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「今だからこそ新たな挑戦を」――ロマンティック歌謡歌手・竹島宏は25周年アルバムで何を目指したのか?

竹島宏   2026/11/06 13:45掲載
 2026年、デビュー25周年を迎えたロマンティック歌謡歌手の竹島宏。ここ数年、繊細で気品ある歌謡曲という独自の路線を貫いてきた竹島が、この10月にオリジナル・アルバム『Night in Bloom Hiroshi Takeshima 25th』をリリース。

 2020年以降、オリコン週間TOP10級のヒット曲を重ねてきた竹島ですが、本アルバムはそういったヒット曲を収録せず、全10曲すべて書き下ろしの新曲で挑んでいます。実際に聴いてみると、これまで以上に深みのある歌唱に進化していて、歌を届けたいという彼の想いに満ちていました。これはただならぬ覚悟があったのではと思い、インタビューをすることに。まずは、デビュー25周年を迎えた感想や、アルバム制作の経緯を尋ねてみました。

[インタビュー]
「この25年間は、短くはなかったけれど、長い感じでもなくて、気がついたら25年というのが正直な感覚です。それは、色々なパターンの曲にずっとチャレンジし続けているので、時の流れを実感する間もなかったのかもしれないですね。

2025年10月からロマンティック歌謡歌手と名乗ってから意識は変わったのだろうか?

「これまでも毎回違ったコンセプトでライブのセットリストを考えてきたのですが、今は“ロマンティック”なステージ空間を心がけるようになりました。例えば、僕は、真っ直ぐに言葉を届けるタイプなんですが、最近は、キザっぽさや柔らかさなど“ロマンティック”をどこかに忍ばせています」

確かに、“ロマンティック”という濁音のないまろやかな言葉と竹島の顔立ちや歌声は見事に合致していて、この1年間でさらに歌声や手振りも含め全身で、観客を心酔させようとしているのが見て取れる。

今年4月には、25周年を記念したシングル「純愛」がリリースされオリコン初登場11位(初動0.5万枚)となり、発売から半年間で累計1.6万枚と着実にセールスを伸ばしている。決して派手ではないが、穏やかなポップス調の作品で、確実にファンの心に浸透しているようだ。

「『純愛』は時間をかけてよりフィット感が出てきていて、ファンの皆さんも聴けば聴くほどいい曲だねって言ってくださるんですよ。最初はピンとこなかったけれど、どんどん好きになっています、という方も多いんですよね」

全10曲を新曲にこだわった記念アルバム

ここから25周年記念アルバム『Night in Bloom Hiroshi Takeshima 25th』について尋ねてみた。アルバムの制作は、昨年12月、竹島を含め作詞家の松井五郎、作曲家の幸耕平など制作スタッフ6人で蕎麦を食べながら決めたという。

「僕の中で、完全書き下ろしのアルバムを作りたいという気持ちがすごく強かったので、今回実現してとても嬉しいです!」

20周年記念アルバム『Stories』は、新曲のほか2017年の「月枕」以降のシングル5曲やそのカップリング曲をふんだんに入れて2枚組で仕上げていたが、今回は全曲書き下ろし。近年のアルバムは、J-POPにせよ演歌・歌謡曲にせよ、話題のシングル曲を多数収録して作品を訴求するパターンが多い中で、本作の作り方はまったく正反対だ。

「そういうアルバムだと僕から自発的に作ってくださいとはならないでしょうね。やはり、今まで作ったことがない斬新なものをお客様に聴いていただきたいという想いが強かったんです。それで、全曲書き下ろしのアルバムが出せたらと考えました。

でも、振り返ってみると、先生方も周りのスタッフも、一切反対はなかったんです。僕の音楽性がアルバムを作るタイプのアーティストという認識が定着していたから、みんな協力的に進めてくれたんでしょうね。あとは制作予算など現実的な問題をどうクリアしていくかだけでした」

本作のコンセプトは、“眠りを誘うナイトミュージック”ということだが、実際には軽快なポップスから壮大なバラードまで、これまでのシングル曲以上に果敢にチャレンジしているのも見事だ。

「当初は幸耕平先生が、“竹島の声は、ヒーリング効果があるので、眠る前にファンの皆さんに優しく甘い声で囁くようなアルバムがいい”とおっしゃって、テーマを眠りに決めました。とはいえ、先生方もどんどんエネルギッシュになって、眠りを誘うというよりも、濃密なアルバムに仕上がったんです。

でも、眠る前だからと言って、必ずしも静かな曲ばかりじゃなくてもいいのかなと。それは、やはり、日々大変なことがあって疲れた時、心の筋肉をほぐすためには柔らかな歌から激しい歌まであって丁度いいんじゃないかと考えたんです。その意味でもとても良いアルバムになった気がします!」

ちなみに、本作の10曲を含め、松井五郎が竹島宏に書き下ろした楽曲は74曲にのぼる(筆者調べ)。松井五郎の安全地帯や玉置浩二への書き下ろしは100曲を超えるものの、演歌・歌謡曲ジャンルにおいてこの数字はダントツの多さだ。

「でも、74曲中どれ一つとっても同じ歌はなくて凄いんです。僕自身、松井先生の存在は今の竹島宏に必要不可欠という想いが強くあります。ここ数年作曲して下さっている幸耕平先生がイメージする竹島宏の世界を汲み取って作詞されるところも松井先生の凄さです。歌詞に違和感があったことが一度もないんですから。制作の途中段階でメロディーの持つリズムと言葉のリズムが微妙にずれることがあってもすぐに対応してくださる。この絶対的な信頼関係は大きいですね」

さらに、本アルバムでは、編曲は2022年の「プラハの橋」から続いている坂本昌之が5曲を担当しつつ、歌謡曲のマエストロでもある萩田光雄が5曲を手がけているのも興味深い。ちなみに、竹島にとっては、2012年の「紫の月」以来の萩田光雄編曲作品となるが、その意図を尋ねてみた。

「当初からアルバムでも坂本昌之さんにお願いする方向で進めていたのですが、坂本さんのスケジュール的に難しい部分があり、手分けしてお願いしようとなった時に、昭和から幅広い音楽を作られてきた萩田光雄先生なら、坂本さんの作品と違和感なく並ぶのではと思いお願いしました」

(※坂本昌之のみ「さん」付けにしているのは、坂本昌之たっての希望であり、竹島自身は他の先生方同様にリスペクトしていると語っていたので、ここで申し添えておく。)

本アルバムのCDには、演奏ミュージシャンもブックレット内に記載されているが、坂本昌之、島村英二、松原秀樹、エルトン永田、土方隆行など、名だたる名プレイヤーが参加していることに驚かされる。竹島自身、実際にオケ録りの現場に何度も足を運んだことで、意識も強く変わったようだ。

「本当に素晴らしい演奏をされる方ばかりで、音楽が生まれていく過程をより実感し、その時間が僕にとって大きな経験にもなりました。

特に、坂本さんと萩田先生の作り方の違いを見ることが出来たのも勉強になりました。坂本さんは、ある程度の青写真が譜面にありつつも、途中のフレーズは信頼を置いているミュージシャンに委ねてアドリブでフレーズを作っていくスタイル。ミュージシャンの方が用意された幾つかのパターンの中から、どれにするかをみんなで選んでいくというバンドスタイルなんです。ミュージシャン次第で雰囲気がガラリと変わるのを体感しました。

一方、萩田先生の場合はほぼ全部譜面通りに演奏してもらって完成させていくスタイル。本来ならその読み解き方がミュージシャンによって変わるのだけど、おそらく萩田先生のイメージ通りに演奏される方たちにご指名がかかっていて、その信頼関係で音が出来上がってくる。例えるならば、花は先生に見えてるんだけど、演奏することによって花が開いてその香りが漂ってくるという感覚をすごく感じましたね。

具体的に、収録曲の『パルファンの坂道』では、サックスだけ別日に撮っていただいたんですが、その前から匂い立っていたものが、サックスが加わることでまた別の香りが立ってきて、こういう世界を萩田先生は作りたかったんだとあらためて感動しました。ミュージシャンの方の感受性の高さゆえでしょうね。

こうした素晴らしい演奏を今まで以上によく聴いて、体で感じてレコーディングに臨んだんです。そうすることで自然にこの歌の世界に迷わず入っていけました。この点でも、今回は本当に贅沢なアルバムを作っていただけたなと思います。だからこそ多くの音楽ファンの方たちに聴いていただきたいですし、頑張って届けていきたいと思っています!」

以心伝心で大切な人を想い起こした「ユーカリ」

それではここからは、竹島に全曲のエピソードや聴きどころを教えてもらおう。なお、すべての楽曲に花が登場するのも本作の大きな特長で、これは毎日 “花だより”と称して花と一緒に撮影した写真をXに投稿している竹島を想定したに違いない。ここでは登場する花とそのおもな花言葉も併せて表記しておくので、聴かれる際の参考にしていただければ幸いである。

まず、1曲目「le prelude(ル・プレリュード)」は、シングル「純愛」にも通じる安らぎのバラードだ(登場する花:桜/花言葉「優美な女性」「心の美しさ」)。これまで以上に穏やかな柔らかな歌声は、まさに眠りをいざなうのに相応しい。

「実は、この歌入れの際、メンタル的には一番辛かったんです。でも、いつもは、外の世界が見えないスタジオなのに、今回は窓ガラスがあるスタジオだったんですよ。あれ?カーテンがあるなと気づいて、スタジオの方にお願いして開けてみたら窓の向うにマンションが見えて。それで、人の気配を感じながら歌いたいと思って、カーテンを開けたまま『le prelude』と『告白』の2曲をレコーディングしました。すると、いつもなら一人で自分と闘いながら歌う孤独感が、この日は、窓の向うの方にも聴いてもらえるような気持ちになって、すっと、歌入れができたんですね。それでより、言葉が柔らかく聴こえるのかもしれません。たとえ肉体的に疲れていても、より柔らかく、よりナチュラルに声が響くような状況を作っています」

全体に柔らかさがある一方で、楽曲中の「時は必ず」「愛は必ず」という言葉に説得力があり、自然と心に浸透する。

「声の響きをナチュラルにしつつ、この丹田だけ重心を置いて、上半身はより軽やかに、流れるようにと心がけて歌いました。特にこの曲は1曲目だろうと想定していたので、それをより意識しましたね」

続く2曲目の「ユーカリ」(花言葉「再生」「思い出」「記憶」)は、空を想起させる壮大なバラードだ。筆者自身は、前川清の「花の時・愛の時」と同系統の大作だと感じた。本作は、急ピッチでレコーディングを進めたと本作の先行配信時に本人も語っていた。

「実は、今回のアルバムからポップアップイベント(東京・表参道、自身初)の開催中に急きょ1曲先行配信しようということになって、既にデモ音源が出来ている5曲の中から、ディレクターさんの薦めもあって『ユーカリ』を選びました。いつもならば、オケ撮りをした後に、声を馴染ませるよう練習期間を置いてから歌入れをするのですが、この日は本当にスケジュールがなくて、オケ撮りと同日に歌入れもしたんです。しかも、たった1回だけだったのに、奇跡的に上手くいきました。

『ユーカリ』は、曲の進行や歌詞の世界が分かりやすくポピュラーな歌の雰囲気があるかもしれませんね。実際、前川清先輩の『花の時・愛の時』は何度かステージでカバーさせてもらっています。本当に素晴らしい歌で、前川先輩に憧れて歌ってみるととても難しく、たくさんのテクニックを盛り込まれていらっしゃるんです。それを、サラっと歌ってらっしゃるのが前川先輩の素晴らしいところです」

そのカバーでの経験もあったからか、竹島宏の「ユーカリ」も緩急のある歌唱が印象的。特に、「いつも同じ夢だけ描いて/いつもそばにあなたがいること/いつも僕は忘れてないから」という言葉が強く響く。この辺りのエピソードを語ってもらった。

「当初、何も考えずに歌の練習をしていて、その後、実際に歌入れをしていてもなぜか亡くなった先代の社長のことが浮かんできて不思議だったんです。とはいえ、ファンの皆さんには、亡くなった方や一緒に生きていらっしゃる方などに対し、様々な想いがあると思うので、あまり感情的にならず、どこか客観的に、この歌の世界観を伝えるという使命感でレコーディングに臨みました。

でも後日、松井先生が、『ユーカリ』は先代の社長のことを想って作られたとお聞きして流石だなと思いました。だって何の説明がないのに、それを歌い手に分からせてしまうのですから。実は僕、松井先生とは社長が亡くなったことについて話していなかったんですよ。先生とは何度も仕事でお会いするのですが、きっと“社長の話をしたら、竹島君が泣いちゃって仕事ができなくなっちゃうかも…”と、気を遣って下さって、社長の話には一切触れられなかったんですね。そうしたら、歌の中で突然亡くなった社長が登場したので、この辺りが松井先生ならではの思いの伝え方なんだなと思いました。先生は、竹島の歌手人生において、辛いことや悔しいことがあった時に、これからの活動指針となるような言葉を、いつもかけて下さって本当に感謝しています」

3曲目の「あの夏は青いまま」(登場する花:ひまわり/花言葉:「あこがれ」「あなただけを見つめる」)は、1960年代の洋画や邦画のテーマソングのような穏やかな楽曲だ。

「幸先生の中では、きっと、海の匂いがして、なだらかな波の音が聞こえてくるような包容力のある世界を作りたかったんだと思います。僕個人は、1960年代や70年代の加山雄三さんが歌われた世界が、令和の音で再現されているような気がして、そのイメージで歌いました」

今年3月の大阪・新歌舞伎座での特別公演では、懐かしの映画音楽をカバーするコーナーがあったが、その影響もあるのだろうか。

「あの時は演出家の方と、大人の歌手としての竹島を皆さんに楽しんでいただきたいと相談して選曲していただいて、その経験も活きているんでしょうね。コンサートは、未来の竹島に繋がってくるものがあるので、いろんなことにチャレンジするのが大切だと思っています。荒削りかもしれないけれど、これからの竹島宏の可能性を感じさせるものを発表する場にしたいので」

ちなみに、竹島は1年間を通して、単に自身のシングル曲を中心としたコンサートではなく、会場ごとにシングルのカップリング曲やアルバム収録曲をふんだんに取り入れたり、こうした別テーマのコーナーを設けたり、時にはムード歌謡ばかりをカバーしたり、とレパートリーの多さに驚かされる。

「正直なところ、人前に披露できるものにするまでの練習がとても大変です。歌ってやはりメロディーだけじゃなくて歌詞を届けるのも必要だと思うので、両方を理解するのにはすごく時間がかかるんです。まあ、僕にとってそれは趣味の延長なんですけどね(笑)。

でも、ただの趣味じゃなく、仕事での表現になってくると、人並みではダメでいつも、耐えられないぐらい苦しい時間を費やしてこそ、様々な音楽を届けるのが可能になってくると信じて自分を追い込んでいく。その歌と格闘していく時間も嫌いじゃないからできるんです。妥協点を見つけられない人間なんですよ(苦笑)。

先生方もそんな竹島を面白がって、いろんなタイプの楽曲を作ってくださって、僕がどう歌い込めるのか楽しみにされていますね。しかも、レコーディングで一旦ゴールが見えたとしても、トレーニングの時間も作って、ステージでさらに進化させていく。このいわば“人間修行”は、苦しい時間でもあるのですが、その先に必ず何かが得られると信じています。

このトレーニングの一環で、かれこれ16年も幸耕平先生のところに通っています。コンサートでは、カバー曲をどんどん歌っているので、その練習にも真剣につき合ってくださっていて有難いです。僕にとってはすごく大切な時間で、きっと以前に比べより質の高いパフォーマンスができると信じて続けています」

4曲目は、「どこかへ夜はたどり着く」(登場する花:菫/花言葉「誠実」「小さな幸せ」)。かぐや姫「神田川」や南こうせつ「夢一夜」を想起させるフォーク調で、それでいてとても艶っぽく、新たな竹島宏ワールドが堪能できる。

「この歌は、ピアノ、ギター、ウッドベース、バイオリンと楽器が4つだけで、今回のアルバムの中で最も少ないんですね。それで、本番ではクリック(メトロノームでのカウント)無しでやりました。それは、幸先生が、この歌は一定のテンポで歌うよりも多少の揺らぎがあった方がいいのではと萩田先生に言ったら、萩田先生も、じゃあやってみようかとおっしゃって、その同時録音版が採用されたんです。僕も今までで初めての試みで、その生音が感じられていいなと思いました。全体の言葉の響きも松井先生らしさが出ていますね」

このように収録曲1曲ずつでも情熱的に語る竹島の様子から本アルバムへの本気度が鮮烈に伝わってくる。後編では、5曲目以降の全曲解説、そして本アルバムを通しての今後の活動への覚悟を語ってもらった。


(文:人と音楽をつなげたい音楽マーケッター 臼井孝

■竹島宏『Night in Bloom HiroshiTakeshima25th』
TECE-3774 / 定価:¥3,500(税抜価格 ¥3,182) / アルバムCD
1.le prélude 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:萩田光雄
2.ユーカリ 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:坂本昌之
3.あの夏は青いまま 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:坂本昌之
4.どこかへ夜はたどり着く 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:萩田光雄
5.夕歩道 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:萩田光雄
6.パルファンの坂道 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:萩田光雄
7.恋1/3 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:坂本昌之
8.いつかのアンブレラ 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:坂本昌之
9.告白 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:坂本昌之
10.螺旋の二人 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:萩田光雄
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