人の心を温めたい――コリアン・ジャズ・ディーヴァ、ウンサンから届いた愛のアルバム

ウンサン   2013/12/13掲載
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Woong San
“I Love You”
 日本でも多くのファンを持つ韓国を代表するジャズ・ヴォーカリスト、ウンサンが2年ぶり、通算7枚目となるアルバム『アイ・ラヴ・ユー』を発表した。全13曲中、彼女のオリジナル作品が6曲、ボブ・ディランレイ・チャールズトミー・ボーリンといったさまざまなアーティスト及び、母国の大人気曲もカヴァーした彩り豊かなラインナップで、ウンサンの幅広い音楽性も味わえる。日韓のプレイヤー陣によるプレイも秀逸で、互いの信頼関係をベースにした心地良い波動がアルバム全体をパッケージ。孤独な気分を解放するミラクルや、幸福感をアップさせるエッセンスも含んだウンサン・ミュージックは、どんな想いで完成させたのか。
――新作『アイ・ラヴ・ユー』は、ご自身の持ち味を強調した作品ではないかと感じました。
 「抑え気味の声で唄ったアルバムを続けて出してきましたが、ライヴにお越しになったお客様の中には、私がパンチの効いたパフォーマンスもすると知って驚く方もいらっしゃるんです。それで、新作は全体のバランスも考慮しながら、自分の色をたっぷりと盛り込みました。コンセプトはずばり“愛”です。いろいろな形の愛のお話をしています。昔、私が愛した曲や愛を感じた曲もカヴァーしました」
――アルバム・タイトルチューンの「アイ・ラヴ・ユー」は感情を揺さぶられる曲ですね。
 「ありがとうございます。昨年の秋に作ったのですが、正直、アルバムに入れるのはどうしようか迷っていました。でも、今年の5月、東京でライヴをした時に披露したら、多くのお客様から“今日のライヴで1番感動した”と言われ、それで今回、ピアノとチェロをバックにレコーディングしたんです。録音した時、私自身も気持ちがどんどん高揚し、スタッフの方たちも皆、涙ぐんでいたほどで……」
――曲が浮かんだ時からチェロの音色が頭に響いていたとか?
 「男性と会話をしているイメージの曲で、その男性がチェロなんですよ。演奏してくれている結城貴弘さんも男性ですが、ここではチェロの音そのものが男性であり、彼から“大丈夫だよ”と言われている、そんなシーンを再現しています」
――曲が出来た時に全体像が浮かんでいるんですね。
 「他の曲もそうですが、いつもメロディは自然に出てきますし、欲しい音もはっきりしています。後から手直しした曲はアルバムには入れませんね。カッコよくみせようとしているからスンナリ形にならないわけですし、だとしたら、私には必要のない曲です。正直な感情を大切にしたいので、メロディと歌詞が一緒に沸いた楽曲のみをレコーディングしています。その方がリスナーに届くと思いますから。ですから、たった1回でも構いませんから、アルバム1枚を丸ごとヘッドフォンで聴いて欲しいんです。そうすると、私が何を伝えたいのか、どんな愛の話をしているか細かなニュアンスもダイレクトに解ってもらえると思うんですよ」
――アルバム全体のサウンド面で意識したことを教えて下さい。
 「ここ数年、ラテン・ミュージックに惹かれていまして、その要素をもともと好きなブルースと融合させました。2曲目のオリジナル 〈ミスター・ブルース〉はその手法を使った楽曲です」
――それでサンタナの「スムーズ」もカヴァーしたんですね。
 「昔から好きな有名曲ですし、ジャズ・テイストにしたくて唄ったんですが、私がパフォーマンスする意味を明確にする為にもアコースティックな雰囲気に仕上げました」
――そうかと思えば、オペラの名曲にもチャレンジしていて驚きました。
 「ドニゼッティ作曲〈人知れぬ涙〜愛の媚薬〜より〉は、小学校2、3年生の頃に聴いて、歌詞の意味もわからず涙した曲なんです。私は子供の頃から大人びたところがありましたが、良い曲というのは年齢を問わず、胸を打つんでしょうね」
――この曲はイタリア語で唄っていますが、英語、スペイン語、韓国語の作品も収められていますね。通訳なしでインタビューが出来るほど日本語も流暢ですし、ウンサンの語学力には脱帽です。
 「スペイン語はラテン音楽に興味を持ったのがきっかけで勉強を始めました。イタリア語は〈人知れぬ〜〉だけ、なんとか(笑)。日本語に関しては、大阪出身の友だちが多いので関西弁がときどき出て、ちょっとヘンでしょ?(笑)」
――いえいえ、全く問題ありません。そういえば、アルバム・プロデューサーでサックス・プレイヤーの鈴木央紹さんも大阪出身でしたよね。
 「鈴木さんには長年お世話になっていて、今回もご尽力頂きました。 〈アシ・ケ〉や〈イエスタディ(2013ver.)〉などの演奏も素晴らしいのでぜひ、サックス・プレイも注目して欲しいです」
――ちなみに、今回のアルバムにはジャズのスタンダード・ナンバーが1曲も入っていませんでしたね。
 「“ジャズではないところでジャズを探す”というのもテーマのひとつだったんです。それも新作のポイントです」
――ところで、2013年はどんな1年でしたか?
 「アルバム『アイ・ラヴ・ユー』のレコーディング作業と同時に、私がプロデュースしたアルバムの制作もありましたのでとても忙しかったです」
――プロデュース?
 「実は、韓国で人気のコメディアン、イ・ドンウさんがある日突然、目が不自由になり、ラジオのお仕事だけになってしまったんです。その彼の番組に出演した時に、ジャズをシェアすれば彼は幸せになれるのではないかと思い“一緒に勉強しましょう”と声をかけました。以来、2年程、サポートしていたんですが、その成果が実り、今年の11月に彼のアルバムをリリースすることが出来ました。韓国では大評判となり、ご本人も第2の人生が開けたと喜んでいます。私は、音楽で他の人のサポートもしたかったので、とても嬉しく思っています」
――希望の光をプレゼント出来たのですね!
 「これからも音楽で人の心を温めてあげたいですし、それが出来たら何よりの喜びです。たとえば、私はステージ上から客席を見て、悲しんでいるような方がいらっしゃったら、気持ちを包んであげたいと、その方に向かって唄います。あくまでそのお客さんだけがわかるような視線を送りながらね。病気を抱えている方がお越しになった時は、その方に寄り添うよう、歌を届けています。勿論、華やかな舞台で大勢の観客の方に囲まれて唄うのも素敵なことですが、小さい会場であったとしてもお客様を癒してあげられたら、それが私の幸せであり本望なんです」
――では、最後に2014年のご予定を教えて下さい。
 「今年はライヴがあまり出来なかったので、来年は日本各地、さまざまな場所で唄いたいです。3月から名古屋を皮切りにツアーもスタートしますし、その後も小さい編成でいろいろな場所にお邪魔しようと思っています。皆さんとお会い出来ることを楽しみにしています」
取材・文 / 菅野 聖(2013年12月)
Woong San
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2014年3月24日(月)
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2014年3月26日(水)
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