2019年の『Beware of the Dogs』以来となるアルバム『Flood』制作中に長く暮らしたオーストラリア・ベリンゲンの熱帯雨林で、ドネリーはよくバードウォッチングをしました。「自分に対する誰かの反応という感覚をなくすことができた。自分がミュージシャンであることを忘れ、ただ存在するちっぽけな存在であることを体感できた」。そこでみずからの新たな創造的な井戸を掘り起こしたドネリーは、ベリンゲンを出てオーストラリア国内を移動しながら、これまでのエレキ・ギターではなくピアノを使い、43曲を書いたと言います。「見知らぬ土地で曲を作ることが多かった。フリーマントル、ウィリアムズ、ギルディントン、マーガレットリバー、メルボルンと回ったが、どこにいるかわからないことがよくあった。国境が閉鎖され、家族と連絡が取れなくなることで、自分の人生の大切な部分にフォーカスしてしまうことは否定できない」。