『ミッドナイト・マローダーズ』『ロウ・エンド・セオリー』『ザ・ラヴ・ムーヴメント』などヒップホップ・クラシックを世に送り出した
ア・トライブ・コールド・クエスト(A TRIBE CALLED QUEST)のMC、ファイフ・ドーグ(Phife Dawg)が3月22日に45歳の若さで急逝しました。同じグループの
Qティップ(Q-Tip)というカリスマ性にあふれたMCの影に隠れがちですが、捲くし立てるラップ・スタイルは楽曲の中でもアクセントになって活きています。
ア・トライブ・コールド・クエストの「JAZZ」「Buggin' Out」などの歌詞に“ズールー・ネイション”というフレーズが登場します。ズールー・ネイションとはヒップホップの開祖の一人である、
アフリカ・バンバータが1973年に結成した“非暴力”組織のこと。正式な組織名は“ユニバーサル・ズールー・ネイション”です。元々、ニューヨークで勢力を誇ったギャング、ブラック・スペード団の指揮官であったバンバータは、旅行で訪れたアフリカの生活に感銘を受け、ブラック・スペード団を平和組織へ改革していきます。その結果生まれたのがユニバーサル・ズールー・ネイションです。また1973年11月12日にはバンバータがDJ、MC、グラフィティ、ダンスの4大要素を総じてヒップホップと命名。ユニバーサル・ズール・ネイションもヒップホップを通して存在を社会的・文化的に昇華させていきます。
ユニバーサル・ズールー・ネイションの精神性を共有しているアーティストにア・トライブ・コールド・クエスト、
KRSワン、
パプリック・エナミーらが挙げられます。2014年には
リル・ウェイン、
ナズ(Nas)らがメンバーに加わったことをQティップが発表しています。この背景には2014年に起きた黒人青年が警官に射殺された事件などが考えられ、ヒップホップ・アーティストたちが自らのアティテュードとしてユニバーサル・ズールー・ネイションと連帯していったのではないでしょうか。
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