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萩原健太、高田 漣ら登壇 ブライアン・ウィルソン公認映画『ラブ&マーシー』トークショー開催

ブライアン・ウィルソン   2015/07/30 14:24掲載
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萩原健太、高田 漣ら登壇 ブライアン・ウィルソン公認映画『ラブ&マーシー』トークショー開催
 ザ・ビーチ・ボーイズの中心メンバー、ブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)の栄光と苦悩の半生を、本人公認のもとに映画化したドラマ『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』(8月1日公開)の公開を記念したトークショーが7月28日(火)にタワーレコード渋谷店・B1F「CUTUP STUDIO」にて開催。音楽評論家の萩原健太、音楽家の高田 漣といった自他ともに認めるザ・ビーチ・ボーイズ・マニアが集い、本作の魅力についてたっぷり語り尽くしました。

 「最初に観た時はストーリーが頭に入らないぐらいでした」「今まで写真でしか見たことのない場面が動いてる! あ、動いてる! よく出来てるなーっていう感じで」(萩原)、「ビーチ・ボーイズのことをよく知っている方にとってはストーリーもご存じの話もいっぱいあると思うんですが、映像では見たことがないから、ドキュメンタリーを見ているような感じでした」(高田)と振り返った両者、ビーチ・ボーイズとの出会いについては、「僕は全盛期からは乗り遅れてるんです。ビーチ・ボーイズのアルバムを初めて買った1969年はそれこそ最底の時代(笑)。学校の友達は誰も聴いてないし、LPを貸して“どうだった?”と聞いても“インストの曲がよかった”とか……ビーチ・ボーイズはコーラスグループなのにそんなことさえ言われていた時代で。だから学校では他のアーティストの話題で盛り上がって、家に帰ってずっと聴いていました。ビーチ・ボーイズの評価が上がったり下がったりしながらも、最初が最底だったから、どんな時でもその頃よりはいいし、こんな映画までできて嬉しいんです」(萩原)。また、「僕は中学の頃から聴きはじめたんですが、父がヴァン・ダイク・パークス(『スマイル』のプロデューサー)と共演したこともあって、勝手に親戚のおじさんのような気持ちでいました。その頃は〈ココモ〉もヒットしてたし、自伝も出たりと、映画の中の80年代として描かれていた時期がまさに僕がファンになった頃の時代なんです」(高田)とか。続けて、「その頃ブライアンはビーチ・ボーイズには参加していないし、彼が初めてのソロ・アルバムを作って『ラブ・アンド・マーシー』もあったけど、圧倒的に売れたのはビーチ・ボーイズの方で、そういう皮肉はあったんですが……」(萩原)とも。

 「この映画はポール・ダノが演じていた60年代とジョン・キューザックが演じていた80年代が同時進行でパラレルワールドみたいに描かれるんですが、僕もリアルタイムで60年代のブライアンがどういう悩みを抱いて曲を作っていたなんて当時は知らなかったんです。80年代にどんな苦労をしてたのか知ってきた頃に同時に60年代の頃の悩みについて知ったり、この映画の描き方は僕にとっては納得がいくんです」(萩原)と語ると本作の再現の忠実性について触れ、「ブライアン・ウィルソンはロスのゴールド・スターというスタジオをよく使ってたんですけど、このスタジオはもうないんです。それでこの映画では再現したんです」と切り出しすと場面写真が次々とスクリーンに映し出され、「我々が見たことある写真っていうのは、後ろに写ってるこのカメラマンが撮ってる、間違いなくこの位置からのものなの。本当に芸が細かい!」など興奮気味に説明。

 また、ポール・ダノの演技コーチを担当したダリアン・サハナジャ(ブライアン・ウィルソンバンドのキーボーディスト)と本作について詳しく話したことがあるそうで、ピアノの鍵盤やベースの弦の抑える位置に至るまで詳しく教え、「彼は若いし最初はそんなにビーチ・ボーイズのことを知ってた訳じゃないんだけど、今回勉強してすごくハマったらしくて、映画ができる前に“ポール・ダノがすごくいい!”と聞いてました」(萩原)と、彼に期待を寄せていたとか。「ダノの演技がすごくいいんです。ブライアン本人は、かわいいと言えばかわいい人だけれど、どう受け止めたらいいのか分からない複雑さもある。ダノが演じることによってそういう内面がすごく分かりやすく伝わってくる」(萩原)。

ラブ&マーシー 終わらないメロディー

 この映画の大きな魅力として、「60年代と80年代という2つの時代を交互に描きながら、もうひとつ現実の世界として今でもツアーにまわっているブライアンがいるということがあって、3つの世界を同時に感じることができて、そこが面白いんです」(萩原)、さらに「本人に似てる似てないを超えて、次第に違和感なく入ってくるんです」(高田)と付け加える。

 映画を観る前に予習として聴いておくべき楽曲として、この映画に出てくる『ペット・サウンズ』から当時完成させることができなかった「スマイル」を挙げ、「66年〜67年あたりの楽曲は聴いておいた方がいいと思うのと、『ペット・サウンズ』のサウンドの何が画期的なのかというと、その少しのビーチ・ボーイズからの進化なんです。だから、『サーファー・ガール』や『オール・サマー・ロング』あたりのバンド黄金期のサウンドを聴いた上で映画の時代の作品に入っていくと映画の全体的な流れが分かりやすくなると思います」(萩原)とレコメン。

 さらに“仮想敵”としてのビートルズという存在については、「ビートルズの『ラバーソウル』に触発された作ったのが『ペット・サウンズ』でなんです。ビートルズがメンバー間で役割を分担して時代の先へ先へ行こうとしていたのに対して、ブライアンは、曲を書いてアレンジもしてプロデュースも全部ひとりでやっていて、アメリカ音楽のルーツに向かって内へ内へと突き進んでいく、時代と全く逆行する、自分達を見つめ直すような曲を目指していたんです。当時それはイケてたものではなかったと思うんです。でも、逆に言うと今聴くと時代を超えて評価することができる。当時、ブライアンはそれを作ろうとしてたんですよね」(萩原)と説明。「ビートルズ以降の音楽ってダビング芸術になって録音を重ね合わせる多層性に向かっていきましたが、ビーチ・ボーイズそれを同時にやろうとしてスタジオには人がどんどん溢れかえっていった。それはある意味、前近代的な撮り方なんですよね」(高田)との音楽的見地も。

 最後に、本作を通じて初めてビーチ・ボーイズやブライアンと出会うことになる観客に向けて、「僕たちマニアにとってはある種の納得と確認の作業だったりするんですが、初めての人にとってはもっと衝撃的かもしれないですね」(高田)、「そういう人の方が面白く感じられるのかもしれない。羨ましいです(笑)」(萩原)と語り、「ビーチ・ボーイズに影響を受けて、この時代はサーファーバンドが本当にたくさん誕生しました。でも、その皆が消えていってビーチ・ボーイズだけが残った。その意味は何なのかというと、明るいようにみえる曲の内側にはある苦悩や夏の夕暮れを思わせる切ない感覚とか、深い内省的なものが曲の中にあったからなんです。この映画を観ればその意味が分かると思います」(萩原)と締めくくりました。

ラブ&マーシー 終わらないメロディー

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