ヨーン・ストルゴーズ指揮
BBCフィルハーモニックが取り組む
ショスタコーヴィチ・サイクルの新作として、交響曲第2番と第5番が4月10日(金)に発売されます。第2番にはバーミンガム市交響楽団合唱団が参加しています。
ストルゴーズのCHANDOSでのショスタコーヴィチ録音は、当初、
ネーメ・ヤルヴィと
スコティッシュ・ナショナル管が80年代後半に取り組んだ交響曲全曲録音のやり残し(2番、3番、11番から15番)を埋めるのが目的でした。ストルゴーズは第11番から始め、コロナ禍をはさんで後期作品を完結。その出来栄えの見事さと評価の高さにCHANDOSは考えを変え、このコンビによる全集制作を決定しました。2025年10月には、交響曲第3番と、10代で聴いて音楽観が変わるほどの衝撃を受けたとストルゴーズが語る第1番を発表。新作に収録される第2番で「穴埋め」は完了。これからは、中期の作品群に取り組みます。
第2番は十月革命10周年を記念する作品。ストルゴーズは第3番とともに「前衛的な要素があり、歌詞の政治的なメッセージを二の次にして自由に創造性を発揮しているかのよう。アヴァンギャルド的な発想など、実にユニークで興味深い」と語っています。深淵を思わせる器楽の低域のざわめきから始まり、スケルツォ的な部分と短い緩徐楽章にあたる部分を経て合唱が導入されてレーニンを高らかに讃えて結ばれる構成は
ベートーヴェンの第九を思わせる“闇から光へ”の図式ですが、ここでは若きショスタコーヴィチの才気が感じられる細部の仕掛けを丁寧に描いて音楽が一面的になるのを避けています。
第5番の演奏時間はやや長めの49分弱。一つひとつのフレーズに言葉を乗せて語らせるかのような緻密な演奏です。ストルゴーズが「ドラマティックなエネルギーに満ちている」と語った第4楽章は、しかし快速爆演系とは一線を画し、煽らず、走らず、巧みに起伏を織り交ぜつつ最後まで密度と重量感のある音楽を押し通します。蓄積されたエネルギーを解き放つような巨大なスケールのコーダと、一面的な熱狂に陥らない冷たさを残した音色が印象的です。
ストルゴーズはBBCフィルについて、客演指揮者だったシナイスキーから受けた薫陶や、コンサートマスターのユーリ・トルチンスキー(元ボリショイ響コンサートマスターで、この2曲でもスケルツォでソロを聴かせる)の存在が「英国の楽団中でもショスタコーヴィチに最も強い存在」にしていると自負しています。また、BBCフィルの録音を30年以上も手がけるベテラン、マイク・ジョージのプロデュースは、壮大な音響でも濁らずにディテールを伝え、第2番の「ウルトラ対位法」と呼ばれるフガートや最後の迫力ある合唱、第5番での多彩な打楽器の響きもクリアな音で捉えています。
Photo by Marco Borggreve