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“眠れるアルバム”の裏に隠された熱すぎる想いとは? 竹島宏が語る、妥協なき音楽作りの舞台裏

竹島宏   2026/11/06 13:56掲載
“眠れるアルバム”の裏に隠された熱すぎる想いとは? 竹島宏が語る、妥協なき音楽作りの舞台裏
 2026年10月、ロマンティック歌謡歌手の竹島宏がデビュー25周年記念にオリジナル・アルバム『Night in Bloom Hiroshi Takeshima 25th』をリリースしました。

 本作は、オリコンアルバムデイリーランキングで最高12位と、彼の自己ベストを更新するほど、これまでとは異なるヒットとなっています。また、YouTubeが次世代のヒット曲やクリエイターを発掘できるランキングとして新たに設けた「ハイプ(Hype)」ランキングでは、新たな動画を発表するたびにTOP50内にランクインしており、ファン層の広がりを感じさせます。

 今回は、アルバム全曲インタビューの後編で、早速始めてみたい。5曲目は「夕歩道」(登場する花:紫苑(シオン)/花言葉:「あなたを忘れない」)で、過去の恋愛を引きずっているという登場人物はまさに花言葉通りだ。

[インタビュー]
「男というのは、そういうところがあるんでしょうね(笑)。どの歌にも、歌の中で花が登場するように、おそらく松井先生は、その花言葉をヒントに、その歌の意味や裏テーマを読み解いて聞けば分かるようにされたのだと思います。この歌は、『ユーカリ』と構成が似ているからか、前半が語るようで、サビで思いきり熱唱するという歌い方で比較的すんなりと歌入れできました。サビのところで、切なさがぐっと増すと思います」

続く6曲目の「パルファンの坂道」(登場する花:ジャスミン/花言葉:「優美」「官能的」)は、力強い愛のバラードで、本作にのみサックスが入っているのもより聴き手の涙腺を刺激しそうだ。

「この歌のような三連のリズムのマイナー調は、ファンの方にも好評で、シングル曲でもおかしくないほどの完成度ですね。でも、こういう曲が入ることで、痒いところにも手が届くアルバムになったと思います。寝る前に聴くというコンセプトですが、やはり1曲くらいは激しめ、濃いめの歌が欲しいと思いますよね? ここでピークがくれば、次の曲から穏やかに聴けるかもしれませんから。ちなみに、“パルファン”は香水という意味で、歌詞中の『パルファンのコートを掛ける』というのは、その香水の残り香で包み込むという意味で捉えています」

この曲では竹島の熱唱も相まって、サックスの演奏がより聴き手の感情を激しく揺さぶるようだ。

「このサックスを聴いた時は僕も泣けましたね~。編曲の萩田先生によると、今回は、サックスの音域からはみ出した音をあえて譜面に書いたそうなんです。でも、彼ならばそこも吹いてくれるだろうと。僕が感心したのは、今回のプレイヤーの方(庵原良司さん)が、スタジオに入る前に歌詞を借りたいとおっしゃったことです。歌詞を理解した上で、どう演奏するかって考えていらして流石だなと思いました。

「恋 1/3」に、まさかの隠されたキーワード!?

そして7曲目は、軽やかなミディアム調の「恋 1/3」。「あなた」と「僕」と「あいつ」の三角関係を歌っており、「あいつ」も「あなた」も優しく思いやる「僕」という主人公は、間違いなく竹島を想定した歌詞だろう。

「“あいつ”という歌詞は、僕の歌では、久仁京介先生と弦哲也先生に作っていただいた演歌の「はぐれ橋」で出てきましたが、あの歌も三角関係でしたね。『恋 1/3』は、ファンの方が聴いても違和感がない僕らしい主人公にしていただいていると思いました。

でも、この歌はあえて軽いノリにするのがとても難しくて。一見整った8ビート(8分音符のリズム)に聞こえますが、部分的にシャッフル(跳ねるようなリズム)が入っていて、その中間を行く絶妙な心地よさを表現する必要があり、僕だけじゃなく、ミュージシャンの方たちも苦労されていて、結果的にすごくいい作品になって、終わった後にみんなで拍手したほどです。山下達郎さんのような世界観を目指したと幸先生も仰っていて、だからこそ今の日本では珍しい中間的なノリになりました。演奏する方もその難しさから、逆にミュージシャン魂に火がついたんでしょうね」

ちなみに本作の歌詞中には花が出てこないようだが、実は2コーラス目の一段落目を縦読みすると「あ・ね・も・ね」=「アネモネ」(花言葉:「はかない恋」「恋の苦しみ」)と出てくる仕掛けがあり、この花言葉と楽曲のテーマとの合致に気づくと思わず身震いしてしまった。

8曲目の「いつかのアンブレラ」(登場する花:紫陽花/花言葉:「移り気」「辛抱強い愛情」)は、シティポップ風のイントロ、タンタタンと手拍子したくなるBメロ、そして腕を横に振りたくなりそうなキャッチーなサウンドやコーラスなど、令和でも若手のアイドルポップスに見られる作風だ。

「シングルのカップリング曲では、何度かこのタイプを歌っていますが、ここまで明るくて爽やかな歌が、今回の(“眠りを誘うナイトミュージック”というテーマの)アルバムで歌うとは思っていなかったです。でも、逆にそれが皆さんの期待を良い意味で裏切っていて、次はどんな歌なんだろうってワクワク感がありますよね」

本作では、部屋で一夜に過ごしたり、買い物のメモ用紙やアンブレラが登場したり、気品ある作品の多い竹島宏にしては、生活感のある恋愛模様が描かれているのも意外だ。

「今回は曲調もポップだし、いつもよりは冒険した感じになったのかもしれませんね。さらに、この曲のポイントは、幸先生たっての希望で、コーラスが入ったことです。レコーディング中に突然、幸先生が思いついた時、予算を心配したディレクターさんの顔色がみるみる変わっちゃいましたけど、結果的にはそれが大正解!女性2人、男性1人の方が入ってくださって、より厚みが出るし、明日に向かって皆さんに爽やかな歌を届けたいという想いが伝わるようになったと思います!」

そして9曲目の「告白」(登場する花:小さな花/花言葉:「可憐」「控えめ」「清らか」)は、まさに竹島宏の真骨頂とも言えそうなシリアスなバラードで、ピアノ、ベース、そしてストリングスで作り出す音の空気は、無音の部分すら主人公の悲しみを表すようだ。さらに、ラストの「愛していました」というセリフも思わず聞き入ってしまうほど、聴き手を陶酔させる。

「こういうタイプの歌もこれまでたくさん勉強してきたので、今回どこまでこの世界観を表現できるか極めてみました。ポイントは、静けさの中で燃える思いをいかに表現できるかという点。心の切ない叫びが聞こえてくる一曲だと思いますね。

『告白』は、1曲目の『le prelude』と同じ日に歌入れをしたので、もしかすると『le prelude』のイントロがドビュッシーの「月の光」風なのが、この「告白」にも影響したのか。あるいは、スタジオの目の前にあるマンションの光が、香港の夜景と重なったのか、どこか異国情緒が感じられるかもしれません。最終的には、聴いてくださる方それぞれの感性で受け止めてくださったら嬉しいです。セリフは、歌入れの途中で思いついて、ラストの歌詞をそのまま呟きました。より満足のいく出来になりました!」

ラストとなる10曲目の「螺旋の二人」(登場する花:薔薇/花言葉:「愛情」「情熱」(赤の場合))は、かなり意表を突く構成だ。「告白」で感極まって眠りにつくかと思いきや、冷めやらぬ情熱を歌い上げて激しく終わるという作風がラストに来たからだ。

「これは幸先生からのデモテープを聴いた時に思わずニンマリしました(笑)。最後に花火を打ち上げてくださったな、と。今回のアルバムは、10曲目がない状態で、アルバムのジャケット撮影をしていたんですね。それで撮影が終わるころに音源が届いたのですが、聴いた瞬間に、“先生、ありがとうございます!!”と、すぐに連絡したくらい大満足でした。幸先生がお得意のラテン・フレーバーがしっかり入っていて、アルバムというコンサートのアンコールのようにも聴こえて、コンサート楽しかったね、とそのあと夢の世界に入っていける気がしました。

この歌では、歌い方でも新たに挑戦しています。今までの歌よりも、さらにスピードをつけて駆け上がりつつ、しっかりと芯を捉えたまま歌って、グッとくるものにしたかったんです。松井先生の歌詞も、幸先生のメロディーも、“竹島宏の歌手人生はこれからだよ!”というのを示してくださっていて、それに応えたかったんです。本当にこの歌も多くの人に聴いてもらいたいですね」

25年間の積み重ねからできたアルバムを届けたい

全10曲力作ぞろいで、今後は、各地で全10曲を披露するコーナーをメインとしたコンサートも行う予定という。通常、25年以上のキャリアを持つアーティストならば、従来の流れに新作を数曲取り入れる程度だが、10曲すべてセットリストに組み入れることからも、相当な思い入れの強さを感じさせる。

本作には様々な花が登場しているが、竹島自身が好きな花をあらためて尋ねてみた。

「僕の思い出深い花は、福井県の県花でもある水仙ですね。福井の越前海岸では、断崖絶壁に水仙畑が一面に広がってるのですが、崖の上でも、しっかりと咲き誇っている。日本海から、吹きつける潮風や強風の中でも凛と咲き続けるところは、小さなころから素敵だなと思っていました。また、デビュー当時に地元で歌った時、祖母が庭の水仙を持ってきてくれたんですね。新聞の折り込み広告に巻いた花が今でも忘れられない思い出です」

ちなみに、CDに封入されたハガキには、プレミアムイベント招待や、ロマンティックお休みボイスメッセージ、メッセージ動画が見られる、QRコード付きのサイン入りポストカードも、抽選で250名にプレゼントする予定で、竹島本人も本作をイメージできるよう企画しているとのこと。

今後の予定としては、11月9日に、角川博さんとの共演『角川博&竹島宏スペシャルコンサートマジ(本気)ヒロシ』が開催される。

「これは、デビュー以降、初めての職権濫用(?)と言えるかもかもしれません。どうしても角川先輩の生歌をそばで聴かせていただきたかったんです。角川先輩は、演歌を主軸に活動されていますが、デビュー前にクラブ歌手をされていた時代は、キャバレーで求められるような、ムーディーなものからリズミカルなものまで歌われていたので、僕自身すごく学びのある内容になりそうです。大ベテランの角川先輩と並ぶというのは本来考えられないことですが、先輩に快諾していただけてとても感謝しています。全体としては、僕のロマンティック歌謡というテーマも踏まえ、“二枚目”要素の強いコンサートになりそうです!」

また、10月21日には、以前に所属したレコード会社より『デビュー25周年記念~ベスト・コレクション~』もリリースされている。収録曲の16曲中シングル表題曲はわずか6曲というこだわりの選曲になっている。

「徳間ジャパン時代にお世話になったディレクターさんは、移籍後も頑張っている僕の姿を遠巻きに見てくださっているので、今の竹島宏を意識した選曲になっていますね。ロマンティック歌謡歌手の最初のキッカケとなった、松井五郎先生と都志見隆先生によるシングル『禁じられた想い』も入っているなど、すごく想いのあるアルバムだと思っています。ジャケット写真も、当時のオフショットが採用されているんですよ」

最後に、このアルバムを作り終えた今の心境を尋ねてみた。

「本当に今回のアルバムは、歌の神様からの贈り物だと思って頑張りました。僕も、25年間の積み重ねがあるからこそ作ることができたので、この25年を支えてくださったファンの皆様への感謝を込めて、一人でも多くの方にお届けしたいですね。これまで竹島宏を聴いたことが無い方にも届けたいですね。アイドル的な見られ方も少なからずあるでしょうし、そういう男性アーティストのライブに行くのはちょっと恥ずかしいという方がいらっしゃるのも分かるんです。でも、今後も諦めず、努力し続けていきたいです。

でも、何より良い歌を歌っていくためには、これからももっともっと磨き続けなきゃいけないでしょうね。自分の今の限界があるならば、そこを少しずつ突破しながら、新しい自分と出会う旅をこれからも続けていきたいです!」

デビュー25周年を迎えつつも、ステージの裏でどれほど自らを追い込み、泥臭く歌と格闘していようとも、それを表に出さず周囲を和ませる柔らかな雰囲気を保ち続ける――それこそが竹島宏の真骨頂だ。コスパやタイパばかりが注目される現代において、彼のような実直でしなやかな存在は、たとえ暗闇の中でも聴き手の心に明かりを灯し続けてくれるだろう。


(文:人と音楽をつなげたい音楽マーケッター 臼井孝

■竹島宏『Night in Bloom HiroshiTakeshima25th』
TECE-3774 / 定価:¥3,500(税抜価格 ¥3,182) / アルバムCD
1.le prélude 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:萩田光雄
2.ユーカリ 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:坂本昌之
3.あの夏は青いまま 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:坂本昌之
4.どこかへ夜はたどり着く 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:萩田光雄
5.夕歩道 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:萩田光雄
6.パルファンの坂道 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:萩田光雄
7.恋1/3 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:坂本昌之
8.いつかのアンブレラ 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:坂本昌之
9.告白 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:坂本昌之
10.螺旋の二人 作詞:松井五郎 / 作曲:幸 耕平 / 編曲:萩田光雄
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