1984年の結成以来、アメリカン・オルタナティヴ・ロックの中核となるバンドとして現在も活動する
ダイナソーJr.。彼らの歴史を、オリジナル・メンバーである
J・マスキス(g, vo)、
ルー・バーロウ(b)、
マーフ(ds)の3人の関係性にフォーカスしながら貴重な過去のフッテージを交えて描かれる、バンド自身が製作に関わった公式のドキュメンタリー映画『ダイナソーJr./フリークシーン』が、東京・シネマート新宿、大阪・シネマート心斎橋ほかにて2022年3月25日(金)に公開されます。
J・マスキスのギター音があまりに巨大だったため、リズム隊の二人は自らの音が聴こえるべくボリュームを上げるしかなかったというダイナソーJr.の凄まじい轟音は、
ニルヴァーナや
サウンドガーデン、
パール・ジャムなどのグランジ・ムーブメントが勃発するより前に
ソニック・ユースに見出されました。2ndアルバムはUSハードコア界の総統ともいうべきグレッグ・ギン(
ブラック・フラッグ)運営のSSTレコードからリリース。巷に溢れたハードコア・サウンドとは一線を画す、暗く、ヘヴィでギターまみれな音の洪水でありながらもポップでキャッチーさを備え、そして
ニール・ヤングや
ニック・ケイヴ的とも云われる無気力極まりない唯一無二のヴォーカルが欧米の地下世界で絶大な支持を得ました。しかし、ツアー中のある出来事をきっかけに三人の関係性は崩壊。ルーとマーフは次々と脱退し、新メンバーを迎えて活動を継続したダイナソーJr.はJ・マスキスのソロ色を強めていきます。ダイナソーJr.の音楽は、売れようとするものでもなく、他人に聴いてもらおうとするものでもなく、ルー・バーロウ曰く「どのぐらい客が集まるか、どれだけの人が聴いてくれるのかと考えたことがない。俺たちは客を襲うためにライヴをやっていた」。人気を獲得するためにギラギラするロック・スター然としたバンドとは対極、音楽以外にはいっさい関心がない三人のコミュニケーションは唯一、音楽を通じて図られるのです。
そんな音楽だけで結ばれていたオリジナル・メンバー3人それぞれの正直な証言を引き出し、2005年以降再集結した現在までを、華美な演出を許さない愛情溢れる視点でまとめたのは、J・マスキスとは義理の親族にあたるフィリップ・ロッケンハイム。これまで100本以上のミュージック・ビデオを手掛け、
ジム・ジャームッシュ監督作『
ギミー・デンジャー』(2016)にも撮影素材が使われるなど長年音楽映像の世界で活躍する独ベルリン在住の監督です。またバンドの歴史を補完する証言は、
キム・ゴードン(ソニック・ユース)、
ヘンリー・ロリンズ(ブラック・フラッグ)、
ボブ・モールド(
ハスカー・ドゥ)、
フランク・ブラック(
ピクシーズ)、
サーストン・ムーア(ソニック・ユース)、
ケヴィン・シールズ(
マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)などダイナソーJr.に近しいミュージシャンたち。80年代末から90年代にかけてオルタナティヴ・ロックという巨大な渦の中心にいたダイナソーJr.の約30年にわたる心情、メンバーの関係性、そして音楽をタイトに、丁寧に、誠実に描いた本作は、同時に人間の成長と友情の在り方も映し出すものとなっています。
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