ニュース

町山智浩がアメリカの現状を解説、映画『ザ・イースト』トークショー付き試写会開催

2014/01/27 16:05掲載
はてなブックマークに追加
町山智浩がアメリカの現状を解説、映画『ザ・イースト』トークショー付き試写会開催
 1月31日(金)より公開となる、境テロリスト集団に潜入した女性捜査官の葛藤を描いたスーパー・リアル・フィクション・ムービー『ザ・イースト』。公開に先駆け、本作で描かれている“アメリカの現状”をよく知る人物、映画評論家の町山智浩によるトークショー付き試写会イベントが都内で行なわれました。

 イベントではアメリカに関するテーマをもとにトークを展開、さらにtwitterで質問を募集し、その場で生解答するという企画も行なわれ、「テロリストたちの資金力はどこにあるのか?」という質問については、「人権や環境問題でテロやジャミング(行動を邪魔する行為)をしている人たちへは大手企業もけっこう資金を提供してる。ジョン・レノンとオノ・ヨーコも資金を提供して国に目をつけられてた」(町山)とのこと。

 イベントの最後には、「『ザ・イースト』は正義か悪か、という点をはっきりと描いていません。テロ行為を否定するような描写はなく、でもその報復もあることをちゃんと言っています。資本主義になっている今だから価値のある映画ですね」(町田)と、コメントを寄せています。

ザ・イースト




映画『ザ・イースト』
町山智浩トークショー付き試写会イベントより


 町山 「こんにちは。今日は昼間からのイベントですけど、みなさん仕事をさぼってきたんですか(笑)? お集まり頂きありがとうございます。この映画はブリット・マーリングとザル・バトマングリが作った作品ですが、ブリットは自分で脚本を書き、主演女優もやって、見た目も素晴らしいという方です。アレキサンダー・スカルスガルドとのラブ・シーンも自分で書いてるからね! スカルスガルドはいつも服を脱いでるんですけど、今回も脱ぎますね。お父さん(ステラン・スカルスガルド)は悪い奴の役ばっかりやってるんですけど、彼はイケメンだしよく脱ぐし、ヒュー・ジャックマンを継ぐ俳優ですね。エレン・ペイジも出てますけど、彼女は童顔だよね(笑)。彼女の役も今のアメリカを投影している役で、よくできた映画だなと思ってます。映画の中の男女関係については僕の一番苦手とする部分なので、今日はそれ以外についてご紹介できたらと思います」

――カイロン社爆破事件

 町山 「環境テロは実は2番目くらいによく起きているテロ活動なんですね。僕はサンフランシスコのエメリービルに住んでたんですが、近所で爆破が起きたんです。警察もたくさん来たんですけど、それがカイロン社爆破事件ですね。この町では政府の依頼でインフルエンザのワクチンを作っていたんですけど、そのワクチンを人間に最も近いDNAを持つチンパンジーから作っていたんです。その実験に反対して起きたテロ行為でした」

――トレイン・サーファー〜ダンプスター・ダイビング

 町山 「映画の中で主人公がごみ箱に入っていたピザを食べたり、無賃で電車に乗り込んだりしているシーンがありますが、これは今ひとつのムーヴメントになっていて、思想的行為と言われています。無駄の多い世の中で、資本社会に取り込まれていない人たちがやってるんですが、ダンプスターというのは業務用のごみ箱なんですね。大体スーパーの裏側とかに置いてあるんですど、まだ食べられる食品が大量に捨てられてる。彼らはそこに入ったり、ダンプスターの中の物を食べたりしてその様子をYouTubeにアップするんです。“フードサルベーション”というんですけど、お金持ちの人でもやってますよ。映画の中では、ゴミ箱の中の物を食べたりできれば合格、仲間として認めるという入学試験のように扱ってますね」

――地球開放戦線(ELF)

 町山 「これが映画に出てくる環境テロ集団“イースト”のモデルになってるんですけど、送電線を破壊したり原生林の中にクギを入れておいて、それをチェーンソーで伐採しようとした人を大けがさせたり、過激なやり方で政府の捜査対象になってます。映画の中でイーストのメンバーは集団生活をしてますけど、実際はチームで暮らしたりはしていません。“自分は環境テロリストだ!”って言ったり、何か行動すればもうメンバーですから、実態が無いんです。だから捜査しづらいんですよね」

――“THE EAST(ロゴ)”

 町山 「“THE EAST”という名前の由来は色々あると監督が語ってるんですけど、例えばあの『オズの魔法使い』では、東の魔女によってドロシーの家がつぶされてしまうところから始まりますよね。それで東には怪しいイメージがあるところからであったり、映画の中で戦っているのが西洋文明であったり、監督がイラン系なので、ミドル・イーストとかも関係あるんじゃないでしょうか」

――ストラトフォー

 町山 「映画に出てくる調査会社は実在するんです。CIAのような調査をするんだけど、民間企業であると、それがストラトフォーです。国の損害に関わるテロ行為とかについてしかCIAは調査しないので、それ以外の調査をして、企業利益のために働く民間情報機関ですね。ジョージ・フリードマンという人が設立しました」

――ウィキリークス

 町山 「今説明したストラトフォーが環境保護組織を調査しているだとか、そういう情報をリークしたのがウィキリークスというサイトです。2012年に映画と似たような事件があって、それをリークしたのもウィキリークス。映画の撮影もその頃行なわれているはずなので、そういうリアルタイムで起こっていることを作品に取り入れているところが素晴らしい映画です」

――カルチャー・ジャム〜イエス・メン

 町山 「みなさんジャミングって知っていますか? 例えば韓国と北朝鮮がお互いのラジオ放送の周波数を合わせて、“俺の国最高!”っていう話を対抗して聞かせあってるんです。そうった邪魔する行為をジャミングと言います。カルチャー・ジャミングで有名なのがイエスメンというグループなんですが、彼らは大手企業のCMを勝手に作ったりしてジャミングしてるんですね。ある企業が有害ガスを流出させて、大量の死人が出たんですけど、イエスメンは勝手にその企業のスポークマンだと名乗ってテレビに出て、“被害にあった方々に保障をします”と勝手に発言したんですよ。そしたらその企業の株が大暴落しちゃって。違法ギリギリですね。イーストたちもそれにならって、テロ行為を“ジャムする”と言っていますね」

――ナイロビの蜂

 町山 「映画の中で、悪徳企業が健康被害を及ぼす新薬を普通に人に売ろうとしてますよね。あれは実際にあったことです。ドイツの製薬会社が作った薬があって、健康被害を及ぼさないか実験をして大量に人が死んだんです。その危ない薬を飲まされたのがアフリカ人たちで、彼らは無料で医療してあげるよという代わりに、その危ない新薬を彼らに投与した。その時の薬は本当に危険な薬で今では闇に葬られたんですけど、そんな薬を人間で実験をしたんです。その告発を描いた映画が『ナイロビの蜂』ですね」

――アノニマス(ジェレミー・ハモンド)

 町山 「イーストがかぶる人の顔をしたマスクはアノニマスを模してますね。そもそもあのマスクですが、『V フォー・ヴェンデッタ』という映画のモデルにもなっているガイ・フォークスという人が、イギリスの国会議事堂への爆破テロを企てたんですね。彼は捕まって死刑になったんですけど、そのガイ・フォークスを自由の象徴とする人達が彼の顔を模して作っています。そのアノニマスの一人であったジェレミー・ハモンドという人物は、ストラトフォーに実際入って、その内部をウィキリークスに告発した人物です」

――アーロン・シュワルツ〜ダニエル・アンドアレス・サンディエゴ

 町山 「ダニエル・アンドレアス・サンディエゴという人はFBIに指名手配されている人物です。盗みも殺しもしておらず、動物実験をしている企業に爆弾攻撃を仕掛けました。そういう企業へのテロもFBIが介入するようになってきました。アーロン・シュワルツは情報サイトで有料公開されている学術論文を無料にすべきとしてハッキングを仕掛けたんです。彼には数億ドルに上る罰金が言い渡されて、自殺しました。昔とは違い、今は企業だけでなく、司法、FBI、CIAが介入し戦うようになっています」

【twitterに寄せられた質問へ回答するコーナーへ】

――年間どのくらいのテロが起こっているんでしょうか?

 町山 「全部を数えることはできませんが、例えばGoogleやApple社の社員が会社に行けないように電車を止めちゃうとかもありますよね。これはいい企業の社員たちが次々に同じ地域に引っ越してくるからなんです。彼らが引っ越してくると家賃が上がり、それまでそこで暮らしていた人たちが住めなくなる。そういう小さいテロ活動も日々起こっていますね」

――環境テロリストたちの資金源はどこにあるんでしょうか?

 町山 「実は環境テロや人権テロ組織にはけっこう資金を提供する人や企業は多いんです。『バンク・ジョブ』って映画でもやっていましたが、イギリスで黒人活動家の顔を持っていた男がいて、彼は英国王室のゴシップ写真とかを持っていたからMI6も中々手を出せなかったんだけど、彼にジョン・レノンとオノ・ヨーコが資金提供してました。そのせいでジョンは国家から目をつけられてたけど。さっき出てきたイエスメンに対しては、A&Mレコード(アメリカの大手レコード会社)とかが資金を出してますよ。違う話ですが、この間安倍総理がアフリカに行きましたよね? リチウムとかを得るために他の国は何年も前から交渉に行ってるんですが、日本が一番遅いんですよ。日本は何やってんだ!って。そんな交渉を企業ではなく国がやっていることが変なんですが、企業がやっていることと国がやっていることがこんなにバラバラなのは日本だけ。悪いことではないですが、だからこそ他の国に取り残されてるんです」

 町山 「『ザ・イースト』は正義か悪か、という点をはっきりと描いていません。テロ行為を否定するような描写はなく、でもその報復もあることをちゃんと言っています。資本主義になっている今だから価値のある映画ですね」

※1月31日(金)TOHOシネマズシャンテ / 新宿シネマカリテほか全国ロードショー
『ザ・イースト』

監督・脚本
ザル・バトマングリ

脚本
ザル・バトマングリ/ブリット・マーリング 

出演
ブリット・マーリング、アレキサンダー・スカルスガルド、エレン・ペイジ、ジュリア・オーモンド、パトリシア・クラークソン

配給:20世紀フォックス映画
提供:FOXサーチライト・ピクチャーズ

(C)2013 TWENTIETH CENTURY FOX
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] “会える”実感を大切に――ActEvolve・加藤CEOが語るVRが導く新しい音楽ライヴ[インタビュー] ベイ・エリア・ヒップホップへの偏愛――ILL-TEE「STAY TRUE / BOTTLE AFTER BOTTLE」
[特集] セットリストはおなじみの名曲ばかり! 新作完成を記念したトレヴァー・ホーン最新ライヴ・レポート[インタビュー] 20年に愛と感謝を込めて――守屋純子オーケストラの定期公演「20 Years of Gratitude」
[インタビュー] 周りとは違うやり方で、どれだけ存在感を示していけるか 18scottとSUNNOVAの見つめる先とは[インタビュー] ストイックさとグルーヴ感を併せ持つテクノDJ、Sakiko Osawaが初のフル・アルバムをリリース
[インタビュー] アーティストとしての成長が呼んだ“物言わぬ感性の一致” 早見沙織『JUNCTION』[インタビュー] 現代ヒップホップにおける“プロデュース”について考える――Ryohu『Ten Twenty』
[インタビュー] 丸みのある、自然体の音楽 Opus Inn『Time Rolls On』[インタビュー] 消費者だったら消費者らしく盛り上がれ “侵食する”ARKHAM
[インタビュー] “歌がうたえればそれでいい”って思えるわたしでありたい 山崎あおい『FLAT』[インタビュー] クラシック音楽と人々、作曲家と現代人を“つなげる”清塚信也の最新アルバム『connect』
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
新譜情報
データ提供サービス
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015