イスラエル出身、2003年のデビュー作『Trumpet Player』からその才能を遺憾なく発揮し、「ニューヨーク･タイムズ」でも称賛され、2012年には「ダウン･ビート」誌のクリティックス･ポール（Rising Star部門）にも選ばれたトランペットの異才アヴィシャイ･コーエン。自身のバンドであるトリヴェニの新作『ダーク･ナイツ』（KKE-035 2,190円 + 税）が発売されました。

　SF Jazz Collective や、ミンガス･ビッグ･バンド、ミンガス･ダイナスティでの活動、昨今のマーク･ターナーのバンドへの加入と、いまや世界的プレイヤーとなったアヴィシャイ・コーエン。ストレートで切れ味鋭く、勢いとスリルに満ちたトランペットは、現代唯一無二の存在とも言えます。

　本作は、そんなアヴィシャイのパーマネントのバンドであるトリヴェニ（Triveni）の第3弾。2010年に『Triveni1』、同年の録音『Triveni2』を2012年にリリース。そして本作『ダーク・ナイツ』では、これまで以上にトリオの素の姿が収録された作品に。このレコーディングでは、特別なリハーサルも行なわず、録音は1日限りで、1曲につき3テイク以上はとらなかったとのこと。しかも、アヴィシャイのオリジナルは新曲であったにも関わらず、オメルとナシートへは具体的な指示もなく演奏。多重録音をした部分もプレイバックを聴くことなく、即興的に音を重ねたそうです。それぞれが個性をそのままに演奏したライヴ感溢れるサウンドで、さまざまな色彩感をもちつつ、自然発生的で、絶妙にオーガニックな作品に仕上がりました。

　即興の面白さを追究しつつ、完成度や構成力がこのアルバムの魅力。この新作をひっさげて9月には来日全国ツアーが行なわれます。