Do the かわい気!なルックスと音色を放つ“トイピアノ”。「子供のおもちゃ」としてのこの世に生まれた彼らから、ピアノの新たな可能性を広げた方がいるそうです……。
直訳すること“おもちゃのピアノ”。それ以上でなければ、それ以下でもない、子供向け玩具として製作されたトイピアノ。当たり前ですが、実物のピアノよりもサイズは小さく、その材質はプラスチックや木材を主に使用。街のおもちゃ屋さんで購入できる安価なものから、もはや芸術品!ともいえるコレクタブルな代物まで、その出来栄えも様々。ほとんどのものがアルミ・パイプなど金属管で音を出すため、余韻を残さない少々高めの響きになるのが特徴です。
YMOが出演したキリンラガービール「キリン クラシックラガー」CMで流れている「RYDEEN」でも、その音を聴くことができますよ。
ちんまりとささやかなルックスのためか、子供たちからはひたすら乱暴な扱いを迫られ、最終的には鍵盤がへこんだまま……そんな寂しい末路を辿ることも多いトイピアノを、国際的なコンサートに相応しい楽器に変えてしまうほどの、神がかり的なパフォーマンスを披露している世界唯一の“プロ・トイピアニスト”
マーガレット・レン・タンを追ったドキュメンタリー・フィルム
『アート・オブ・トイピアノ マーガレット・レン・タンの世界』がUPLINKより6月29日に発売されます。新たなピアノ言語へ挑戦する彼女の軌跡を10年という長きにわたって記録した、その興味深き内容について探りましょう。
現代音楽に革命を起こした「3つのC」こと、ヘンリー・カウェル、
ジョージ・クラム、そして長年の師でもあった
ジョン・ケージ、以上の偉人より授かったアヴァンギャルドなスピリッツ、マルセル・デュシャンの残した「粗末な道具ほど技術が必要だ」という言葉に導かれるように、彼女はトイピアノを選択。音階、音色、一般的な楽器としての価値……演奏者にとっては“制限”ともいえるトイピアノの個性を、“だからこそ”微妙なタッチやニュアンスが表現できる楽器として捉えたところから、またひとつピアノの可能性を広げました。
本DVDでは、肘などで鍵盤を多く押さえる“クラスター”、鍵盤ではなく弦を演奏する内部奏法“ストリング・ピアノ”、ピアノ自体を“叩く”外部奏法、弦に釘などを挟んで弾く内部奏法“プリペアド・ピアノ”……など先駆者が生み出した一風変わった演奏法とその解説をマーガレット・レン・タン自身が実演。彼女がトイピアノを演奏するに至ったバック・グラウンドが解き明かされていきます。
ジョン・ケージのプリペアド・ピアノのための楽曲や、ジョージ・クラムの「マクロコスモス」の演奏に加え、マーサ・カニングハムのダンス・パフォーマンス、ジャスパー・ジョーンズの絵画、マルセル・デュシャンの映画など貴重な映像とともに20世紀のアバンギャルド音楽の歴史を辿るにとどまらず、
フィリップ・グラス/
タン・ドゥンといった新しい世代の作曲家にも目を向けた今作。マーガレット・レン・タンをはじめ、常に新たな“表現”を追求する現代音楽家たちの真摯な姿勢を目撃ください。ちなみに彼女は7月6日に放送されるテレビ東京
『たけしの誰でもピカソ』に出演予定! 興味を惹かれた方はぜひご覧ください。
なお、DVDには特典映像として本編の監督でもある
エヴァンス・チャンが制作した『ザ・マーヴェリック・ピアノ』を収録。ここでは、
エリック・サティ、ジョン・ケージ、
ゲ・ガンル、
トビー・トワイニングらの演奏シーンも観ることができますのでお楽しみに!
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『アート・オブ・トイピアノ マーガレット・レン・タンの世界』(ULD-352 \3,990(税込))
【特典映像】
『ザ・マーヴェリック・ピアノ』
(2005年作品/45分/監督:エヴァンス・チャン-陳耀成-)
・エリック・サティ「ジムノペディ第3番」
・ジョン・ケージ「ある風景の中で」
・ジョン・ケージ「ホロコーストの名において」
・ジョン・ケージ「ピアノのための音楽#2」
・ゲ・ガンル「古楽(グ・ユエ) エンシェント・ミュージック」
・トビー・トワイニング「サティ・ブルース」
・来日時ライブ&インタビュー&ティーチ・イン(10分)
演奏曲:She Herself Alone (2002)/作曲:ローラ・リーベン
●『アート・オブ・トイピアノ/マーガレット・レン・タンの世界』公式サイト:
http://www.musicdocfes.com/toypiano/●マーガレット・レン・タン公式サイト:
http://www.margaretlengtan.com/※ 記事は掲載日時点での情報をもとに書かれています。掲載後に生じた動向、および判明した事柄等は反映しておりません。ご了承ください。