【特別鼎談】PAGE×NAOTO×クボタマサヒコ──次世代を取り巻く音楽環境の現在と未来

PAGE   2013/02/13掲載
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 10代のミュージシャンを対象とした夏フェスイベント〈閃光ライオット2011〉でグランプリを獲得し、「You topia」で17歳にしてメジャー・デビューを果たしたPAGE。新作となるシングル「エクスペクト」では、パワー・ポップ的なアプローチの楽曲に、自らの未来に対する焦りや不安も含め、現在の感情を瑞々しく描き出す。そしてこの楽曲は、ベースに元ビート・クルセイダースのクボタマサヒコを、ギターにはORANGE RANGENAOTOを迎えた布陣で制作された。本稿ではPAGEと、音楽の世界での先輩であるクボタマサヒコ / NAOTOとの鼎談を通して、PAGE世代を取り巻く音楽的な環境も含めて、ざっくばらんに語ってもらった。
「16歳で詞を書いて曲を書いてネットに発表してっていうのを全部一人でやってたっていうのを聞いて、もう“理解ができない”って(笑)」(NAOTO)
──まずシングル「エクスペクト」はどのように構想を?
 PAGE 「僕はアニメが好きなんで“アニメの曲をやりたい”って話をずっとしてたら、“『銀魂』の主題歌の話があるけど”ってオファーを貰って。そこで、この曲のサビをまず作って、そこから肉付けしていって……って感じでしたね。完成型にしていく段階で、やっぱり上手い人に弾いてもらいたいって思いがあったんで、クボタさんとNAOTOさんに参加していただいて」
──今回は1stシングルとは趣が変わってパワー・ポップ的な楽曲展開が印象的でした。
 PAGE 「もともと、ポップ・パンク的な曲を今回はやりたいなと思ってて」


 クボタマサヒコ(以下、クボタ) 「デモを聴いて“初期のビート・クルセイダースっぽいな”って思ったんですよね。だからPAGEがやりたいことがすぐ分かって。ヒップホップ的な前作からの振り幅も含めて、PAGEはこんな曲もできるんだって感心したし、純粋に良い曲だなって。かつビークルも過去に『銀魂』の主題歌をやらせていただいたんで、世代が一周して、またお仕事が回ってきて光栄だなと(笑)」
 NAOTO 「1stシングルの〈You topia〉とは印象が違うけど、ティーンとしてのリアリティがある素直な曲ですよね。PAGEのことはデビュー前から知ってたんだけど、16歳で詞を書いて曲を書いてネットに発表してっていうのを全部一人でやってたっていうのを聞いて、もう“理解ができない”って(笑)」
 クボタ 「自分たちの世代から考えると驚きだよね。バンドだったら協力し合ってできるけど、一人っていうのは凄いし、それが今っぽいなって」
 NAOTO 「発育が凄い(笑)」
 PAGE 「嬉しいっス(笑)」
──リリック的には、全体にやはりティーンならではの瑞々しい、悩みも含めた心持ちが形になっていると感じました。特にカップリング曲「からっぽな空の下で」は、PAGEくんの現在の心情の描かれ方が本当に印象的で。
 PAGE 「〈エクスペクト〉はサビが結構直接的になってしまったんで、他の部分は抽象的な構成にしていきましたね。直接的な内容よりは、抽象的な詞の方が自分の曲にはふさわしいと思ってるんで。パーソナルな部分が直接的に書かれた曲を聴くと、その人の人生をそのまま直接見るような気持ちになるんですよね。でも、自分としては曲は聴いた人なりの色や風景が浮かぶのが大事かなと思ってるんで、それを表現するためには、自分の曲ではあまり具体的な内容より、抽象性を高めた方がふさわしいかなって」
 クボタ 「確かにティーンの衝動っていうよりは、もっと斜に構えた内容だけど、それが面白いですよね。いわゆる中2病みたいな風に捉えられるかもしれないけど、それも今の音楽には必要なんじゃないかなって。変に無理もしてなくて、取っつきやすいし」
 NAOTO 「ちょっと不思議な感じですよね。ティーンでパンク的だともっと衝動的だったりするかなとも思うけど、結構、達観してるっていうか。そこが独特だし、歌詞だけだと年齢不詳な感じがありますよね(笑)」
──楽曲を制作のする中で、PAGEくんにはどんな印象を持たれましたか?
 クボタ 「元になる楽曲がすでに固まってたんで、音飾や音色だったりで、どう肉付けするかっていうのを、みんなで話し合いながらアット・ホームにまとめていった感じですね。ベースはベーシックだったんだけど、ギターは結構いろんなフレーズを録ったよね」
 PAGE 「NAOTOさんに弾いてもらうんですけど“……こういうのじゃないんですよね”って(笑)」
 クボタ 「PAGEの説明も抽象的なんだよね(笑)」
 PAGE 「イメージを言葉にできなくて、上手く説明できなかったんで……。何度も弾いてもらってるのに、それでもダメ出ししちゃったのが心苦しかったですね。言いながら“うわー、ORANGE RANGEに注文付けちゃってる……”って(笑)」
 NAOTO 「でも、僕が出した案に対して、迷わないでそういうジャッジがちゃんとできるのがすごいし、すでに思い浮かぶ像があるのがしっかりしてるなって。僕が17歳だったら絶対迷っちゃってできなかった」
 クボタ 「それがやっぱり曲が書けるということなのかなって。リリックとリズムだけが浮かぶんじゃなくて、メロディのイメージも自然に楽曲に対して解釈できてる。楽曲に対して、点じゃなくて縦軸と横軸で考えられてるというか」
「今は手段が多い分、出てくる人も多くなるけど、結局内容が良くないとすぐに淘汰されてしまう。それは昔も今も一緒かなって」(クボタ)
──ちなみに、PAGEくんとしてはバンドをやってみたいって気持ちは?
 PAGE 「やってみたいですね。一人だと寂しいし(笑)。でも、一緒に曲を作ったり、歌詞を考えたりみたいなコラボ的なものだと、意見が対立したときに折れちゃいそうなんで、そこは一人で作るか、それか丸投げかのどっちかが良いですね」
 クボタ 「〈閃光ライオット〉も、他はみんなバンドなのに、一人だけソロ・ラッパーとして出てるのもすごいなと、かつての審査員として思いましたね。孤独を背負ってるというか。僕もNAOTOもやっぱりもともとバンドだったから、PAGEみたいにツルまないで、一人でできてしまうエネルギーが」
 NAOTO 「音楽をやりたいっていう表現欲求の部分では、根は僕らが10代の頃と同じだと思うけど、僕らの頃はそれこそゲリラ的に路上みたいな場所しか表現できる場所がなかったけど、今はネットで作品を発表できて、プロモーションもそこでできるっていうのが面白いですよね。僕らの頃とは違うアイディアがあるだろうし、それを活用できる場の選択肢も広がってるんでしょうね」
 クボタ 「ネットでのアイディアという意味では、ネット・レーベルのMaltine Recordsのtomadくんらが立ち上げた、クラウド・ファウンディングの〈PICNIC〉が、ちゃんとお金を集めて、CDリリースまで至ったっていうのも最近面白いなと思ったことで。だけど、PAGEはまた違って、ネットがルーツにあるのに、メジャー・レーベルで活動するっていう、メイン・ストリームの方法論を展開したわけで、それも逆に新鮮に映りましたね。かつ、そういった、いろんなモノや方法論が繋がっていけば、また新しい波が生まれるとも思うし」
──今お話に出たMaltine Recordsはネットを中心に活動するレーベルですが、ティーンが活動の場にネットを ── それはPAGEくんも同様ですが ── 選ぶ場合が多いですが、それはどれぐらい注目してますか?
 クボタ 「周りにも知り合いが多いので、チェックできる範囲では見てますね。LOW HIGH WHO?のフィメール・ラッパーdaokoちゃんとか、ネットで聴いて“これで15歳か”って思わされたし。しかもみんな自然にそれをやってるなって思いますね」
──クボタさんやNAOTOさんの世代にとっては、ネットという音楽発表の場は、今ほど確立はされていなかったと思いますが、そういう場があることを羨ましいと思いますか?
 クボタ 「今は手段が多い分、出てくる人も多くなるけど、結局内容が良くないとすぐに淘汰されてしまう。それは昔も今も一緒かなって。でも、ビークルをやってるときに、Youtubeとかに映像をアップしたくても、レーベルからNGが出てしまうのは、アーティスト側としては悔しかったですね。何回交渉してもそれはダメで。でも、今はそういう部分も変わってきてますからね」
 NAOTO 「ネットによって、洗練はされていないけど、単純に面白かったり、聴いたことがないような音楽が出てくるのが楽しみですね。今まではそういった音楽をレコード会社がすくい取れなかったり、規制してただろうけど、そのカウンターが出てくるかなって。かつ、そういう音楽を一部のマニアックな人だけじゃなくて、ネットでは誰でも並列に聴けるっていうのは、希望を感じる部分ではありますね」
──逆に、ネットやDTMが無かったら、PAGEくんの活動ってどうだったと思いますか?
 PAGE 「たぶん音楽やってないでしょうね。ネットあっての僕だと思うんで」
──ライヴハウスやクラブといった“リアル”の現場には出なかった?
 PAGE 「ライヴハウスで活動するってことすら、ネットがなかったら知らなかったと思うんですよね。僕の場合、なにもやり方が分からなかった中で、ネット・ラップに出会ったから、そこを活動の場にしたってだけなんで。だから、現場現場って言われても、“現場って何?”って感じだったりもして」
──いきなり、ディープな話になって恐縮ですが、やはり音楽産業は現在非常に厳しい状況になっているし、それはPAGEくんも知っていることだとは思うんですが、その意味で“音楽で食べていきたい”って思いますか?
 PAGE 「メロディや歌詞だけじゃなくて、その時代に求められる曲を作っていくことや、単に続けていくこと自体も才能のひとつだと思うし、それらが自分にあるかは正直分からないけど、それでも音楽以外の仕事はやりたくないですね」
──音楽で食べている先輩からはどういったアドバイスがありますか?
 クボタ 「仕事って意味でいうと、商売として成り立たないといけないから、作る才能と同時にそれを商品にする才能も必要なのかな。でも、どれだけ人を楽しませるとか興奮させるかっていう、その最大公約数を見極められればいいんじゃないでしょうかね。PAGEの歌詞を聴いて、同世代が共感するかも知れないし、30、40代の大人が感動するかもしれない。その辺の嗅覚を持っていられれば良いのかなって。ビークルはかなりマーケティングをしていたグループで、“この辺のターゲットに楽しんでもらおう”とか、結構考えてたんですよ。“どれぐらい下ネタ入れたらこの層は喜ぶだろう”とか(笑)。それが自然にできる人もいるし、ビークルみたいにリサーチして見極めるグループもいる。そのラインをPAGEが嗅ぎ取れたら、ずっとそれで食べていけるんじゃないかな。根本の音楽的才能はすごくあると思うから。あとは、いろいろあってもふて腐れないことかな(笑)」
 NAOTO 「自分自身から発信する音楽の才能も、ユーザーの共感を呼ぶことも、それらがリンクして才能だと思いますね。それはスゴく難しいことだと思うけど」
「変わったことをする奴が、普通の枠を超えていって世の中を変えると思ってるから、僕はそれを信じて音楽を作っていきます」(PAGE)
──PAGEくんは自分の音楽を向けてる対象ってありますか?
 PAGE 「まったくないですね。曲はホントに自分の憂鬱のはけ口だから、誰に向けてっていうのは、まったく考えてなくて。でも、そういう話題をブログとかツイッターに書くと、中2病とか“構ってちゃん”とか言われるけど、音楽にするとそれをみんな何故か素直に受け止めてくれるから、曲で不幸自慢をしてるって感じですね。ちなみに、クボタさんとNAOTOさんは音楽を辞めたいと思ったことはありますか?」
 クボタ 「商業的な意味で音楽を辞めるのと、個人的に辞めるのは違うと思うんだけど、個人的な部分ではこれからも絶対にないと思う。商業的な意味では、“売るためには”みたいな部分には時々首をかしげることもあるけど、それすら楽しもうとしてるかな。リスナーがいる限りは続けられると思うし、誰かの役に立ってるなって思えるのがモチベーションというか」
 NAOTO 「僕の場合、どっちかっていえば現実から逃避するために音楽をやってるし、音楽リスナーとして何かに感動して、そこからインスパイアされて音楽を作るタイプだから、音楽に感動しなくなったときに辞めるのかなって。それは自分でも怖いですね」
──大人チームからPAGEくんに訊きたいことはありますか?
 クボタ 「例えば5年後に、紅白や武道館に出たり、きゃりーぱみゅぱみゅよりも人気が出たとして、不満や鬱屈がなくなって、なにも不安がなくなったときに、作品を作る原動力は残ってると思う?」
 PAGE 「今の時点で、結構、何かに感動することがなくなってて……」
 クボタ 「早いな(笑)」
 PAGE 「それが悩みでもあって。メジャーが決まっても感動しなかったし、有名人が目の前にいても、そんなもんかって。そういう自分も嫌なんですよね。何やっても楽しくないって思ってしまう。だから不満も感動もなくなったとき、どうするんだろうっていうのは、ちょっと考えてしまいますね。正直、僕が20代になったときに音楽産業ってあるのかなって不安もあるけど、でも、今は今を生きるのに精一杯なんで、その気持ちも曲にしていければなって思いますね」
 NAOTO 「でも、そういうふうに音楽産業があやふやだから、誰にも媚びない音楽ができると思うよ」
 クボタ 「一般的なスタイルがなくなったときに、PAGEみたいにスタイルがある方が強いと思う」
──最後に、PAGEくんにはどういう存在になっていってほしいですか?
 NAOTO 「キャラクターがあるから、矢沢永吉バリの存在になって欲しいし、それぐらいの器もあるんじゃないかなって。そこまでなってほしいですね。ロックンロールじゃなくて、ラップの分野でそうなってほしい」
 クボタ 「音楽の方向性はどんどん変わっていっていいと思うんですよ。それは彼のキャラクターがしっかりしてるからそう思えるし、PAGEという記号の上で、いろんなことをやってほしいですね」
 PAGE 「やっぱり人と同じことをしたくないっていうのはあるし、自分のスタイルは今までにないなって思ってますね。変わったことをする奴が、普通の枠を超えていって世の中を変えると思ってるから、僕はそれを信じて音楽を作っていきます」
取材・文/高木“JET”晋一郎(2013年1月)
撮影/SUSIE
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