バディ・デフランコ、アーティ・ショウ、ベニー・グッドマンといったジャズの名手たち。クラリネットやビブラフォンといった具体的な音色の提案も交えながら、少しずつ音楽の輪郭が立ち上がっていった。
モダンジャズを得意とする大西だが、「今回はそれではない」と自ら方向転換を提案。「ディキシーランド・ジャズのような、メロディとリズムがしっかりした少しゆったりした音楽が合うのでは」という発想から、本作の印象的なメインテーマが生まれた。


ほぼ一発録り――“生”だからこそ生まれる躍動感
本作の音楽はすべて生演奏で収録されている。しかも、集まったミュージシャンの中にはその場で初対面というメンバーもいたという。
それにもかかわらず、収録は驚くほどスムーズに進行。「せーの」で始まった演奏が、そのまま映像の尺にぴたりと合ってしまう場面も少なくなかった。
通常は一度ごとに確認を挟む収録現場でも、大西は「いいね、次いこう」と軽やかに進めていくスタイル。そうして生まれた楽曲は、どのシーンにも自然に寄り添うものばかりで、「この曲を別の場面でも使いたい」と思うほど完成度が高かったと監督は振り返る。


ユーモアあふれるエンディング――「結婚行進曲」のアレンジ
エンディングでは、メンデルスゾーンの「結婚行進曲」を大胆にジャズアレンジ。これも大西自身のアイデアによるものだ。誰もがピンとくるフレーズだが、最初のデモを聴いた利重監督は思わず吹き出したという。収録時の最初のテイクは「あまりにも派手すぎる」ため「少し抑え気味で」と調整されたテイクが採用された。

物語とともに流れる一曲――シーンをつなぐ音楽の力
後半の見どころのひとつが、繁子と幹夫の会話から花屋、そして走り出す場面へと続く一連の流れ。このシーンは、一曲の中でシームレスに展開されている。
場面ごとに表情を変えながらも、ひとつの楽曲として成立している構造は本作ならでは。随所に即興演奏も織り込まれており、その境界を探る楽しみもある。


映画館で味わう音の広がり――5.1chで体感するジャズ
「フィルムで作っていた時のような手作り感をこの作品には持たせたいと、撮影の時から思っていた」と監督はしみじみと語る。「大西さんが、音楽も手作り感をもって作ってくださった。随所から息遣いを感じられるような」。
本作は5.1chで音響設計されており、ジャズならではの空間的な広がりを存分に楽しむことができる。
打ち込み音源も増えている昨今において、すべて生バンドで制作された本作の音楽は非常に贅沢なもの。大西順子による豊かなサウンドを、ぜひ映画館で体感してほしい。


[大西順子 コメント]
ジャズが自然に溶け込む横浜を舞台に、心優しい男女の奇妙な出会いが、コミカルに、そして軽やかに描かれる。どこか不器用で、だからこそ愛おしい心あたたまる物語。その世界に音で寄り添えたことを、とても幸せに感じています。

©2026 利重 剛

『ラプソディ・ラプソディ』
2026年5月1日(金)よりテアトル新宿、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
www.bitters.co.jp/rhapsody
配給: ビターズ・エンド
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