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[MY AUDIO LIFE 2020 playback]若い人もひきつけるサウンドが魅力 高知・柴泰弘さん

2023/07/28 13:33掲載
[MY AUDIO LIFE 2020 playback]若い人もひきつけるサウンドが魅力 高知・柴泰弘さん
 MY AUDIO LIFE 2020 playbackでは、2023年9月発売予定のCDジャーナルムック『マイオーディオライフ2023』発売までの間、2020年に発売された『マイオーディオライフ2020』に掲載された記事の一部を抜粋し、掲載していきます。

 第4回にあたる今回は、高知県高知市・柴泰弘さんがマスターを務める、土日だけ営業のジャズ喫茶「Peat」の様子と店内の使用機器を紹介します。

[MY AUDIO LIFE 2020 playback]
 香美市の「湖畔遊」でなかば夢見心地な取材を終えてから、高知市のジャズ喫茶「Peat」を訪ねた。途中アクシデントがあって遅くなり、「Peat」に着いたのは夜の8時ぐらいだっただろうか。私には柴さんみたいに若い方が今何故ジャズ喫茶なのかということが一番の興味だった。ジャズ喫茶が全盛だったのは60年代から70年代までで、それ以降は誰がどう考えても下降線なわけだが、ファッションなどの流行と同じで一回りしてジャズはカッコいいものになったのだろうか?そんな思い、そんな興味でやってきた。

――平日はグラフィックデザイナー週末はジャズ喫茶マスター

 空腹では取材もままならないので、まずはマスター手作りのカレーを注文した。メニューの売りはカレーとシフォンケーキ。「うーん、そいつはライバルだ。いや、直接バッティングすることはあり得ないから同業者か」なんてことを考えつついただいた。カレーの盛り付けが上手なので写真に撮りたくなる。続いてシフォンケーキもお願いするとこれもまた美しい状態で置かれた、御茶ノ水「スタジオK's」の「大きくてフワフワしていて柔らかいことが取り柄のシフォンケーキ」とは大違いで、インスタ映えするから、クチコミで若いお客がやってきそうな感じだった。神田小川町の「ジャズ オリンパス!」もカレーライスが売りだけど、あのカレーともかなり違う。もっと若者・女子受けするタイプだ。

 まあそんなわけで、取材はシフォンケーキの作り方の話から入った。「Peat」のシフォンケーキは直径20?だし、私のシフォンケーキは直径23?という違いはあるが、お互い自分が作っているシフォンケーキの分量は空で言える。厨房を見ると、材料を混ぜたり卵白を泡立てるための道具は同じ「キッチンエイド」のスタンドミキサーを使っていた。

 シフォンケーキを作る時に使うゴムべらの話なんていうのは、レコードクリーナーは何を使っているかという話に近いし、「オーブンはリンナイ製ですか」は「スピーカーはJBLですね」みたいなものだ。オーナーの柴泰弘さん(41歳)は、店を出す前の半年間、洋菓子屋さんに週一で手伝いに行ってお菓子作りを身につけたそうだ。

 月曜日から金曜日までは会社員をやっていて、居抜きの喫茶物件を借りて、土日だけジャズ喫茶を始めた。そういうわけで、すでにお客さん用の椅子とテーブルが置いてあるので、スピーカーをどう置くのかも決まっていない状態で写真のように並べて置いてあるのだが、けっこういい音だった。


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※並べて置いてあるJBL4560を見て、「どう置くのが一番良いのだろうか」と考えてしまった。オーディオっぽいセッティングをすると迷路に入り込むような気もする。強い不満がない限りはこのままでも良いのかも知れない。

――クラブDJ時代に感じたお客さんとの音楽の溝

 ジャズ喫茶って、頑張って本気でオーディオ的にやりまくっている割には、耳につくうるさい音だったり、ある部分だけが強調された再生音だったりというケースが多いのだが、「Peat」はオーディオっぽい置き方をしていないJBLのスピーカーで、いい感じのサウンドだった。音量も適当で、小さな声で話ができるぐらいなのでとても居心地が良い。カウンターの中にはガラードのターンテーブルがあった。「Peat」ではレコードのみを再生しているそうで、CDプレーヤーはスピーカーの上に置いてあった。クラブ系のDJをやっていたという柴さんなので、若いけれどレコードには親しみがあるようだ。

「どういういきさつでお店を始めたのですか?」
「5年ほど前から、『軒先レコード』という友人の店でレコードをかけるというイベントをやっていたんです。その店とは『スローハンド・モジョ』というギターショップで、お酒を飲みながら、月に一度好き勝手にレコードを持ってきてはかけていたんです。その前はクラブでDJをやっていたのですが、自分のかける音楽とお客さんの求める音楽に溝ができていると感じていました」

「モジョでも距離を感じたんですか?」
「いや、モジョではバカ受けでした」
「おー、なるほど」
「そのころからジャズだったんですか?」
「いや、そういうわけではなくて、洋楽邦楽問わず60年代、70年代、80年代的なものでした。酒を飲みながら3人でだいたい30分交代で好きなレコードをかけていました」

 そのイベントは今も続いていて、最終の日曜日は「Peat」での営業を終えてから、モジョにレコードをかけに行くそうだ。


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※やっぱりトゥイーターはJBLの075で決まりです

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※スピーカーの上に置かれたCDプレーヤーは接続されていない。

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※人当たりが良くて「もてなすことが好き」という店主の柴さん。レコードが大好きです。

――若い人たちと年上の人たちが共存できる場にしたい

 「ジャズ喫茶?Peat〞を開店したのはそのイベントなどに出していた自作のカレーを美味しいと言ってくれる人が多かったので、それならば店を借りて飲食業をやりたいと思ったのです」

 こんな風にして、月から金は本職のグラフィックデザイナーに、土日はジャズ喫茶「Peat」のオーナーが誕生した。お話をきくと、酒好きで人が寄る高知の風土から生まれた感じもする。

 お客さんは2種類で、SNSでカレーとシフォンケーキの写真を見て食べに来てくれる若い人(おおむね25歳以上)と、あとはジャズ好き、オーディオ好きのおじさまたち(50歳以上)だそうだ。オーディオマニアやジャズファンの皆さんからは、いろいろなことを教わるそうだ。

「迷惑なお客さんは一人もいらっしゃいませんから、若い人たちともっと年上の人たちが共存できる場にしたい」
「それは人柄ってものですね。ジャズ喫茶だから、当然ながらかける音楽はジャズなわけですよね。以前からジャズがお好きなんですか?」(やっと本題がきけた)
「ええ、ジャズがだんだん好きになってきていますね」
「がはは、そりゃいいですね」
「ちゃんとジャズを好きになったのはこの2年ぐらいなので、お客さんにいろいろ教わっています。コーヒー一杯で3時間ねばるお客さんは正しいジャズ喫茶の過ごし方です」
「えー!本当にそうなんですか?」
「そのために、席数がいっぱいありますので大丈夫です」
「なるほど、確かにこの席が満員になるなら3時間いてもらってもOKですね」

 こんな人あたりの良さ、やわらかな物腰が魅力、「もてなすことが好き」と言う「Peat」オーナー柴さんの言葉に心の中で反省をする私だった。

 昼間の外観を撮影したかったので、翌日の午後もう一度「Peat」に行ったら、けっこうお客さんが来ていてカレーは売り切れていた。ジャズ喫茶っていうと、こわそうな年配のおじさんしか来ないんじゃないかと思っていたわけだが、本当にお客さんは若い人が多くて、「いいぞ高知の若者、ジャズ喫茶“Peat”とカレーとシフォンケーキをよろしく」という気分になった。


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※「Peat」の温かなサウンドは、WE300Bを使ったTUBEWOKS製のパワーアンプの音によるところが大きそうでした。

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※アナログプレーヤーはガラード401。ミキサーのALLEN&HEATH XONE92はプリアンプとフォノイコライザーとして使われている、このあたりの機器選びがさすがにDJです。

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※インスタ映えするシフォンケーキは500円、カレーと共に人気メニューです。

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[柴泰弘さんの主な使用機器]
スピーカー: JBL 4560BK
ウーファー: JBL 2220H
スコーカー: JBL LE85
トゥイーター: JBL 075
ネットワーク: JBL LX5、JBL N8000
アナログプレーヤー: ガラード401
トーンアーム: SME 3009?
カートリッジ: シュアー V15?
プリメインアンプ: TUBEWORKS製300Bステレオアンプ
ミキサー: ALLEN & HEATH XONE92

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※文中内にある記述は全て、2020年発売のCDジャーナルムック「マイオーディオライフ2020」取材当時の情報です。

ジャズ喫茶「Peat」
高知県高知市筆山町6-17
金曜日 20:00〜22:00
土曜日 11:30〜21:00
日曜日 11:30〜終了まで
twitter.com/jazzkissa_peat
www.instagram.com/jazzkissapeat

■2023年9月発売予定
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www.cdjournal.com/Company/products
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