第65回グラミー賞にて2022年5月発表のアルバム『ハリーズ・ハウス』（写真）が年間最優秀アルバム賞に輝き注目を浴びているハリー・スタイルズ。ワン・ダイレクション時代から社会現象的な人気を博してきたスタイルズのソロ3作目となる本アルバムは、2020年から21年にかけて、UK、ロサンゼルス、そして東京でもレコーディングされ、どこにいっても自分が戻れる場所である“家”を作るというコンセプトを軸に、アイデンティティ、コミュニティ、愛というテーマを掘り下げた作品。アルバム・タイトルが、細野晴臣の1973年作『HOSONO HOUSE』に由来していることでも話題となりました。

　アルバムからの第1弾シングルとして2022年4月に配信された「アズ・イット・ワズ」は、2022年のSpotifyにおいて最も再生されたという世界的大ヒット曲。グラミー授賞式でも2022年を代表するヒット曲としてスタイルズにより披露されましたが、この曲のミュージック・ビデオも大きな話題に。監督は、リル・ナズ・X、カーディ・B、リゾ、ポスト・マローンなどのMVも手掛けたウクライナ出身のタム・ヌイノ。映像では、スタイルズは赤いスパンコールのジャンプスーツに身を包み、青いスパンコールのジャンプスーツ姿を着た女性をパートナーに、もどかしい恋の関係性を表現。回転する円盤の上で女性に触れようと空回りするさまは、さまざまな解釈を呼んだパーソナルなラヴ・ソングの同曲を見事に体現しています。

　スタイルズの相手役ながら、優雅で可憐なダンスで魅了したこの女性は、フランスと中国の二つの国のルーツを持つダンサー、コレオグラファーのマチルデ・リン（Mathilde Lin）です。仏パリのモデル事務所「CITY MODELS」に所属しており、2022年夏にはブラジルのコンテンポラリー・ダンス・フェスティヴァル〈Dança em Trânsito〉に参加するなど、さまざまなダンス・カンパニーに参加し世界中をツアーして廻っているほか、今年1月にはファッション・ブランド「LÙCHEN」のショウにも起用。「アズ・イット・ワズ」MVのほかは、2020年にイヴ・トゥモア「Gospel For A New Century」のMVにもダンサーとして出演しています。