いま室内楽ファンの間で注目を集めているフォーレ四重奏団(Faure Quartett)が来日公演を行ないます！

　ドイツのカールスルーエ音楽大学で学んだ4人によって95年に結成されたフォーレ四重奏団は、ほかにあまり例を見ない常設のピアノ四重奏団。グループ名は、「室内楽こそが音楽の唯一の真の形式であり、個性のもっとも真正な表現なのです」と語った作曲家ガブリエル・フォーレに因んで名づけられました。

　数々の国際コンクールで入賞して脚光を浴び、かのマルタ・アルゲリッチからも賞賛された彼らは、現在ドイツを拠点に世界中の一流コンサートホール、音楽祭に出演を重ねています。

　また録音では、ドイツ・グラモフォンと契約し、これまでに2枚のアルバム『モーツァルト：ピアノ四重奏曲第1番、第2番』『ブラームス：ピアノ四重奏曲第1番＆第3番』をリリースしています。

　彼らにとって今回は、実質上の日本デビューとなるコンサート。12月3日東京・東京文化会館小ホール、4日大阪・ザ・フェニックスホール、5日神奈川・ミューザ川崎シンフォニーホール、6日徳島・吉野川市鴨島公民館の計4公演です。ぜひチェックしてみてください！

■フォーレ四重奏団　来日公演
12月3日(木)19:00　東京・東京文化会館 小ホール【Bプロ】
12月4日(金)14:00　大阪・ザ・フェニックスホール【Bプロ】
12月5日(土)19:00　神奈川・ミューザ川崎シンフォニーホール【Aプロ】
12月6日(日)17:00　徳島・吉野川市鴨島公民館【Aプロ】

【プログラムA】
モーツァルト：ピアノ四重奏曲第1番ト短調KV478
ブラームス：ピアノ四重奏曲第3番ハ短調op.60
フォーレ：ピアノ四重奏曲第1番ハ短調op.15

【プログラムB】
マーラー：ピアノ四重奏曲 断章イ短調
メンデルスゾーン：ピアノ四重奏曲第2番へ短調op.2
ブラームス：ピアノ四重奏曲第1番ト短調op.25

詳細はパシフィック・コンサート・マネジメントのサイトへ
http://www.pacific-concert.co.jp/CL02/detail.php?no=685
http://www.pacific-concert.co.jp/CL02_2/detail.php?no=096

アーティスト写真（c）KASSKARA

■フォーレ四重奏団 来日公演に寄せて
――松本學氏による推薦コメント

　フォーレ四重奏団は、2007年にただ1回のコンサートのために来日してはいるが、今回のコンサート・ツアーこそが実質的な日本デビューとなる。そのために彼らは、A・B2種類のプログラムを用意してきた(詳細は別表、もしくは招聘会社のウェブサイトを参照)。

　ここではその内容について、彼らとのやりとりにCDの話を絡めながら、簡単に触れておこう。

　フォーレは言うまでもなく彼らが団体名に選んだ特別な存在。そしてモーツァルトは、彼ら自身が「ピアノ四重奏のジャンルの中で最も重要な作品」と評価し、DGへのデビュー・アルバムに選んだ作曲家だ(UCCG-1282／2006年2月国内リリース)。

　作品25(第1番)と同60(第3番)の2曲を採り上げるブラームスは、DGでのセカンド・アルバムとして今年6月に国内リリースしたばかり（UCCG-1462）。
「作品60は、僕らがフォーレ四重奏団として最初に演奏した曲。なので、パーソナルな希望としてもこれは録音したかったんです。演奏に当たっては、“オーケストラ的な”方法を採ろうとしました。シェーンベルクは作品25をオーケストラ編曲までしてますよね。僕らは、音楽の絶対的なエッセンスを見出そうと試みたチェリビダッケのように、“一個人的な”解釈じゃなくて、真のブラームスや音楽の真実を提示したかった。だから、どんな演奏よりも大きな音楽になってると思います」
　これはぜひともライヴでも聴いておきたいところだ。

　今年生誕200年のメモリアル・イヤーを迎えたメンデルスゾーンは、その次の次のアルバムになるはず。
「メンデルスゾーンのピアノ四重奏曲はもう途方もないですよ。だって彼は10代でこれらを書いてるんだから。まさしく傑作なんだけれど、あまり有名とも言えません。ほかにアルバムも現役盤がないから、とても面白いと思うんです」
　メンデルスゾーンには第1〜3番＝作品1〜3、それに作品番号のないニ短調の計4曲がある。これらは1822〜25年、なんと作曲家13〜16歳の間に書かれたものだ。ほかにアルバムがないというのは、このニ短調四重奏曲のことを指している。今回、彼らが演奏するのはヘ短調の第2番。

　なお、メンデルスゾーンは今年7月のコンサート・ツアーでも集中的に採り上げていたので、日本での演奏は、より一層練られ、磨き上げられたその成果が披露されることになる。

　そしてもう1曲はマーラーの未完の作品だ。これには彼らの録音はまだないので、とくに当日のお楽しみにしていただきたい。

　今回のコンサートの聴きどころは？ という問いに、彼らは「音楽のスタイルや響きの違いを聴き比べてほしい」と語っていた。
「僕らはスタートから14年、同じメンバーでやってきているけれど、常に変化し、向上しようと努力してきました。それぞれの作曲家の固有の言語を見出そうと試み続けています。日本には頻繁に戻って来たいんです。僕らはこの国が大好きだし、僕らの音楽を好んでくれる人たちのために演奏できるなんて嬉しいですからね」

　なお、付録として、彼らの次のアルバムも紹介しておこう。3枚目はなんとポップ・ソング集。ピアノのディルク・ポンメルツ曰く、「これは実際には相当にシリアスな企画なんだよ」とのこと。

　収録内容は、ピーター・ガブリエルやペット・ショップ・ボーイズ、ビーチ・ボーイズ、スティーリー・ダン、ベン・フォールズ・ファイヴらの楽曲を、ペーター・ヒンダーテューアやスヴェン・ヘルヴィヒ、ヴィーラント・ライスマン、ミヒャエル・カーデン、それにヒカシューのメンバーとして日本でもよく知られるトルステン・ラッシュといった、クラシックからジャズやロック、映画音楽、ヒップホップにわたって多フィールドで活躍する作曲家らがアレンジしたものだ。お楽しみに！(詳細情報は、http://www.faurequartett.de/discography.php?id=25&spr=en)