毎月22日は「ショートケーキの日」。カレンダーを見ると22日の上には15日があり、“15(いちご)が乗っている”ことから名付けられたといわれています。そんな甘いイメージのショートケーキですが、楽曲の歌詞に登場するときは、恋愛や青春、孤独、幸せな瞬間など、さまざまな感情を映し出すモチーフになることも。
今回は「ショートケーキの日」にちなみ、歌詞に「ショートケーキ」が登場する楽曲を特集。アーティストたちが“ショートケーキ”に込めた意味や、それぞれの楽曲が描く世界観とともに紹介します。
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=LOVE「とくべチュ、して」 指原莉乃プロデュースによるアイドル・グループ“=LOVE”(イコールラブ)の「とくべチュ、して」は、自身初の累積再生数1億回を突破した代表曲。アイドルらしい甘さや“特別扱いされたい”気持ちが詰まった世界観が魅力の一曲。〈イチゴみたいに座ってもいい?〉という表現は、ショートケーキの上に乗るイチゴ=一番目立つ存在、特別な存在になりたい気持ちを連想させ、恋する高揚感やかわいらしさを描く歌詞の中で登場するショートケーキは、甘い恋愛や独占したい想いを象徴するモチーフとして描かれています。なお、この楽曲で指原莉乃は第67回日本レコード大賞の作詩賞を受賞。
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supercell feat.初音ミク「ワールドイズマイン」 supercellの初音ミクオリジナル曲2作目となる本楽曲は、“世界で一番おひめさま”というフレーズが印象的な、女性のワガママを愛らしく描いた究極の一曲。ワガママで愛らしい主人公像を描く中で、本楽曲でのショートケーキは、単なる好物ではなく、“本当は欲しいもの”や“甘えたい気持ち”の象徴として描かれているようにも受け取れます。幼さや素直な欲求の象徴でありながら、それを抑えようとする健気さを感じ、実はワガママだと思われたくない――そんな主人公の繊細さが表れています。
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柏木由紀「ショートケーキ」 柏木由紀の
AKB48からのソロ・デビュー・シングルとしてリリースされた本楽曲は、タイトルにも掲げられた“ショートケーキ”が、どのような感情や物語を映し出しているのかに注目したい一曲。甘さだけではない繊細な心情表現が魅力で、幼なじみとの思い出や成長の過程をつなぐ象徴的な存在として描かれており、ショートケーキのイチゴを巡って喧嘩した幼い頃から、落ち込んだ日に相手がイチゴを多くくれた優しさまで、何気ない記憶の積み重ねが恋心へと変化していく様子が印象的。ショートケーキは単なる思い出の食べ物ではなく、“変わらない関係”や“気付けば恋になっていた感情”を映し出すモチーフとして機能しています。
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すとぷり「ストロベリー☆プラネット!」 作詞家 / 作曲家 / ボカロPの
ナユタン星人が書き下ろした、すとぷり「ストロベリー☆プラネット!」は、タイトルからも感じられるように、“イチゴ”をキーワードにしたポップで明るい世界観が魅力。ライヴや配信活動を通じて幅広い世代から支持を集めるすとぷりらしいエネルギッシュさの中に、〈地球くらいのショートケーキ食べよう〉という大胆な表現で、“想像を超える幸福”や“叶えたい夢の大きさ”を表しているようにもみえます。本楽曲では、ショートケーキが見たことのない未来へ進もうとする希望やワクワク感を彩るモチーフとして描かれています。
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Snow Man「ブラザービート」 Snow Manが主演を務める映画『
おそ松さん』の主題歌としても話題を集めた、にぎやかでコミカルな雰囲気が印象的な一曲。映画の世界観とも共通する“わちゃわちゃ感”と、今まで無いようなラップの掛け合いで9人の個性が各所にみられるパーティー・ロックとなっています。テンポ感のある歌詞の中で登場するショートケーキは、恋愛や憧れの象徴としてではなく、兄弟や家族のような近しい関係だからこそ起こる“食べ物を巡る小さな揉め事”を描いており、何気ない日常や、くだらないことで笑い合える関係性の愛おしさを感じさせる存在となっています。
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重岡大毅・神山智洋(WEST.)「Lovely Xmas」 WEST.の重岡大毅・神山智洋によるユニット楽曲「Lovely Xmas」は、クリスマスの温かな空気感を描く一曲。ショートケーキといえばクリスマスを連想する人も多いなか、この楽曲ではロマンチックな比喩表現でショートケーキが登場します。白い雪景色と恋人の赤いリップを、ショートケーキの“白いクリームと赤いイチゴ”になぞらえた描写が印象的。恋人の姿を、“甘く特別なもの”として見ている彼氏目線の表現とも捉えられます。冬ならではの幸福感や特別な時間、恋人を愛おしく思う気持ちが感じられる楽曲となっています。
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きゃりーぱみゅぱみゅ「ふりそでーしょん」 きゃりー自身が20歳となるのを記念して制作され、成人式をテーマにした独特の世界観と、中毒性のあるメロディが印象的なナンバー。ポップカルチャーを象徴するようなきゃりーぱみゅぱみゅらしい表現の中で、ショートケーキというモチーフも鮮やかな彩りを添えています。この楽曲では、恋のときめきや未熟さ、切なさを表現しているようにみえるのと、一方で、青春や子ども時代の象徴としても機能。大人になる期待と不安の狭間で揺れる、子ども時代が終わっていく戸惑いの感情を映し出しています。
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大森靖子「アナログシンコペーション」 “激情派”とも呼ばれるパフォーマンスで注目され、アイドル・グループ“ZOC”を結成&プロデュースし、自身も参加するなど、独自の感性と言葉選びで支持を集める大森靖子。歌詞に登場する何気ないモチーフは、感情や社会観を映す象徴として機能することが多く、「アナログシンコペーション」で出てくるショートケーキは、単なる甘さや幸福の象徴ではなく、“個としての理想”や“崩したくない自分らしさ”を映す存在として描かれているようにも受け取れます。また、“倒れたショートケーキ”は、他者との関わりの中で揺らぐ個人や理想の比喩とも取れます。形が崩れても価値は変わらない――そんな一般論に対して、「それでも完璧しゃないのは嫌だ」と葛藤する繊細さを表し、“倒れたショートケーキ”が独特の存在感を放って、世界観を深めています。
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如月マロン(ジェラードン)「イチゴのショートケーキ」 如月マロン(
かみちぃ)は夜勤アルバイトをしながら地下アイドルをしている35歳という設定のお笑いトリオ・ジェラードンのキャラクター。唯一のファンであるごろうさん(
アタック西本)との握手会でのやり取りが癖になるコントで誕生しました。強烈なインパクトを放つこの楽曲は、ユーモアとクセの強い世界観が魅力。今回の特集の中でも異彩を放つ一曲といえます。本楽曲では、その名の通りショートケーキが登場するものの恋愛や思い出の象徴としてではなく、カオスな世界観を彩る“幸福感そのもの”として描かれているよう。不思議な“恋のカーニバル”の中でショートケーキを味わい、お腹が〈トリトントント タンタントティントン〉と高鳴る展開は、理屈を超えた高揚感や無邪気な楽しさを感じさせます。ファンのごろうさんの合いの手にも注目です。
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Mr.Children「その向こうへ行こう」 2000年9月にリリースされた9枚目のアルバム『
Q』に収録された「その向こうへ行こう」では、幅広いテーマを歌詞に落とし込んできたMr.Childrenが、「漫画『バガボンド』のテーマ曲を作ったら?」というコンセプトで制作。〈ショートケーキで例えるのなら イチゴだけ最後に食べるタイプ〉という比喩で自身の価値観を表現。その後に続くフレーズからは、大切に取っておいたものを失った経験や、叶わなかった夢への思いもにじんでいます。このショートケーキは“人生で追い続けた理想”や“失いながらも進んでいく夢”を映すモチーフとして描かれているようにもみえ、幼い価値観(日常的な例え)を使って、人生の選択や挫折を語る感じが、どこか『バガボンド』ともリンクしているようにみえます。
ショートケーキのイチゴを最初に食べる人も、最後まで残しておく人もいるように、同じ“ショートケーキ”でも楽曲によって込められた意味はさまざま。恋の象徴になったり、思い出をつなぐ存在になったり、ときには夢や葛藤を映し出したりと、その表現は想像以上に幅広いものでした。身近な存在だからこそ、アーティストごとの価値観や物語が投影されやすいのかもしれません。甘いだけでは終わらない、アーティストたちが歌詞に込めたショートケーキ。「ショートケーキの日」をきっかけに、それぞれの楽曲を聴きながら、歌詞の中に登場する“ショートケーキ”がどんな意味を持っているのか、あらためて味わってみてはいかがでしょうか。皆さんはどんな味や感情を思い浮かべますか?
(写真は2025年2月26日リリースの=LOVE「
とくべチュ、して / 恋人以上、好き未満」)