ミニ・レビュー
CF曲で流れまくった(3)や既発表シングル、深夜TV番組テーマ曲/新シングル(2)など、知られる曲以外もいー曲揃い。録音セット(日本〜NY)はいくつかあれど、熱情たぎるパワーもの、グルーヴもの、ユーモア見えるインスト、みな自然にバンドの音でいー。無論、彼の言葉も歌も。
ガイドコメント
前作『GOLDBLEND』から約2年半ぶりとなる待望のオリジナル・アルバム。2001年以降に発売された3曲に、最新曲「へへヘイ」を加えた4曲のシングルを含む全19曲入りの強力盤。
収録曲
01俺は知ってるぜ
アルバム『E』のオープニングを飾る骨太ロック・ナンバー。イントロの雄叫びをはじめとする尖ったヴォーカルや3コードを基調としたシンプルな展開など、もはやパンク・ロックの域に達している。全パートを奥田民生が演奏。
02まんをじして
キンクスからサザン・ロックまで、数多の洋楽エッセンスを取り込んだサウンドは、ディープな洋楽ファンなら確実にニヤッ。「力抜け」と「力出せ」を交互に繰り返す歌詞は、もはや達観の域にさえ達した、まこと味わい深い魅力。
03花になる
イントロなしで歌い始める手法でもって、いきなりビートルズ的な匂いを振りまくこの曲は、具体的にどこがどうなんてレベルを超越してビートルズ色濃厚。『太陽にほえろ!』風にアレンジされた別ヴァージョンともども必聴の傑作。
04花になる〜黄昏のテーマ〜
ヒット・シングル曲「花になる」をモチーフにした、インタールード的インスト・ナンバー。曲の雰囲気を往年の人気刑事ドラマ『太陽にほえろ』風に仕上げたユニークな1曲で、哀愁漂うオルガンが主旋律を奏でる。
05E
アルバム表題曲となったアコギ主体のポップ・ロック・ナンバー。アルファベットの言葉遊びを繰り広げる奥田民生らしい歌詞が特徴的。曲中に登場する“たばこのうた”とは、2ndアルバム『30』に収録されている「たばこのみ」のこと。
06モナムール
マイナー基調のムーディなナンバー。物憂げな前半から情熱的な終盤にかけてのドラマティックな展開と情感豊かな奥田民生のヴォーカルが聴きどころ。タイトル(Mon Amour)は“私の愛、愛しい人”の意。
07鼻とフラワー
リズミックなアンサンブルを特徴とするハード・ロック・ナンバー。スネア・ドラムの金属的な乾いた音色や随所で聴かれる多彩なエフェクト効果など、緻密な音作りが施されている。奥田民生得意の言葉遊びも全開。
08鼻とフラワー三世
タイトルが愉快なこの曲は、「鼻とフラワー」を『ルパン三世』のBGM風に仕上げたインタールード・インスト。恐山クルーの“シャバダバ”系コーラスが原曲のギター・フレーズを歌う点もおもしろい。ジャジィなフルートもオツ。
09御免ライダー
80年代ディスコ風ポップ・ロック・ナンバー。全編がサビのようなキャッチーきわまりないメロディ全開で、軽快なグルーヴと見事に融合した歌詞の世界観が疾走するバイクの映像を想起させる。ライヴで人気の高い1曲。
10先週の月曜日
「哀愁の金曜日」をモチーフにしたインタールード・インスト・ナンバー。グループ・サウンズ風テケテケ・アンサンブルと、原曲のギター・フレーズやメロディを奏でるムーグのコミカルな音色が魅力。
11みんな元気
ソリッドな8ビートが心地良いロック・ナンバー。バーで出会った外国人らと友達になって夜中に大騒ぎするという、痛快なパーティ・チューン。アルバム『FAILBOX』でも共演したチャーリー・ドレイトンが参加している。
12野球で言うと
若干こもったサウンドが特徴的なミディアム・ポップ・ナンバー。“きみ”に言いたいことを言おうと決心するが、会うたびに忘れてしまうという微笑ましく心温まるやさしい歌。徹底的に韻を踏む歌詞と独特のなごみサウンドが魅力だ。
13哀愁の金曜日
タイトルに反して、哀愁のいっさいないゴキゲンな8ビート・ロック曲。“危険だ、危険だ”と繰り返す微妙に意味深な歌詞と、アメリカの一流ミュージシャンらによるタイトなグルーヴが魅力だ。ライヴでも人気の高い1曲。
14来週の日曜日
「哀愁の金曜日」をモチーフにしたインタールード・インスト曲の続編。「先週の月曜日」同様、GS風テケテケ・アンサンブルをバックにムーグが原曲のメロディを奏でる。わざと音をハズすなど、遊び心も忘れていない。
15家に帰れば
印象的な響きのギターで始まるミディアム・ロック。一日を終え一人暮らしの部屋に帰って床に就くまでを綴った歌で、微妙な侘びしさとしみじみとした空気感が絶妙だ。奥田民生の味のあるヴォーカルも魅力的。
16CUSTOM (JPNバージョン)
メッセージ・ソングらしいメッセージ・ソングを歌わない彼が歌ったからこそ沁みてくる、心中吐露ロック・バラード。バックの演奏陣を含めグッと来ずにはおれない力強い名演。歌い手としての彼の力量も思い知らされる名曲。
17ヘヘヘイ
レッド・ツェッペリン・テイストをちりばめたバンド・サウンドに乗せて、「平次の投げ銭」と歌われる痛快曲。語呂合わせ連発の人を食った歌詞は、彼の持つ“赤塚不二雄イズム”が全開になった証。終始骨太なサウンドも最高。
18The STANDARD
メロトロンのビートリッシュな引用も秀逸なロッキン・バラード。ラヴ・ソングらしからぬ、“それはそれとして”なる言い回しが四方に放つオリジナリティと説得力。巷にあふれる内容希薄なラヴ・ソングに食傷気味なアナタに。
19ドースル?
アルバム『E』のラストを飾る壮大なロック・チューン。曲の冒頭とエンディングの野太い「知らねぇ」というフレーズが最大の聴きどころであり、楽曲に深みを与えている。曲、詞ともにきわめて完成度の高い1曲。