2021年のモントリオール国際音楽コンクールでファイナリストになるなど、さまざまな国際コンクールで優秀な成績を残してきたピアニスト、
田所光之マルセルが、6月6日にデビュー・アルバム『
ヘンゼルト:エチュード全集』を発売。これを記念したリサイタル〈田所光之マルセル ピアノ・リサイタル 親愛なるエチュードたち〉を、6月28日(水)に東京・渋谷 Hakuju Hallで開催します。
アルバム『ヘンゼルト:エチュード全集』は、ドイツに生まれ、1838年からはロシアで活躍して「ロシア・ピアノ学派」の礎を築いたと言われる
アドルフ・フォン・ヘンゼルトのエチュード全集。『12の演奏会用性格的エチュード』『12のサロン用エチュード』「練習曲 イ短調」「ゴンドラ・練習曲」を収録しています。
ヘンゼルトは一曲ずつ異なる調性で書かれた練習曲を残しており、その中で技巧の伝授に加えて芸術作品としての価値を追求しています。各曲にフランス語で詩的なタイトルが付された『12の演奏会用性格的エチュード』は、激しい嵐のような情熱を描く第1番、親密な情感が込められた第2番や第3番など、弾き手は内面的な情感を解釈して伝える力量が問われます。第6番の「もしも私が鳥だったら、お前の元へ飛んでゆくのに」はラフマニノフも愛奏した曲として有名。『12のサロン用エチュード』では、第1曲「エロイカ」はベートーヴェン風の力強い音楽、第3曲「魔女のダンス」は悪魔的な情景を想起させるなど、タイトルも曲の性格もより直接的となっていますが、いくつかの曲はタイトルが空白のまま残され、弾き手の想像力に委ねられています。1876年出版の「練習曲 イ短調」は、複雑に交錯するリズムと個性的な旋律が融合、1841年出版の「ゴンドラ・練習曲」は水の描写を巧みに表現した短いながらも印象的な作品です。
6月28日(水)に開催されるリサイタル〈田所光之マルセル ピアノ・リサイタル 親愛なるエチュードたち〉では、アルバムに収録されているヘンゼルトの「もしも私が鳥だったら」(『12の演奏会用性格的エチュード』第6番)や、
スカルラッティ、
J.S.バッハ、
ショパン、
ブラームス、
ラフマニノフ、
メシアンなど、バロックから現代まで、多くの作曲家によるエチュードを披露する予定です。公演に向け、田所は以下のコメントを発表しています。
また、7月11日(金)には東京・タワーレコード渋谷店でミニライブとサイン会からなるアルバム発売記念イベントを開催します。参加方法など、詳細はタワーレコード渋谷店のウェブサイトをご覧ください。
[エチュード、それは単なる練習曲ではない。]エチュードは単なる指の練習曲だと思われがちですが、さまざまな時代の作曲家たちによる演奏技巧、楽器、作曲技法、、、、あらゆる限界への挑戦ではないでしょうか。
作曲において新しいことに「挑戦する」、「試す」、「研究する」という意味でもある練習曲。僕にとってのデビュー盤となるアドルフ・フォン・ヘンゼルトのエチュード全26曲のCDをリリースするにあたり、「エチュード」がいかに音楽的にあふれた作品であるかをお伝えしたく、バロックから現代にいたるさまざまな作曲家から一曲ずつ、思い入れのある作品を集めました。
作曲家たちのまさに「革新的な」挑戦をどうぞお楽しみください。――田所光之マルセルPhoto by Shigeto Imura