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[MY AUDIO LIFE 2020 playback]高度に優等生的な再生美 千葉・川崎一彦さん

2023/04/28 12:27掲載
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[MY AUDIO LIFE 2020 playback]高度に優等生的な再生美 千葉・川崎一彦さん
 MY AUDIO LIFE 2020 playbackでは、今夏発売予定のCDジャーナルムック『マイオーディオライフ2023』発売までの数ヵ月間、2020年に発売された『マイオーディオライフ2020』に掲載された記事の一部を抜粋し、掲載していきます。

 第1回にあたる今回は、千葉・船橋市在住の川崎一彦さんのご自宅の様子と使用機器を紹介します。

[MY AUDIO LIFE 2020 playback]
 千葉県津田沼駅からクルマで数分の場所に住む川崎一彦さんと知り合ったのはいつの頃だろう?以前はピンクのソファにクルマはマーチだったのだが、今回のクルマは外車になっていたので、「息子さんたちも就職をして、川崎さん自身もきっと会社で偉くなったんだろうなあ」などと考えた。最初の出会いは私が1999年頃から書き続けている「スタジオK's」のホームページの中にあるオーディオのページを「パート1」からアメリカのシカゴで読んでくれていて、連絡をくれたのだった。

――いつも品行方正なサウンド でも「不良な感じ」がない

 川崎さんとの出会いは、いつだろう?確か2000年ぐらいのことだったよな、と思いつつ、自分の書いたオーディオ日記みたいなものを読み返した。川崎さんがいつも私のサイトを訪れているものだから、奥様は「山本とは女性か?」と怪しんだという笑い話がある。

 川崎さんには「H君のオーディオ選び」という題で、シカゴでの同僚H君があれこれオーディオ機器を購入するために試聴を繰り返す話を私のサイトに寄稿してもらったり、『オーディオベーシック』誌にアメリカのオーディオ事情を書いてもらったりしたこともあった。

 知り合った2000年と言えばSACDが発売された頃のことで、まだipodは出ていなくてデジタル音楽再生とアナログ再生がさらなる可能性を探っていた時期だった。SACDやDVDオーディオはデジタル再生における高音質やコピーガードを追求した製品で、逆にipodはコピー可能なCDを元に、そこそこの音質と利便性を追求した製品だ。私はこの頃からたくさんのアナログプレーヤーやカートリッジを所有して使い、MacやWindowsによるデータ再生を世に先駆けて行なってきたわけだが、川崎さんは一貫して着実にハイエンドオーディオ路線を進んできている。


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以前はアヴァロンの「Eidoln」を使っていたが、数年前に「Diamond」に買い換えた。


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左側、一番下にあるのはルビジウムクロックの名機「クロノス」、川崎さんはクロノスを多分10年以上使っているんじゃないかなと記憶する。
右側、dCSのD/Aコンバーターがゾーセカスのオーディオラックに3台置かれている状態は壮観です。



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左右スピーカーの間に置かれたパワーアンプはジェフ・ロゥランドModel12で、200Vで駆動されている。

 帰国してしばらく関西に住んでいた頃にも一度取材でお邪魔したことがあったし、その後、津田沼に引っ越してからも何回か川崎さんの音をきかせてもらっている。私は川崎サウンドに接する度にずっと長い間似た感想を抱いていた。簡単に書くと「高度に優等生的で破綻せず、まんべんなく色々なジャンルの音楽をきちんと鳴らす」ということになる。文句を言ったりケチをつける点が一つもないことが不満みたいな感じだろうか。ワイドレンジで美しくて、ちゃんと温度感もあって、もちろん音場感は申し分なし。だが、だが、だが……、ひと言言いたい「不良な感じがしない」と。いつも品行方正なサウンドに接して「うーむ」と思う私がいた。

――数年前の取材時からアヴァロンはどう育ったか
  
 数年前に別の雑誌の取材で川崎さんの音をきかせていただいたことがあった。それはインテリアの雑誌で、ちょうど今お使いのスピーカーに変更したばかりの頃だった。その時の音ももちろん上手にまとめていたけれど、高級であればあるほど、スピーカーも部屋もなじむのに時間がかかるもので、それは5年、10年、それ以上なのだというようなことをその雑誌に書いた。「あれから、数年経っているから、おそらく川崎さんのアヴァロンはかなり育っているのではないだろうか」と考えて、今回の取材を申し込んだ。長い付き合いでもあり、多分川崎さんもそのあたりは察してくれていて「あの時よりずっと良くなっていますからどうぞ」という感じの対応で、私は楽しみにして津田沼へ行った。この『マイオーディオライフ2020』のための取材の中で一番最初に訪問したのが川崎さんのお宅だったから、2018年12月のことで、この本が出る頃には以下のレポートよりもさらに高度な再生になっていると思う。

 いつも川崎宅はすごくきれいで、専用のリスニングルームにありがちな無機的だったり、ゴチャゴチャで物にあふれていたりする感じではない。素敵な奥様と共に幸せに暮らしていることが羨ましく思える、そんな雰囲気だ。物にあふれかえった魔窟系、あれはあれで楽しいものだけど、とにかくインテリア雑誌に出てきそうな美しいリビングルームだ。  

 壁からかなり離した状態でスピーカーが設置してあるのを「うーん」と思いながら眺めていると、川崎さんが「いまもってまだ、ずっとこんな置き方なんですよね」と言う。まあこれには双方にとって深い意味、というか瞬間的意思疎通がある。かつての私はそのあたり(フリースタンディング)をあれこれやりまくって試して楽しんだ挙げ句に、今では「スピーカーを壁にベッタリ付けた状態もアリ」と考えていて、かつては古くさいとしか思えなかった壁に押しつけたスピーカーの置き方を逆に新鮮だなどと考えたりしている。好き勝手言わせていただければ「昔の最新も今じゃ古い」などと思ったりするわけだ。


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イメディアのレボリューションというアナログプレーヤーを使っている人はそうそういないんじゃないか。アナログレコードの再生も素晴らしいものでした。カートリッジはZYXです。


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デジタルディスクのトランスポートはdCSのスカルラッティだ。「うーん」って感じのため息。


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ラックの裏に置かれたこれは、100Vから200Vに変換する装置です。

――美しいリビングルームに響く文武両道サウンド

 何年かぶりにきかせてもらった川崎さんの音はすごく良かった。悪く言うと八方美人的な感じからグググっと進んで、音にある種の凄みみたいなものが加わっているので「おー、すごいすごい。やるなあ」みたいな感想を口走っていた。そうか、なるほど、相変わらず不良な音ではないけど、不良にからまれても、先に手を出させてサッとかわして一発で倒しちゃうボクシング部キャプテンなのに勉学は首席みたいな感じで、「こりゃかなわん、恐れ入りました」という感じだった。

 デジタル系はdCSのセットだし、アナログプレーヤーはイメディアでこのプレーヤーも高価な製品だが、かなり前からずっと気に入って使い続けているので、「かなり高価な機器を買ったところで、浮気せず一生使えれば安いものです」というのが川崎さんのスタイルだ。そうだよなあ、それにひきかえこちらは私生活はバツイチ、スピーカーもアナログプレーヤーもあれこれ使ってきて、「その挙げ句に今じゃ所有CDゼロ枚でAmazon Music HDだもんな」とやさぐれた気分になった。やさぐれついでに原稿を書きながらAmazon Music HDに「カスバの女」はあるのかなと思ってこの原稿を書きながら検索したら「りりい」のものと「三条魔子」のものがあった。すごいなAmazon Music HD、「三条魔子」のジャケットは今じゃ通らないかも知れない。取材当日も、「たまには浮気の一つもしてみた方がいいんじゃないか」などとそそのかしても、多分川崎さんは「ははは、そりゃダメです」って言うだろうな、なんてことを考えつつ口には出さずに帰ることにした。


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スピーカーの左右、前後、そして高さも出る表現が見事でした。

[川崎一彦さんの主な使用機器]
スピーカー: アヴァロン Diamond
プリアンプ: ジェフ・ロゥランド Criterion
パワーアンプ: ジェフ・ロゥランド Model 12(200V駆動)
アナログプレーヤー: イメディア Revolution
カートリッジ: ZYX Ultimate Omega
フォノイコライザー: ジェフ・ロゥランド Cadence
CDトランスポート: dCS Scarlatti Transport
D/Aコンバーター: dCS Scarlatti DAC
D/Dコンバーター: dCS Scarlatti Upsampler
クロック: dCS Scarlatti Clock + Timelord Chronos
ラック: ゾーセカス他
ケーブル: 岡島さん製作銀単線、カルダス、NBS
オーディオボード: ブラックダイヤモンドレーシング他
ルームコンディショナー: ASC、Sound Panel、Tube Trap
トランス: 電研精機 NCT-F3

山本耕司 (著)「マイオーディオ」シリーズ
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「マイオーディオルーム」
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