今年6月にリリースされた、
フラワー・トラベリン・バンドとオートバイ50台の爆音とのコラボを実況録音した「
大阪万博お祭り広場・夜のイベント『ビームで貫通』」をはじめ、数々の興味深い作品を世に放ってきた電子音楽レーベル「オメガ・ポイント」と電子音楽からエスニックまでさまざまな作品を発表する「エム・レコード」との合同リリース・シリーズより、
ジョン・ケージ、デイヴィッド・チュードア、
一柳慧らによるコンサートの生録音を収めた『Appearance/Music for Solo Performer: Compositions by Toshi Ichiyanagi and Alvin Lucier, featuring John Cage and David Tudor』が1月30日(金)にリリースされることが決定しています。
本作は、人間の脳波を用いた最初の音楽作品として知られる
アルヴィン・ルシエの「一人の演奏家のための音楽」を60年代のジョン・ケージ一派が実演した音源と、一柳慧の傑作「アピアランス」のマスターテープ音源を二本立てで収めたもの。
音源は、一柳慧の自宅で発見されたもので、1967年に米ミシガン州ホープ大学で行なわれたコンサートを収録。60年代中盤は、ケージとチュードアが電気的に増幅したパフォーマンスサウンドを開発していた只中であり、このホープ大学コンサートでも容赦のないアンプリファイド・パフォーマンス技法による爆音が炸裂。ルシエ「一人の演奏家のための音楽」(1965年)の、現在、耳にできる中では最も作曲年に近い録音で、今回が世界初公開となります。1982年にルシエとポーリン・オリヴェロスが「Lovely Music」から発表したものとは全く趣の異なる、ケージ一派の電気的リアリゼーション技術が施された爆音演奏が味わえます。脳波の実演奏はチュードアが担当。
もう一方の一柳慧の「アピアランス」(1967年)は、かの『Source Magazine』誌上の巻頭で発表された当時の最新曲で、生演奏のエレクトロニクスとアコースティック楽器を混合した爆裂演奏にはケージも参加。1967年の演奏自体は、2006年に発表されたオメガポイント盤と同一内容ですが、本作で使用したソーステープはマスターテープと考えられ、音質が大幅に向上。さらに2006年版にはない聴衆の反応も収録された長尺版となっています。
今回のリリースにあたり、オメガポイントによる序文(テープ発見の経緯を解説)、一柳慧の「アピアランス」2006年解説の再掲、ルシエ作品の研究家で生前より作家と交流のあったサウンドアーティスト佐藤実による解説が付属。なお、ジャケットの図版は「一人の演奏家のための音楽」のセット図が使われています。