スチャダラパー『あにしんぼう』発売記念 スチャダラパー×細川 徹×荒川良々 鼎談

スチャダラパー   2016/04/28掲載
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 最新ミニ・アルバム『あにしんぼう』をリリースしたスチャダラパー。『あにしんぼう』にはスチャダラパーが音楽を手がけ、ANIが俳優として出演した舞台〈赤塚不二夫生誕80周年+男子はだまってなさいよ!10 『男子!レッツラゴン』〉のテーマ楽曲「レッツロックオン」「再見Adios」も収録されています。赤塚不二夫の漫画『レッツラゴン』を原作にした同舞台の作・演出を手がけた細川 徹と、同作に出演しスチャダラパーとも親交の深い荒川良々に集まってもらい、座談会を敢行。お互いの印象や演劇と音楽の表現について語ってもらっているはずが、話はいつしか脱線し……!? スチャダラパーが表紙を飾る雑誌「CDジャーナル」2016年5月号の巻頭インタビューと併せてお楽しみください。
――スチャダラパーと細川さんの出会いは、〈スチャダラ2010〉(1996年に上演された宮沢章夫演出作品)から?
Bose 「そうなんだけど、当時は細川くんは宮沢さんを中心にネタをたくさん出す人の中のひとりって感じだったので全然覚えてない」
細川 「ほとんどしゃべってないですもんね」
SHINCO 「その時採用されたネタってなんだったか覚えてる?」
細川 「“肩にワシを乗せた男”ですかね」
Bose 「あー!サウナの中で温水洋一さんが肩にワシを乗っけてるっていうね」
荒川 「今とやってること全然変わってないですよ。〈あぶない刑事にヨロシク〉*でもカラスが出てくるし」
* 2016年4月14日〜24日に上演された細川 徹演出作品
SHINCO 「なんも変わってない(笑)!」
細川 「僕は当時まだ大学生で、スチャダラパーは憧れの存在だったんですよ。部室ではだいたいスチャダラかフリッパーズ・ギターがかかってましたから」
ANI 「しゃれた部室だねぇ」
Bose 「じゃあ、早くから宮沢さんに可愛がってもらってたんだね。細川くんと直接交流を持つようになったのは、SHINCOシティボーイズの音楽をやった時だね*
* 2006年上演の〈シティボーイズミックスPRESENTS マンドラゴラの降る沼〉。細川が作・演出を手掛け、SHINCOが舞台音楽を担当した
荒川 「SHINCOさんが遅刻した時ね(笑)」
SHINCO 「ゲネプロに音楽が間に合わなくて、大竹(まこと)さんが目も合わせてくれなくなったっていう」
Bose 「そのあとに、細川くんがやってる舞台のシリーズ〈男子はだまってなさいよ!〉に僕が出演させてもらって*。もちろん、それ以前から大人計画なりシティボーイズなりは観に行ってるんだけど」
* 2009年上演の〈男子はだまってなさいよ! 6『男子はだまってなさいョ! 全員集合』〉に、皆川猿時大堀こういちらとともにBoseがキャストとして出演
細川 「ANIさんには、この前の〈男子!レッツラゴン〉にご出演いただいて。なので、バラバラには話す機会あるんですけど、3人揃ってっていうのは……今日が初めてじゃないかな?」
Bose 「いやいや、その前にもありますよ!〈男子はだまってなさいよ!7『天才バカボン』〉の時も音は僕らがやったから。それは6年ぐらい前ですよね」
細川 「たまにお会いしてしゃべったりしてるだけでは、どんな人となりかは詳しくわからないじゃないですか?Boseさんに出ていただいた時、稽古ではBoseさんが一番“もう1回やろう!不安だからもう1回確認したい!”って言うんですよね。ミュージシャン呼んだのに(笑)」
全員 「(爆笑)」
細川 「ミュージシャンって、1回通して“こんな感じでいいんじゃない?”って感じかと思ったら、Boseさんはまったく違いましたね。他の役者は休憩しようって言ってるのに、率先して“もう1回やろう!”って」
Bose 「だって一番不安なんだから。もし足を引っ張るとしたら自分じゃん?それこそ皆川さんなんかはなんとでもなるだろう的な感じでやってるんだけど、それじゃこっちは困る!って」
細川 「そういう意味では、SHINCOさんはイメージ通りでしたね(笑)。で、ANIさんも時間通りに来ないかと思ったら、ちゃんと来るんですよ」
ANI 「時間通りに来るだけですよ(笑)」
細川 「まあ、来たら来たで稽古場にあった漫画『ドカベン』を読んだりしてるんだけど(笑)。もっとANIさんは適当にやろうとするかと思ったら、意外にちゃんと稽古してくれて。だけど、それが本番に違うことになっちゃったりするのがおもしろかったですね」
――同じステージ上で演じるものではあっても、音楽のライヴと演劇ではアプローチがまったく違いますよね。
Bose 「芝居に出てみて不思議だなって思ったのは、演劇は客に一切干渉しないっていうことなんですよね。僕らは何かあったら客に話しかけてもいい状態でステージに立ってることしかないから、その状況が不思議すぎて」
SHINCO 「客席に知り合いとかいるのに、いじらないんだ?っていうね」
Bose 「そうそう。そうやって干渉しないまま進行していくのが面白いなって思いましたね」
細川 「以前スチャダラパーのライヴを観に行った時に思ったんですけど、コントって笑わせるまでに段階がいるじゃないですか?だけど音楽のライヴは出てきてすぐにバーンと一気に客のテンションが盛り上がるんですよね。それがうらやましくてうらやましくて。芝居で徐々にやっていく感じが、ちょっと馬鹿らしくさえ思えてきちゃうんですよ」
Bose 「あー、なるほどね。まあ音楽ではヒット曲があるけど、舞台には“ヒットコント”ってないもんね。また“ヒットコント”みたいなのがある舞台はカッコ悪そうだし。そういえば、ANIと良々は〈男子!レッツラゴン〉で共演してるけど、僕は良々とは芝居で一緒になったことはないんだよね。だから、良々が真面目にやってるところを見たことがない」
荒川 「真面目ですよ〜」
細川 「舞台では真面目だよね?私生活はそうじゃないかもしれないけど」
――良々さんとスチャダラパーの出会いは?
荒川 「僕は一方的にスチャダラパーが好きで、もともとCDとかレコードを買ってて。地元にいた頃、スチャダラパーが佐賀の学園祭に来た時に観に行ってるんです。その時、ライヴが盛り上がりすぎて体育館の床が抜けちゃったんですよね」
Bose 「そうそう!あわや大事故になるところで。これはヤバい!って思ってライヴも止めてね。でも、時代かもしれないけど、その後にちょっと下がったところにお客さんが移動して、またライヴが再開するっていう。そんなこと今じゃありえないでしょ!」
SHINCO 「それからしばらくして、良々と実際に知り合ったのは、青山のMIXとかで遊んでる時かな?」
ANI 「あとは恵比寿のMILKとかね。それに良々は映画『ピンポン』で共演したARATA(井浦 新)くんつながりで、REVOLVERとかおしゃれな界隈と仲良かったんだよね」
Bose 「夜遊びしてる時、良々は“悪々”になるんですけどね」
ANI 「九州男児っぽさが出てきて、サブカル女子に厳しくなる(笑)」
Bose 「テレビ観てる人は、まだ気づいてないんだよね。可愛い可愛いって言ってるけど、可愛くねぇっつの!(笑)」
――スチャダラパーが音楽を担当した〈男子!レッツラゴン〉のテーマ楽曲「レッツロックオン」と「再見Adios」は、ニュー・アルバム『あにしんぼう』に収録されています。「レッツロックオン」は、どのようにして作られていったんですか?
Bose 「音楽を担当すること自体は、1年前ぐらいには決まってたんだよね」
SHINCO 「でも(作りはじめた段階では)どうせ舞台の内容も何も決まってないだろうからって思ってたよね(笑)」
Bose 「うん。お互いに難しいなって思いながら、同時にスタートしてる状態だったから」
細川 「『レッツラゴン』ってすごく難しいじゃないですか?赤塚さんの原作漫画も難しいし、それを舞台にするのも難しかったんですけど、音楽と主題歌お願いしますっていうのもかなり難しかったと思うんです。しばらくしてスチャダラパーの皆さんが作ってくださった曲が届いて聴いてみたら、ゼロから作っていくのが難しいなっていうのを、全部さらけ出した状態の曲だったのでシビれたんですよね」
Bose 「たぶん細川くんも、そういうものを作るんだろうなって思ったからね」
細川 「そう。それって赤塚さん『レッツラゴン』描く時に、何も先を考えずにグワーッと描いていったのと同じで、すごい!と思ったんです」
Bose 「できあがった舞台〈男子!レッツラゴン〉も似たようなことをやってて。しかも、ずっと〈男子はだまってなさいよ!〉でやってきたバカが極まった状態で。演じてるみんなも馴れてるし老いてるしみたいな。それがオモロかったね」
――スチャダラパーの表現の中でも、笑いの要素やユーモアって部分は大事にしてる部分ですよね。
Bose 「もちろんそうです。宮沢章夫さんやシティボーイズがやってたようなことから影響を受けてるから、当然そういう要素は入りますよね。ただ最初はもっとああいう感じで笑えるように曲も作ってたけど、コンサートだとオチがはっきりした曲だと合わないっていうか、何回もウケないですからね。音楽って違うんだなって、やってるうちに気づいてきたというかね」
荒川 「そういえば、僕が福岡に住んでる頃、雑誌『ダヴィンチ』の表紙にスチャダラパーの3人がなっていたことがあって。山田太一とか別役 実について触れているのを読んで、そうなのかってスゴイ影響を受けたのを覚えてます」
Bose 「それは宮沢さんとか、先輩たちがやっていたことから教わったものですよね。考えてみれば、僕も表現の手段としてお芝居か音楽か、どっちをやっててもおかしくなかったような気もするんですよ。良々もミュージシャンであってもおかしくない感じするし。パンクバンドにこういうやついそうじゃん?」
荒川 「ベースでしょ?」
SHINCO 「まぁ、ナゴムにはいただろうね。体大きくてベース持って、よだれ垂らしてる怖い人」
ANI 「それ、ビバリじゃん(笑)」
荒川 「死ね死ね団とかね(笑)」
Bose 「僕らは一応ミュージシャンの枠にはいるけど、順番でいうとシティボーイズの次にいるって感じてて。だから大人計画や細川くんや良々とやってることが違うって気はしないんですよ」
ANI 「まあ、音楽のところにいても、あんまり知り合いもいないしね(笑)。ミュージシャンと話しても共通の話題がなくて。“あのギターがさぁ”って話になっても、ギターにまったく興味がないからさ」
SHINCO 「そうやって楽器の話になると、ポケットからスマホをすーっと取り出して……(笑)」
細川 「シティボーイズとかスチャダラパーのような先輩が前にいるので、わりと安心して、“この歳でもふざけてていいんだな”って思えるんですよ。バカらしさを残しつつ、大人が言わなきゃいけないこともラップにしてるし、それもちゃんと身の丈のことで言ってる。上手いこと年取った形でカッコイイことやってるから、いい見本だなって思うんです。たとえば3人で今後どうしてく?みたいな話はするんですか?」
Bose 「ない!演劇だと2年先まで予定が決まってると思うけど、僕らは1年後にやることも決まってないからね。毎年恒例の野音が終わると、事務所は1年後のことを言いだしたりするけど」
ANI 「12月にリキッドルームをやるのがなんとなく決まってるぐらいで、あとは来た仕事を粛々と(笑)」
SHINCO 「はい、やりまーす!って感じでね。細川くんは公演を終えても、またすぐ次の締め切りが来てるような状態じゃない?その合間にも、舞台美術どうします?とか、数々の打ち合わせがあるわけでしょ?本当に大変だなぁ、頑張れ!って思いながら見てます」
荒川 「昨日、稽古最終日だったから、じゃあみんなで飲みに行きましょうか?って話になったんですよ。だけど、細川さんだけ“ちょっとこの後、書き物の打ち合わせが……”って、ちょっとだけ顔だして、すぐ打ち合わせに出て行ってましたもんね」
Bose 「でも、細川くんはきっとどこかでヒットを飛ばすだろうね。今、映画も作ってるんだよね?」
細川 「はい、11月に公開になります」
ANI 「楽しみだよね。良々は、そろそろ大河ドラマの主役やってもいい頃じゃない?」
荒川 「仙台四郎とか?」
SHINCO 「最近のヒーローものみたいに、すごいシリアスな〈裸の大将〉とかやってほしいね」
荒川 「それ、松尾(スズキ)さんと一度話したことありましたね。現代を舞台にして、風俗行ったら断られたり、回転扉出られなくなったり」
全員 「(爆笑)」
Bose 「なんか悲しくなってくるな(笑)」
ANI 「でも、すげえリアル!」
Bose 「で、主題歌はあの曲のままでEDMになってて……ってそれはコントでやれるか」
ANI 「やっぱり“主演・荒川良々”は観たいよね。“原作・東野圭吾”、みたいな重厚なやつで。読んだことないけど(笑)」
Bose 「でもそれが、“脚本・細川 徹”の時点でダメでしょ!」
SHINCO 「“あー、そういう感じか?”ってなっちゃうもんね(笑)」
Bose 「やっぱり新しいシリーズを作らなきゃダメだよ。やっぱ寅さんみたいなのが生まれないと。〈宇宙刑事寅さん〉とか、いろんな要素を混ぜていかないと……となると、やっぱり〈裸の寅さん〉か?」
SHINCO 「〈ガリレオ寅さん〉じゃない?」
ANI 「〈永遠の寅さん〉とか。勝新の映画『兵隊やくざ』的なノリでね」
荒川 「すぐ醤油とか飲んじゃって、全然飛行機乗れないっていう」
Bose 「怒られるなー、その映画(笑)」
取材・文 / 宮内 健(2016年4月)
撮影 / 相澤心也
スチャダラパー
2016年4月20日(水)発売
『あにしんぼう』
初回限定盤 DDCB-94010 2,200円 + 税
通常盤 DDCB-14042 1,600円 + 税


[CD]
01. アニがボーズでシンコがアニで
02. レッツロックオン
03. ドキメキニシス
04. ジャンクリートコングル feat. ロボ宙
05. よさGなスキャット
06. 再見Adios


[初回限定盤DVD]
〈2015.12.13.TOKYO EBISU LIQUIDROOM ワンマンライブ「暮れの元気なご挨拶」より〉
01. CHECK THE WORD
02. A.K.A. ETC
03. 5W1H
04. ライツカメラアクション
05. ザ・ベスト
06. ジャンクリートコングル(Special Edit)
Bonus Music Video 中庸平凡パンチ
細川 徹
2016年秋劇場公開
「オケ老人!」
oke-rojin.com

[監督] 細川 徹
[原作] 荒木 源
[脚本] 細川 徹
[出演] 杏 / 黒島結菜 / 坂口健太郎 / 笹野高史 / 左とん平 ほか
荒川良々
2016年8月6日(土)〜8月29日(月)
シアターコクーン・オンレパートリー2016「ビニールの城」
www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/16_castle.html

東京 渋谷 Bunkamuraシアターコクーン
チケット発売: 2016年6月19日(日)
主催 / 企画・製作: Bunkamura
※お問い合わせ: Bunkamura 03-3477-3244(10:00〜19:00)

[作] 唐十郎
[演出] 蜷川幸雄
[出演] 森田 剛 / 宮沢りえ / 荒川良々 / 江口のりこ / 大石継太 / 鳥山昌克 / 柳 憂怜 / 石井愃一 / 金守 珍 / 六平直政 ほか


毎週火曜夜10時放送中
TBS系ドラマ「重版出来」
www.tbs.co.jp/juhan-shuttai
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