e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活 - [注目タイトル Pick Up] マイルス・デイビス、CBS時代の8タイトルがハイレゾで突然登場 / ヤニック・ネゼ=セガンの飛躍の10年を集大成する音源”
掲載日:2018年6月26日
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注目タイトル Pick Up
マイルス・デイビス、CBS時代の8タイトルがハイレゾで突然登場
文/國枝志郎

 CBS/COLUMBIAのマイルス・デイビスのハイレゾはいつでも突然だ。名盤『カインド・オブ・ブルー』のハイレゾが突然ステレオとモノラル、しかもサンプリングレート96kHzと192kHz(どちらも24bit)、都合4種類で同時にハイレゾ配信されたときも突然だった。このアルバムそのものがマイルスの、というよりジャズを代表する一枚であったことに加え、これらのスペックの異なる4種類の音源(サイトによってはDSD版もあるのでじつは5種類)が、ハイレゾの音質の違いを感じるのにうってつけの音源であったので、すべてのデータをそろえるマニアもかなりいたと思われるが、それはいいとして、こちらとしては当然これを皮切りにCBS/COLUMBIAのすべてのマイルス音源がハイレゾでどかっと投入されるだろうと思っていたのである。しかしその後は『オン・ザ・コーナー』や『ビッチェズ・ブリュー』『イン・ア・サイレント・ウェイ』など数タイトルが、それぞれバラバラなスペック(DSD2.8が存在するのは『イン・ア・サイレント・ウェイ』と『セブン・ステップス・トゥ・ヘヴン』だけとか、PCMもあるものは88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHzといった具合)で配信されて終わってしまうなど、どうにも統一感がないのがちょっと気になるところではあったのだ。しかしやはりこのレーベルのマイルスはすべてハイスペックな音響で聴きたいというのがファンの心情だろう。そんな思いが届いたのか(笑)、これまた突然にマイルスのカタログが8タイトル、ハイレゾ配信と相成ったのである。8タイトルのうち、一つはいわゆる“ブートレグ・シリーズ(2018年6月現在、Vol.6まで発売中)”で、これも悪くないがやはり目当てはオリジナル・アルバム7タイトル。その中でも今回の目玉はCBS/COLUMBIA移籍第一弾アルバムとなった『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』(1956年作)から『スケッチ・オブ・スペイン』(1959年作)までの4作品のモノラル・ヴァージョン(スペックは96kHz/24bit)が選ばれていること。「モノラルには音の細工があまり施されておらず、音への注意をそらすものも少ないから、マイルスとほかのミュージシャンとの音楽的な対話を、スタジオで起こったとおりに聴くことができるんだ」というプロデューサー、ジョージ・アヴァキャンの言葉をかみしめながら聴き込みたい。それとできればぜひDSD配信も!


 ECMからスティーヴ・ティベッツのじつに8年ぶりとなるニュー・アルバム『Life Of』(ジャケットの猫の集団が可愛い?)が発売されたと思ったら、それにあわせてECMのカタログも5枚ハイレゾ配信されて一気にスティーヴ・ティベッツ祭りが(個人的に)繰り広げられている。スティーヴ・ティベッツは1954年生まれのアメリカのギタリスト。その作品の多くがドイツのECMレーベルから発売されていることからもわかるように、ジャズを基本としながらもそこにとどまらず、ワールド・ミュージックやロック、アンビエントな要素も持った多彩な音楽性を持つアーティストである。ECMのギタリストといえばパット・メセニーはもちろん、ジョン・アバークロンビーやテリエ・リピダルなどがぱっと思い浮かぶが、それにしてもティベッツの存在感はまさしく孤高と呼ぶにふさわしい。じつはティベッツのハイレゾ配信はこれらが初ではなく、1997年にRhinoから出したネパールの尼僧でありマントラを歌う歌手でもあるアニ・チョイン・ドルマとの共作『Cho』が2016年にハイレゾ(88.2kHz/24bit、MQA版もあり)配信されていた。このアルバムはティベッツの作品の中でも異色ではあるが、コラボレーションとしては気に入っていたらしく、2004年に同じ組み合わせで『Selwa』というアルバムを制作している。『Cho』がハイレゾで出たおり、それならECMの諸作品もぜひハイレゾに……と心待ちにすること2年。新作とともに『Yr』(1980年)、『Northern Song』(1982年)、『Safe Journey』(1984年)、『Big Map Idea』(1989年)、『Natural Causes』(2010年)がハイレゾ(88.2kHzと96kHz/24bit)での登場となった。これらのカタログを聴いてティベッツの歴史を振り返り、そして8年ぶりの新作『Life Of』(88.2kHz/24bit)を聴く。期待にたがわぬ深い音響が鳴り始める。8年前の前作『Natural Causes』とスムースに接続していくアコースティックなギター・サウンドにパーカッションとチェロが静かに彩を添えていく。これこそハイレゾで聴くべき音響工作といえるだろう。


“アンビエント界のチェット・ベイカー”というレコード会社のコピーに吹き出してしまったのだが、まあでも見た目はちょっと似てるかもしれない(笑)。渋いトランペット吹きという点では通じるところもあるのかもしれないけど……はい、閑話休題。ジョン・ハッセルの名前はアンビエントの伝道師ブライアン・イーノとの共作としてEditions E.G.から1980年にリリースされた『Fourth World, Vol.1: Possible Musics(邦題:第四世界の鼓動)』から広く知られるようになった。この“第四世界シリーズ”の第1作は当時イーノが推進していたアンビエント・シリーズの一環として認識されて広まったが(プロデュースはイーノとハッセル)、翌1981年の『Theory in Malaya: Fourth World Volume Two(邦題:マラヤの夢語り)』からは、イーノの参加はあるもののプロデュースはハッセルの単独となっており、よりアーティストとしての独自性を打ち出した作品として記念すべき作品となったのだった。その後テリー・ライリーやデヴィッド・バーン、ピーター・ガブリエル、デヴィッド・シルヴィアン、ビョークといったアーティストとの共演を経て、近年ではワンオートリックス・ポイント・ネヴァーやヴィジブル・クロークス、サム・ゲンデルなども彼からの影響を認めるなど、音楽史に静かだが重要な潮流を生み出してきたジョン・ハッセルによる『Last Night the Moon Came Dropping Its Clothes in the Street』(2009年)以来となる新作がこの『Listening To Pictures』である。ECMからのリリースとなって当時ちょっとした話題となった『Last Night〜』は、2015年末にハイレゾ(96kHz/24bit)でリリースされていたのを耳ざといファンなら気が付いていただろう。彼自身の新レーベル、Ndeya(インディアと読むとのこと)からの最初のリリースとなった本作は、これまでの彼の作品と基本的には同一線上にありながら、より複雑に絡み合うテクスチャーとリズムが、ハッセルの気合いを感じさせるに十分な出来となっている。サブタイトルには“Pentimento Volume One”とある。この“Pentimento”はイタリア語で、“塗り直した絵画の元の絵が透けて見えてくる”というような意。なんのこっちゃと思われるかもしれないが、ジャケットを見て音を聞けば理解できると思う。ハイレゾ(44.1kHz/24bit)で、音の透明度もより増して聴こえるはずだ。


 ま、まさかのセカンド・アルバムか! 2014年にリットーミュージックの『サウンド&レコーディング・マガジン』誌が主催する“Premium Studio Live Vo.7”としてDSD5.6というハイスペックのみで配信されたセルフ・タイトルのアルバムを、僕は当欄で絶賛紹介したのだが、あれは企画もの、一発ものとばかり思いこんでいたよ……。Buffalo Daughterの大野由美子をリーダーに、マイカ・ルブテ、AZUMA HITOMI、新津由衣(ファーストのときはNeat's名義)という4人で結成されたこのHello, Wendy!のファースト・アルバムは、そのユニット名がシンセサイザー音楽の草分けである『スウィッチト・オン・バッハ』のウォルター(現ウェンディ)・カーロスから取られていることからもわかるように、アナログ・シンセを大量に駆使したキッチュでモダンなシンセ・アンサンブルでバッハ(シンセ音楽の定番……笑)やクラフトワークのカヴァーにオリジナル曲を巧みなアレンジとアンサンブルで聴かせたご機嫌な作品だったわけで、考えてみれば一発屋で終わらせるには惜しい存在であったことは確かなのだ。今回はなんといきなりベートーヴェンの“第9”からスタート! 「ふろいでしぇーねるげってるふんけん♪」がヴォコーダーで歌われると思わず一緒に歌いたくなりますな(笑)。これは2018年末の第9シーズンにあちこちで流れてくると予想。続いて豪奢なパイプオルガンの響きが流れてきてなにごと? と思うも、それがM(ロビン・スコット)のヒットナンバー「Pop Muzik」であることに気づくと思わず笑みがこぼれてしまう。坂本龍一の「Self Portrait」やジェフ・ベック「Star Cycle」、ビーチ・ボーイズ「Lavender」といったカヴァー・ナンバーをHello, Wendy!でしかありえない珠玉のアレンジで楽しく聞かせてくれる。カヴァーばかりではなく、メンバーのオリジナル曲も最高にイカしてる。ゲスト陣に目を向けてみると、ドラムスのASA-CHANGのほか、デトロイト・テクノの重鎮(UR、ロス・ヘルマノスなど)ジェラルド・ミッチェルまで参加しているという豪華さ。これはもう永遠に続けていただきたいものです。DSDのみで配信されていたファーストから5曲を選んだ『The First Encounter with Hello, Wendy!』とともに、96kHz/24bitでシンセサイザーの奔流のような響きを堪能せよ。


 ここを毎回読んでくれている方ならジム・オルークのことはご存じかと思うけれど、シカゴ出身のギターを中心としたマルチ・ミュージシャンで、そもそも僕などは90年代半ばに勃興したいわゆる“シカゴ音響派(必ずしもシカゴだけではないが、シカゴのインストゥルメンタル・バンド、トータスの音楽に代表されるサウンド)”のシーンで名を上げてきたユニット、ガスター・デル・ソル(太陽の胃袋、の意)のメンバーとして彼を知ったのだが、その後ジムはソニック・ユースのメンバーとしても活躍し、先鋭的なミュージシャンとして知る人ぞ知るという風情の存在だったが、大の日本びいきのため、ついに彼は日本に移住してしまう。2011年には『新・平成歌謡塾』(BS朝日)に出演、まさかのスペシャル・レッスン生として「矢切の渡し」を「すいません、すいません」と言いながら歌い、「日本語の情感をたっぷり表現できている」と称賛されたのには本当にびっくりしたものである。現在も彼はシンガー・ソングライターであり、電子音楽家であり、即興演奏家であり、映画音楽家であり、プロデューサーであり、エンジニアであり……とにかく突出した音楽家なのである。2015年にシカゴのドラッグ・シティからリリースされた彼の前作『シンプル・ソングス』は全曲これ歌ものであった。そのしみじみとした情感にはあらためて惚れ惚れさせられたものだが、それから3年たってリリースされた新作『sleep like it's winter』は静謐なインストゥルメンタル作品。アンビエントといってもいい。日本の新しいレーベル、NEWHEREからのリリースである。「アンビエント、 ニューエイジ、 ドローン、 ポストクラシカル、 等々。これらジャンルの境界線を取り払い、“エレクトロニック・ライト・ミュージック”と定義付けて電子的な軽音楽を創造するニューブランド」というこのレーベルからジムへの要望はやはり“アンビエント”だったという。そう、たしかにこれはアンビエントであるには違いないだろう。しかし44分1トラックのこの音響はきわめて重層的であり、さまざまな要素が同時に鳴らされる特異なアンビエントだ。1トラックではあるが、途中に残響のような静寂が立ち込めることで全体は4つの部分に分けられそう。静寂の入りと出の感覚はとくにジムの作品としては初のハイレゾ(96kHz/24bit)で聴くと時間感覚を奪うような効果がある。

ヤニック・ネゼ=セガンの飛躍の10年を集大成する音源
文/長谷川教通

 アンリ・デュティユーは1916年フランス生まれ。2007年の小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラによる「Le Temps L'horloge(時間 大時計)」の世界初演。松本市のホールで聴衆の拍手に応える老作曲家の姿を記憶している人もいるだろう。その6年後、97歳で惜しまれつつ亡くなったが、数多い現代音楽の作曲家の中でもこれほど演奏家や聴衆に愛された人は少ないのではないだろうか。彼にはとても印象的なタイトルが付いている作品が多い。チェロ協奏曲「遙かなる遠い国へ」とか、小澤征爾の委嘱による「時の影」、ヴァイオリン協奏曲「夢の樹」など。また演奏者からの委嘱作品も多く、サイモン・ラトルによる「コレスポンダンス(往復書簡)」やアンネ=ゾフィー・ムターによるヴァイオリンと管弦楽のための夜想曲「同じ和音の上で」などが知られている。彼の代表作といわれる「メタボール」は名指揮者ジョージ・セルの委嘱によるものだ。
 これらの管弦楽作品を2012年から2016年にかけてライヴ収録したのがリュドヴィク・モルロー指揮シアトル交響楽団。交響曲第1番、第2番「ル・ドゥブル」をはじめ主要な管弦楽作品をほぼカバーしている。2011年から首席指揮者をつとめるモルローの大きな成果だと言っていい。録音も優秀で、白い紙に次々と現れる色彩のようなデュティユーの音楽を克明にとらえている。時には淡く漂い、時には強烈に飛散する色。それらは時間とともに消えていくのだが、それでも消えることなく心に残るものがあるはず。時間というフィルターを通して聴こえてくるもの……それがデュティユーの作品に漂う幻想性や神秘性となって聴き手の心をとらえるのではないだろうか。まるで白い紙を裏返してみると、思いもかけない色彩の痕跡が遺されているように……。


 日本での知名度はお世辞にも高いとは言えないピーター・ドノホー。1982年のチャイコフスキー・コンクールでは最高位を獲得するなど、若い頃から抜群のテクニックと幅広いレパートリーで知られた名ピアニストだ。最近ではスクリャービンやプロコフィエフをはじめロシアの近現代作品を録音して高い評価を受けている。中でもイチオシがショスタコーヴィチ。この演奏はすばらしい。まず、音色がクリーン。多彩なタッチを完璧にコントロールする。音数の少ないピアノ・ソナタ第2番のラルゴで聴かせる透けるような叙情性。マッチョ系やワイルド系の演奏家とは別次元の表現だ。ピアノ協奏曲第2番のアンダンテも聴きもので、ショスタコーヴィチの作品中でもとびきり美しい楽章をベタつくことなく、また無表情になることなくしっとりと聴かせる。終楽章の高速タッチ、鮮やかな指使い、ショスタコーヴィチ特有のリズム感……リリシズムとダイナミズムのコントラストがみごと。バックはイギリスを中心に活動する室内楽団のオーケストラ・オブ・ザ・スワンだ。小気味よい演奏でピアノを引き立てている。2015、2016年の録音でとてもクリアな仕上がりになっている。






 ロッテルダム・フィルの創立100周年とヤニック・ネゼ=セガンの首席指揮者就任10周年を記念したアルバム。CDでは6枚セットだが、配信では別売されており、96kHz/24bitのハイレゾ音源が手に入る。ぜひハイレゾで聴いてほしい。というのも、ネゼ=セガンのオケ細部にまで徹底的にこだわり、しかも全体のフォルムは崩さないというアプローチを聴きとってほしいからだ。ライヴ録音とはいえ、ダイナミックレンジはかなり大きく録られており、たとえばドヴォルザークの第8番など、オケを煽り立てることなく木管や弦のピアニシモの表情をていねいに扱い、旋律を美しく描き出す。そこからグーンとアクセルを踏み込んでスケールの大きなフォルテシモに至る、そのコントラストが聴きどころ。マーラー未完の第10番はクック版による全曲演奏だ。彼は、2014年にモントリオール・メトロポリタン管とも録音しているが、ロッテルダム・フィルとの録音は2016年。響きの重心が下がり、表現の幅が広がりマーラー晩年の陰りがより深くなっている。ドビュッシーの「夜想曲」とバルトークのオケコンも超名演だ。ロッテルダム・フィルが第一級の実力を備えている証明と言えそうだ。
 現在フィラデルフィア管の音楽監督をつとめ、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場の次期音楽監督に指名されるなど、いまや欧米のオーケストラから引っ張りだこのネゼ=セガンにとって、2008年からのロッテルダム時代は、カナダからヨーロッパ、そしてアメリカへと飛躍していった大切な10年間。その間の仕事を集大成する大切な音源だ。


 「録音が良くなきゃツァラトゥストラじゃない!」という音楽ファン&オーディオ・ファンにオススメ。まず冒頭のオルガン。これはベルリンの聖マティアス教会で収録されミキシングされているので、思いのほかスッキリ。「オルガンはもっと迫力が……」なんてボリュームを上げると後で痛い目をみるかもしれない。ここはあくまで日の出前のピアニシモだ。最初のトランペットも控えめで、でも繰り返すごとにグングンと音圧を上げ、猛烈な全合奏のフォルテシモ。オケはベルリン放送のスタジオ収録だが、低音部を十分に鳴らした分厚い響き。バスドラの圧力が猛烈で、これに金管と木管の高音域が被さり、その響きからヴァイオリンの高音が抜け出してくる。「こりゃヤワなトゥイーターじゃもたないかも」と、唸るように迫ってくる音圧にダジタジだ。ただし誤解してほしくないのは、けっしてオーディオ最優先&音楽置いてきぼりの録音ではないということ。今注目の指揮者ウラディーミル・ユロフスキの描き出す強烈なダイナミックレンジ・サウンドを、まず“音楽ありき”で無駄な小細工なしにとらえたペンタトーンの録音技術に拍手を贈りたい。「ツァラトゥストラ」のほかに、マーラーの交響曲第番2番第1楽章の前身となる交響詩「葬礼」と「交響的前奏曲」を加えるなど、プログラミングも凝っている。ひと癖ある指揮者の面目躍如だ。
※今回はDSDで試聴しました。


 鮮やかなテクニックで颯爽と弾ききったカプリースもいい。輝かしい音色でヴァイオリンの魅力を聴かせてくれる演奏も素敵だ。でも、アウグスティン・ハーデリッヒの弾くヴァイオリンのように、一つの音、一つのフレーズにこれほどの意味をもたせたカプリースは滅多に聴けない。テクニックは抜群なのに、それを感じさせないのだ。彼の表現があまりにも強烈で、それが矢のように聴き手の心を射貫いてしまうからかもしれない。彼の音色は甘くない。高音域はピーンと緊張の糸を張ったように引き締まって、ひやっとするような光を放っている。G線には挑みかかるような強靱さがある。そして、音色、強弱、フレーズの伸縮、間合い、弓圧によるアクセントの強弱など、持てる表現技術を駆使して紡ぎ出す音楽は、表面的な美しさを超えた世界にあるように思う。15歳で負った全身の60%もの大火傷で生死の境を彷徨ったという経験を安易に結びつけるつもりはないけれど、それが彼の生き様の原点にあるだろうことは想像に難くない。弓圧をかけた低音域に心を揺さぶられ、硬質で鋭敏な高音域が心の奥にある哀しみに聴こえる瞬間、鳥肌が立つほどの感動が襲ってくる。

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