1971年の「愛は死んでも」のデビューから55年という節目を迎える“至高のブルースの女王”
八代亜紀。
TBSが所蔵する貴重なアーカイブ映像を初めてDVD化した『
八代亜紀 メモリアルBOX』(DVD2枚+CD1枚+特典)が、デビュー55周年当日にあたる2026年9月25日(金)に発売されます。
[コラム] 八代亜紀が2023年に旅立ってから、およそ3年。明るく気さくな人柄で愛され、画家や俳優としても活躍した演歌の女王の人気はいささかも衰えず、今年もゆかりの地で絵画展が開催されるなど、故人を偲ぶ企画が続いている。
その八代亜紀がテイチクに在籍していた初期10年間、TBSの音楽番組に出演した際の映像を収めた『八代亜紀 メモリアルBOX』がデビュー55周年当日にあたる2026年9月25日に発売される。音楽ファンのみならず、八代が観光や文化の振興活動に尽力した故郷・熊本の人々にとっても待望の企画と言っていいだろう。
同BOXはTBSが所蔵する『輝く!日本レコード大賞』、『8時だョ!全員集合』、『ザ・ベストテン』における貴重映像を2枚のDVDに収録。さらにテイチク時代の音源から16曲を厳選したCD1枚で構成されている。映像はすべて初商品化で、美麗写真満載のブックレット(全28ページ)、特典として八代と等身大の布製ポスターが付属する盛りだくさんの内容だ。
今から55年前、1971年9月25日に「愛は死んでも」でデビューした八代は4作目のシングル「なみだ恋」でブレイク。出身地の「八代」と本名の「昭代」に由来する「八代亜紀」の名前は一躍全国区となる。
そこからはスター街道をまっしぐらだった。演歌の歌手としては異例の年3~4枚のハイペースでシングルを発表し、トップ10ヒットを連発。音楽祭の最高峰である日本レコード大賞には1973年から8年連続でノミネートされ、歌唱賞を4回、金賞を3回、最優秀歌唱賞を2回受賞したのち、1980年「雨の慕情」で大賞を獲得する。
今回のBOXのDisc2にはその過程が余すところなく収められている。バスガイドやクラブ歌手を経てデビューしたもののヒットに恵まれず、上京して8年目に「なみだ恋」で初めて大舞台に立ったときのうれし泣きから、「雨の慕情」で名実ともに歌謡界の頂点に立った瞬間の感激まで、1年ごとに女王への階段を登っていくドキュメンタリーを観るようだ。当時の会場だった帝国劇場で、名司会者・高橋圭三の進行による特別な祝祭感や、モダンでゴージャスなステージセットも観逃せない。
一方、Disc1には、ともに高視聴率を誇った『8時だョ!全員集合』と『ザ・ベストテン』の映像が計21シーン収録されている。ホールや劇場からの生中継が多かった『全員集合』ではコントコーナーからのセットチェンジ後、ビッグバンドの前で歌うのが基本スタイル。客席からの拍手や指笛、「亜紀ちゃん!」コールに笑顔で応えるところは公開放送ならではの臨場感だ。
嬉しいのは、他のテレビ局にはほとんど残されていない1970年代前半の歌唱シーンが多数観られること。当時は記録メディアが高価で、その都度、上書きして使用していたため、今回のDVD化はTBSならではの価値ある企画と言えよう。近年、各局で放送されている昭和歌謡特番では「舟唄」「雨の慕情」など代表曲が中心となりがちなので、「女ごころ」「しのび恋」「愛ひとすじ」「おんなの夢」「貴方につくします」など、テレビではなかなかオンエアされない初期のヒット曲が網羅されているのもありがたい。
そして『ザ・ベストテン』からは注目曲を紹介するスポットライトコーナーで披露した「哀歌(エレジー)」と、ベストテン入りを果たした「雨の慕情」の映像をコンパイル。出色はスタジオにラップを敷き詰めて雨を降らせた初ランクイン時の演出だが、司会の黒柳徹子、久米宏とのトークもたっぷりと収められている。
全編を視聴すれば、比類なき歌唱力に加え、1曲ごとにデザインの異なる華やかなドレスをまとった演歌の女王の魅力を堪能できることは請け合い。往時を知るファンはもちろんのこと、昭和の歌謡曲を愛する令和世代にも手に取って、八代亜紀の世界に浸っていただきたいBOXだ。
(濱口英樹)
写真提供 TBS