東京出身のプロデューサー / 作曲家、
ausが新作『mere meer』を10月23日(金)に発表します。Purelinkのkindtree、ロンドンのSilver Ley(hp)、国内から
Noahらが参加。マスタリングは
Taylor Deupreeが手がけました。Silver Leyをフィーチャーした収録曲「presence」が公開されています。
本作の出発点にあるのは、環境が、声や記憶を通してどのような世界として知覚されるのか、という環世界的な問いです。ausは現実の場所を記録するのではなく、記憶や想像を通してひとつの環境を組み立てます。
アルバムの多くは、シンセサイザーと声を使って生まれたスケッチをもとに制作され、あたかもその場で偶然録音されたかのような歌や声が、さまざまな距離感と質感で置かれています。ausのシグネチャーともいえる海のイメージが電子ノイズで表現されるなど、環境音は人工的に組み立てられ、フィールドレコーディングの身振りを借りながら、その前提を静かに裏切っていきます。
そこに生まれるのは、現実の場所を再現したものではなく、場所についての記憶や想像がつくるフィクショナルな風景です。遠くの海面に乱反射する光、誰もいない建物、SNSを流れていく過剰に美しい異国の風景。断片的なイメージを眺めながら、いくつもの場所を通り過ぎていく感覚。
これまでのaus作品にあった有機的で人肌を感じさせる響きから距離を置き、『mere meer』では、人工的でありながらどこか生々しく、親密でありながら不在を感じさせる音像が広がります。淡いシンセサイザーのドローンに、遠くで漂う歌声や細かなサンプルが重なり、輪郭の曖昧な音の層を形づくっていく。その距離感のある美しさには、世界を遠くから眺めるような、ほのかな彼岸の気配が漂っています。
(c) Kazuhei Kimura