日本各地が雨模様でも、7~8月の夏祭り・盆踊りシーズンはすぐそこ。1920年代の不景気の中で生まれた東京音頭が示すように、音頭は庶民の気持ちを明るくする力を持ちます。近年は
ボン・ジョヴィ で踊る“盆ジョヴィ”文化を生み出した中野駅前大盆踊り大会や、
大瀧詠一 「ナイアガラ・レコード」公認のナイアガラ盆踊り、神田明神納涼祭りの名物アニソン盆踊りなど、ポップスと盆踊りの融合が再び注目を浴びています。
音楽面でも、大瀧詠一プロデュースの「ナイアガラ音頭」や邦・洋ロックを盆踊り化した『LET'S ONDO AGAIN』が再評価される一方、アイドル・シーンからは
≒JOY 「ニアジョイ音頭」が生まれるなど多彩な“新・音頭”が登場。さらに
民謡クルセイダーズ のように、民謡と世界の音楽を掛け合わせ、日本の土着音楽の魅力を再発見させるアーティストも活躍中です。
円高により物価高で庶民の鬱々もマックスとなり、再び音頭が必要とされる時代が来たのか?今回はそんな新たに生まれたさまざまなスタイルの新・音頭ソングをリサーチしていきます。
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≒JOY「ニアジョイ音頭」 アイドルのダンスと盆踊りをミックスした振り付けを、メンバーたちがキレキレかつキュートに踊るダンス動画が数多く投稿されている≒JOYの「ニアジョイ音頭」。2025年の全国ツアー〈Our moon is getting full〉の東京公演にて、法被姿でサプライズ披露されて話題を呼び、同年10月に配信リリースされました。手打ち鉦や笛が弾むお囃子と、ハイテンションなユーロビートを大胆に融合したサウンドは、“どんちゃん騒ぎ”を全肯定する楽しさ満点の仕上がり。テンポよく差し込まれる「JOY!JOY!JOY!」「恋!恋!恋!」の掛け声は一緒に声をあわせたくなります。 VIDEO
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爆風スランプ「よしおと爆風の、ええじゃないか盆踊り~武道館で編」 爆風スランプ が35年ぶりの日本武道館公演に向けて初音源化した「よしおと爆風の、ええじゃないか盆踊り~武道館で編」は、80年代結成当初の楽曲を小島よしお とともに再構築した強烈な一曲。江戸末期の民衆運動“ええじゃないか”の破天荒な精神に、小島の「そんなの関係ねぇ!」が豪快に合流し、“令和版ええじゃないか精神”が爆発しています。新たに加わった八丈太鼓のビートは、日本人の魂を揺さぶる躍動感を生みつつ、原曲由来のプログレッシヴ&メタリックな演奏とも不思議なほどマッチ。踊らずにはいられないリズムと、時代を超えて受け継がれる“やぶれかぶれの祭り心”が詰まったナンバーです。VIDEO
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アルフィー「メリーアン音頭」 アルフィー の代表曲「メリーアン」(1983年)が、デビュー50周年となる2024年にまさかの盆踊りアレンジで復活。ハードロックに乗せた少年の初恋という叙情的な世界観はそのままに、マイナーキーの曲調が盆踊りと相性抜群で、全国の夏祭りや地域イベントを沸かせています。盆踊りアレンジでテンポが落ちたことで、繊細な感情を描くメロディの美しさが、また違った表情で際立って響いてきます。VIDEO
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BEGIN「渋谷百年総踊り」 BEGIN が2024年、100年に一度の再開発で生まれ変わっていく渋谷をテーマに制作した新たな盆踊り曲は、渋谷を“第2の故郷”と語る彼らならではの地元愛が詰まった一曲。比嘉栄昇 の温かな歌声や沖縄民謡のこぶし、三線の響きが心地よく、歌詞にはハチ公、百軒店、金王八幡宮など渋谷の名所が盛り込まれ、街の情景が鮮やかに浮かび上がります。同曲は2024年10月発売のアルバム『ビギンの盆マルシャ 』に収録されており、ブラジル音楽“マルシャ”と盆踊りを融合した独自の“盆マルシャ”アレンジで「東京音頭」「炭坑節」を聴かせるメドレーも楽しめます。■
ゴスペラーズ「アカペラ音頭」 ゴスペラーズ が発表した音頭曲は、94年の結成以来ハーモニーで多彩な感情を描いてきた彼らならではの魅力が詰まった一曲。5人それぞれの声色が立体的に重なり、言葉遊びを交えつつ脱力感たっぷりに「ハモリましょう~」と呼びかける、贅沢でユーモラスな音頭に仕上がっています。スキャットの部分では、アニメ『アカペラ侍』で共演した豊永利行 、小野大輔 、山寺宏一 ら声優陣の台詞も登場する豪華な遊びごころも。同曲は6月24日にリリースされた『UNIVER5OUL 』に収録されています。VIDEO
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鈴丸姉妹「鈴丸音頭~イングリッシュ編~」 『笑点』座布団運びとして日本中に親しまれる山田隆夫 が、あたりまゆ美、らむ音の3人で2024年に結成した鈴丸姉妹も注目です。シングル「ざぶとんサンバ 」に収録される「鈴丸音頭~イングリッシュ編~」は、音頭のリズムにのせて楽しく英語を覚えられるナンバー。「夏は疲れる おつかれサマー」など、ダジャレ満載で中毒性があります。 ■
民謡クルセイダーズ「ワイド節」 アフロ・ファンク調の「炭坑節」やカリビアンな「佐渡おけさ」など、日本民謡を世界各国のダンス・ミュージックで聴かせる福生発の大所帯バンド、民謡クルセイダーズ 。2017年発表の『エコーズ・オブ・ジャパン 』は国内外から高い評価を獲得し、日本民謡を世界に知らしめました。踊らずにはいられないと定評のあるライヴも魅力で、サルサ調「ソーラン節」では観客が“舟をこぐ”動きで一体となり、子どもまで大盛り上がり。 そんな彼らが6月26日にリリースした新作アルバム『日本民謡より愛をこめて 』(写真)からお薦めなのは、徳之島の新民謡「ワイド節」。闘牛好きの男のために生まれ、“がんばれ”を意味する方言“ワイド”が力強く響く、沖縄の夏祭りを賑わせている曲です。本作では元ちとせ が三味線と歌で参加し、シマ唄のパワフルな歌唱でさらに血沸き肉躍る楽曲へとパワーアップ。言葉の面白さも鮮やかに伝えており、民謡の詩の味わいも伝えてきた“民クル”の功績にも改めて気づかされます。 VIDEO
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中西レモン「北海盆唄」 着物にハート型サングラス姿で知られる江州音頭の唄い手・中西レモン は、多国籍サウンドと“エエ声”で民謡の新たな魅力を引き出す存在。2022年の1stアルバム『ひなのいえづと 』では東北民謡を中心に、世界各地の音楽を取り入れた独自のアレンジが高く評価されたほか、中野区大和町八幡神社の大盆踊り大会から生まれた12インチ『ODORI OND』では、江州音頭とヒップホップやタイの伝統芸能“モーラム”を融合し、オルタナティヴな盆踊りシーンをも象徴しています。2ndアルバム『夜明け烏の渡るまで 』では、ブラジル人ドラマーのダニエル・バエデールやすずめのティアーズ 、エマーソン北村 らが参加し、より多国籍で豊かな音世界を展開。特に「北海盆唄」は、すずめのティアーズのコーラスとともに、原曲の陽気さを軽快で清涼感あるサウンドへとアップデートし、無国籍なムードを醸しています。 VIDEO
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すずめのティアーズ「ポリフォニー江州音頭」 バルカン地方の民謡を歌う佐藤みゆき と、ガットギター奏者でアレンジャーのあがさによるデュオ、すずめのティアーズ。ブルガリアン・ポリフォニーと日本民謡を融合させたスタイルが特徴で、中西レモンと並び2020年代の民謡ポップスを牽引する新潮流を担う存在です。ロングセラーの1stフル・アルバム『Sparrow's Arrows Fly so High 』には、江州音頭を2声のハーモニーで歌う「ポリフォニー江州音頭」をはじめ、彼女らの魅力が詰まった楽曲が並びます。 VIDEO
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TURTLE ISLAND「穴あき音頭」 ハードコアでさかんな愛知・豊橋から生まれ、日本のお囃子や世界各地の土着音楽をパンクに昇華したサウンドで豊橋の名物フェス〈橋の下世界音楽祭〉の顔役を務めるTURTLE ISLAND 。「穴あき音頭」はライヴ盤『LIVE IN TURTLE ISLAND 』の収録曲で、何とセックス・ピストルズ 「アナーキー・イン・ザ・U.K.」の音頭オマージュ。オリジナルの日本語詞には、のんきな語り口にも、庶民の率直な思いがにじむ歌詞が魅力です。 ポップスに祭囃子を取り入れることで新しい感性の音頭が生まれたり、かつて
河内家菊水丸 がレゲエで再構築した「ボブ・マーリー物語」のように、世界の音楽と組み合わせることで、昔から踊り継がれてきた音頭のメロディや詩の魅力がより際立つことも。音頭には、日本の庶民の心に響く面白さが息づいています。さまざまなスタイルの音頭に触れながら、これから訪れる夏を楽しみに待ってみるのも良さそうです。